■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
    週刊メールジャーナル 1999年12月8日号 第15号
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
★名門「三越」凋落の元凶“慶応閥”/学閥一掃の思惑で次期社長人事に紛争
★神戸製鋼・総会屋事件のウラ側/海外でも大統領選でリベートの裏金体質
★年金法案審議の山は越えたが、制度の矛盾は山積/野党議員の不勉強も露呈
★知られざる業界・興信所探偵社5/詐欺、窃盗、恐喝、暴行で逮捕者続出
___________________________________
名門「三越」凋落の元凶“慶応閥”/学閥一掃の思惑で次期社長人事に紛争
1月早々の決算会見が注目さる      経済ジャーナリスト 中野 忠良

 まったくのお笑いだが、凋落の三越が、急激に業績回復してきたというので
ある。その理由はと尋ねたら、加山雄三画伯の展覧会が盛況で、名古屋三越、
新宿三越の会場に客が詰めかけ、展示した絵画の殆どが、“売約済み”となっ
たからだという。
 98年2月期決算で345億円もの特別損失を出し、坂倉芳明会長が引責辞
任し、井上和雄社長はリストラ、店舗閉鎖方針を打ち出し、2月決算も連続赤
字が予想される中、たかだか素人絵描き(加山は俳優)の個展が盛況だったと
いう理由だけで「業績回復」とはちゃんちゃらおかしい話である。
 それを裏付けるように、井上社長の退陣とそれに伴なう次期社長レースが、
またもや紛争のタネになっているという。

◆学閥横行で歴代4代のトップが慶応大卒

 井上社長は平成10年1月に就任したが、さしたる功績も上げられず、来年
早々に自ら辞任すると予想されている。次期社長は、順当なら中村胤夫専務
(慶大卒、63歳)か藤本恵三常務(慶大卒、62歳)の昇格とみられている
が、ここへきて喜連元昭取締役(一橋大卒、57歳)が有力候補として急浮上
してきた。
 その理由は、市原晃、坂倉芳明、津田尚二の歴代社長がいずれも慶応大卒
で、三越は昔から“慶応閥”が横行、それが三越凋落の元凶といわれてきた
が、改革には手つかずだった。
 三越のプリンスといわれ次期社長の本命といわれた岩瀬敬一郎取締役が名古
屋三越に飛ばされ、井上社長が登場した。この井上社長は慶応卒ながら、古谷
磐根元常務(福岡三越元社長)と同じ“アンチ慶応派”で、一橋大卒の古谷の
後輩に当たる喜連取締役に後継社長をまかせるようとの意志があるという。
 三越社内に巣喰う“慶応閥”を一掃できれば、「三越再建」も本物になるだ
ろうが、井上社長の描く喜連社長構想には“猛反発”が予想されるだけに、1
月早々の決算発表の記者会見の成り行きが注目される。

___________________________________
神戸製鋼・総会屋事件のウラ側(2)   経済ジャーナリスト 山根 次郎
総会屋絶縁宣言の半年後に1000万円渡す/海外でも大統領選で裏金

 神戸製鋼所は、専務らが中心になって株主総会の進行を円滑に行うため、奥
田に現金3000万円を渡し、他の総会屋たちの活動を抑える工作を依頼した
のである。
 鉄鋼業界は「日本鉄鋼連盟」が1997年11月総会屋との“絶縁宣言”を
している。ところが、神鋼、川鉄とも総会屋との縁が切れていなかった。神戸
製鋼の総務担当者は、98年4月と10月、今年に入ってからも4月と7月に
ゴルフや飲食店での接待を奥田に続けていた。奥田に1000万円の現金が渡
されたのは97年11月の“絶縁宣言”の半月後だった。

●他社にも総会屋・右翼へカネを出すよう要請

 奥田は神戸製鋼株を1万4420株保有していたが、奥田以外に総会屋、右
翼、暴力団関係者ら特殊株主が73人いた。
 6月27日に開かれた株主総会は、奥田以外の特殊株主は1人も出席せず、
無事平穏に終了した。奥田の工作が成功したことを物語っている。
 ところが、神戸製鋼は奥田以外の総会屋を抑えるため、奥田とは別の総会屋
や右翼団体の会長にも現金を渡していたのである。
 神戸製鋼は、株主総会を無事終わらせるため川崎製鉄、川崎重工の幹部たち
に総会屋対策費として現金を拠出するよう要請し、各社が出した現金数百万円
をとりまとめ、以前から付き合いがあり総会屋と親しい右翼団体会長に大阪市
内の喫茶店で現金を渡していたという。
 その右翼団体会長は、政治結社「日本国憂社」の渡辺進会長といわれ、関西
では実力者であり、株主総会に出席し発言の経験もある人物である。
 このほか、「アジア学生青年連盟」を名乗る渡辺輝故という人物の名前も浮
上している。神戸製鋼は、奥田に渡した3000万円の他に、これら右翼団体
にも2000万円から3000万円の金を渡していたとされる。

●リベートの狙いは南米での有利な事業展開

 最近の神戸製鋼は、積極的に海外戦略を展開しており、特に南米・ベネズエ
ラでは鉄鋼プラントの建設をするなど意欲的である。
 ところが、ベネズエラの大統領選の候補者に数億円の献金をしていた疑惑が
浮上している。総会屋に渡していたと同じように「裏金」が大統領候補に渡さ
れていたという。
 「裏金」は、国内の製鉄所から出た余分な鉄を関連会社に不当に高く売るな
どして捻出されていた。ベネズエラでの事業展開を有利に進めるためにリベー
トとしてプールした「裏金」から大統領候補に流れた。
 今回の神戸製鋼利益供与事件は、川崎製鉄、川崎重工も現金を拠出しており
“業界総汚染”と呼ぶべき醜態である。(つづく)

___________________________________
∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇∇
年金法案審議の山は越えたが、制度の矛盾は山積/野党議員の不勉強も露呈
ハプニング解散の可能性もある         ジャーナリスト 川崎 明

 今月15日にこの臨時国会が会期末を迎える。20日からは来年度予算案の
編成作業に入るうえ、下手に会期延長をすればハプニング解散もあり得るとし
て、与党のなかで早期解散を嫌がっている自由党、公明党の立場に配慮して、
連立与党は会期延長を断念したようだ。
 これによって、年金制度改正関連法案の今国会での成立が怪しくなってき
た。
 7日には衆院本会議で与党の賛成多数で可決したあと、参院で継続審議にな
る可能性が強い。
 この法案に盛られている、2000年度から厚生年金の報酬比例部分の5%
削減を実施するためには、来年3月末までに成立させる必要がある。
 このため、1月召集の通常国会の冒頭で処理しよう、というのが与党の考え
だ。
 衆院厚生委員会での強行採決以来、結束を強めている野党は、衆院定数削減
の公選法改正案や政治資金規正法改正案などでも対決姿勢を強めているため、
今国会でもハプニング解散の可能性が全くないわけではないが、いずれにせよ
年金法案の山は越えてしまった感が強い。
 だが、前回も指摘したように、今の年金制度が抱えている諸矛盾を解決する
とともに、負担と給付の具体的な水準を国民の前に示すことが、政府の責任で
はなかったか。
 次の制度改正は2004年の年金財政再計算期まで先送りになる。
 この間、財政が好転する可能性はまず考えられないし、先送りしただけ次世
代の負担が増加することは明らかだ。

   ◆年金、医療、介護、雇用の総合的な検討が看過ごされている◆

 無年金者の予備軍は増加するし、フルペンション(満額年金)の受給権者は
減少する。
 今更ながら、巨大な連立与党に対する野党の無力さを見せつけられた年金制
度審議ではあった。
 6日に行われた衆院予算委員会での代表質問でも、年金改革の論戦は全く迫
力がなかった。
 介護保険制度に関する追及には若干の緊迫感が見られたものの、介護と年金
を結びつけた論議が全く見られなかったのは、与野党を含めた議員たちの不勉
強さを暴露したものといえる。
 年金、医療、介護、雇用という、この国の社会保障のグランドデザインにつ
いて、総合的な検討が看過ごしにされてきた結果である。
 ますます厳しくなるリストラ(雇用調整)の嵐の中で、年金制度の2号と1
号(被保険者)を往復する人も増えるはずだが、合理的な通算制度が確立して
いない。
 基礎年金(国民年金)の1号保険料が一律であるという人頭税方式を取って
いるからだ。
 自営業者などの所得補足が困難というのがその理由だが、所得に応じて負担
をするという社会保障の基本原則を崩すばかりでなく、国民共通の基礎年金と
いう皆年金制度に、給付の公平性の原則を欠く結果をもたらしている。
 基礎年金の全額を国庫負担(目的税化間接税)に切り換える道筋を早急に明
らかにしなければ基礎年金の空洞化はますます進行することになるだろう。
 6日の予算委における介護保険制度の論議でも、高齢者や低所得者の保険料
負担と利用者負担については、年金制度とセットで考えなければ、合理的な負
担と給付の実現は難しいことを明らかにすべきであった。(以下次号)

___________________________________
⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔
知られざる業界「興信所、探偵社」(5)           中野 忠良
詐欺、窃盗、恐喝、暴行、横領、盗品運搬、弁護法違反、業界は逮捕者続出

 人事録を成功させた「帝国秘密探偵社」は羽振りがよかった。大阪、京都、
名古屋、横浜、神戸、広島、仙台と全国に支店を広げていった。
 「調査は二の次、三の次。紳士録をバックに、調べものはありませんか。と
営業マンが御用聞きをして、格安料金で仕事を受けてくる。調査員には一日に
何件も調べさせて、まとめ役が一升ビンを机の端に置きながら、報告書を書き
上げてもらう。そんな調子でしたね」
 と当時を知る人たちは語っている。
 昭和27年に帝国秘密探偵社の女探偵が人事録の予約金を警察官や検察官か
ら騙し集めていたために逮捕されたのをはじめ、29年7月には「東京経済興
信所」の幹部3人が逮捕された。

●戦後の成り上がりの名誉欲が支えた興信録商法

 彼らは、都内の鉄工、紡績、製薬会社の人事内紛や経理内容を調べ上げて、
興信特報に載せられたくなかったら金を出せと20社近くも脅していたとい
う。
 29年11月には、中央区にあった「中外興信所」と「東京秘密探偵社」の
2社の社員8人が逮捕された。両者の社員たちは、白木屋デパートの“乗っ取
り騒動”(横井英樹が株を買い占めて、親会社の東急電鉄の創始者五島慶太に
株を高く買い取らせた事件)を利用し、内部情報を反社長派に売るぞと脅して
金を恐喝したほか数社から230万円を詐取したのである。
 30年6月には、板橋区の「秘密探偵更正会興信所」の所長が、詐欺、窃
盗、恐喝、暴行、横領、盗品運搬、弁護士法違反で逮捕された。
 こうした事件は“氷山の一角”に過ぎず、戦後の経済復興とともに頭をもた
げた会社や官公庁の幹部たちや中小企業の社長たちの名誉欲が、“興信録商
法”を支えてくれ、興信・探偵業界は絶頂期を迎える。(以下次号)

……………………………………………………………………………………………
このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発
行しています。( http://www.mag2.com/ ) 購読を開始または中止されたい
方はこちらでどうぞ。http://www.mail-journal.com/touroku.htm
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
週刊メールジャーナル 1999年12月8日号 第15号(水曜日発行)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 発行人:メールジャーナル社 代表 大森哲夫 東京都千代田区富士見
 2-10-11-3F 電話 03-3234-1191 Fax 03-3234-1193
 http://www.mail-journal.com/  request@mail-journal.com
転載・再配布・引用等には事前にメールジャーナル社に許可をお取り下さい。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■