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 2003/7/16 No.192    週刊メールジャーナル  読者数11709人(前回)
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金融庁が東京海上に圧力をかけたホントの理由(ワケ)
生保会社の予定利率の引き下げは銀行へ公的資金投入と同じだ
                  金融ジャーナリスト 齋藤 裕

 りそな銀行への公的資金の投入は、金融市場での資本主義の未熟さを象徴し
た典型例だったが、いま国会では、朝日生命保険を救済するために、金融庁が
東京海上火災保険に対して、“圧力”をかけたかどうかが問題になっている。

 双方とも本当のことは言わないが(言えないが)、圧力があったと見る方が
自然だ。

 しかしことの真偽はともかく、この問題は、今後の金融行政の姿勢を占う、
金融業界と利用者である国民に対する監督官庁の態度を予告するものとして、
きわめて象徴的なできごとと言っていい。

 生保業界では、いよいよ予定利率の引き下げが法的に可能になりそうだ。し
かし、このような個人の財産権の侵害が、これほど簡単に実現するとは思わな
かった。

 驚くのは、日本の保険契約者が余りにもおとなしいことだ。自分の権利を主
張しないことが“美徳”とでも思っているのであろうか。

 政治家・官僚が、これほどいとも簡単に国民の権利を踏みにじり、憲法で保
障された財産権まで思いのままに出来る国もまず珍しい。

 むろん、権利だけを主張する国民が横行するのは、民主主義を保障する社会
正義を維持する観点からも大問題だ。

 だが、主張すべきことを最低限主張する慣行のない国民性や、そのような民
主主義の未熟な国家は、世界の民主主義先進国に伍していく将来性もないので
はないか。

 よく見てほしい、このところの金融行政は、不良債権の処理を大義名分にし
て、金融界に対する監督官庁の支配力がかつて見られないほど強まってきてい
るでのはないか。

 “金融ビッグ・バン”の名の元に、規制緩和、自由化が進み、一時は「護送
船団行政」がなくなるような論調が謳歌された。

 確かに、かつてのように細かいところまで行政が口を出す事はなくなってい
る。だが、いまの監督官庁は、金融界の生殺与奪を左右するほどの力を持ち始
めているではないか。

 “破綻”を意味する銀行に対する公的資金の導入、繰り延べ税金資産の会計
処理問題にしても、金融庁の裁量余地が強まっている。

 まもなく成立が決まっている改正保険業法によって、生保の予定利率引き下
げは、たとえ法律が施行されても、自分から手を挙げる生保はないだろう。

 結局、どのように使うかは金融庁次第になりそうだ。
 監督官庁(金融庁)は、金融行政の失敗を、逆に、金融界に対する支配力強
化の道具にしていると言ってもいい。

 銀行・生保が、破綻・経営責任から逃れることばかり考えていた結果、金融
庁に首根っこを押さえられる結果を招いている。

 それだけではない。株式・債券マーケットも国家管理に入っているといって
いい。日銀、銀行等株式保有機構、年金資金、簡易保険、郵便貯金といった、
国が支配している機関の資金をを合計すると、じつに16兆円超という、東証
一部上場企業の時価総額の6%以上を国の機関が保有していることになる。

 国債にいたっては、50%以上が公的保有になっている。何のことはない、
自由化とは全く反対のことが起こっていることに、マスメディアでさえ、余り
問題にしていないのはどうしたことか。

 誰か彼かのスキャンダルでは大騒ぎするくせに、このような、金融資金の流
動性を国家権力が握っているという、金融システムの底流で起こっている不穏
なできごとには余りにも無頓着に過ぎる。

【編集後記】

 筆者・齋藤 裕氏は、1947年生まれ。通信社で銀行・証券・保険など金
融分野を担当したのち独立。フリーランサーとして週刊誌、月刊誌などに執筆、
評論活動をしている。さまざまに変化する事象の中で何が本質かを見抜くこと
を信条にしている。

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 週刊メールジャーナル 2003年7月16日 第192号(水曜日発行)
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