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 2004/9/29 No.253    週刊メールジャーナル  読者数11383人(前回)
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●外資への株式売却を前に揺れる武井保雄・武富士前会長の胸の内
(会員制経済情報誌『現代産業情報』9月15日号より転載)

 盗聴と名誉毀損罪に問われている武井保雄・武富士前会長が、10月中旬の
判決を前に“苦悩”している。

 「株式は売却するしかない。でも血肉を注いだ会社だけに、武富士への影響
力は残し、ゆくゆくは息子(健晃専務)に経営権を譲りたい。それが可能な売
却にできないものかと頭を悩ませている」(武富士関係者)

 周知のように、貸金業規正法では、罪を犯して禁固刑以上の刑が確定した人
が、実質的に25%以上の株式を保有していると、貸金業登録は取り消される。
武井前会長の場合、執行猶予がつくかどうかはともかく、実刑判決は免れない
と予想されている。

 つまり、株式の売却は武富士存続の大前提なわけで、一族と関連会社で58
%を持つ武井前会長は、33%の売却は決めており、その候補も米投資会社の
ニューブリッジ・キャピタルが率いる投資グループに一本化されている。投資
グループは、「当面、現経営陣のままで経営を続けさせて欲しい」という武井
前会長の意向は汲む方針だという。

 だが、未来永劫、武井一族が経営にタッチすることなどあり得ない。むしろ
次男の健晃専務は、投資グループへの“引き継ぎ”を終えれば、退任するのが
自然である。後は、武井一族は25%弱を持つ大株主としての権利を株主総会
などを通じて行使、配当を受け取るしかない。

 この資本の論理は、武井前会長も頭の中ではわかっていよう。しかし、粘り
強い“執念”で武富士をここまで大きくしてきた人である。影響力を残す方策
はないものかと悩みに悩んでおり、それがニューブリッジ・キャピタルとの売
買契約書へのサインをためらわせている。

 「武井さんの欲しいのは執行猶予。そのためには裁判官の心証を良くしてお
かねばならず、潔く売却してしまった方がいい。その決断ができないところが
武井さんらしいところではある」(消費者金融会社幹部)

 しかし、武井前会長の“粘り”も今度ばかりは通じまい。なにしろ投資グル
ープが投じる資金は約3700億円にも達し、海外投資家による買収としては
過去最高。ニューブリッジ・キャピタルだけでなく、リップルウッド・ホール
ディングスなどが加わる可能性がある。投資に対して、確実なリターンを確保
しようとする海外投資グループが、武井前会長の“思い”に顧慮するわけがな
い。

 ニューブリッジ・キャピタルは、米投資会社のBLUMキャピタル・パート
ナーズとテキサス・パシフィック・グループがアジア太平洋地域を中心とした
企業買収投資やベンチャー投資のために共同出資で設立した投資会社である。
日本での実績はそれほどないが、経営破綻した韓国大手銀行の第一銀行を19
99年に買収したことで知られる。

 「プロの経営者を送り込んで、シビアに経営を再建する典型的な投資ファン
ドです。5年をメドに再建を完了させて買収先の企業価値を高め、株式上場や
売却などによるキャピタルゲインの獲得を目指す。武富士の場合は、事件によ
る危機を除けば財務体質などに問題はなく、業績も良い。課題は『武井一族支
配』による“悪名”だった。その“改善”なくして武富士買収の意味はなく、
『武井一族の排除』は、彼らにとって当然のことです」(外資系金融機関幹部)

 タイムリミットは近づいた。
 外資への売却を土壇場でキャンセルするという選択肢は、日本に購入意欲を
持つ企業がない以上、残されてはいない。しかも、「武井支配」が続けば、武
富士はかつて批判の対象だった暴力団など反社会的勢力との“しがらみ”を断
ち切ることができない。

 日本に消費者金融を根付かせた“功労者”という栄誉は、刑事被告人に身を
落として相殺されたが、今回、手にする3700億円のほか25%の武富士株
をはじめとする膨大な資産は残った。それをもとに、武富士前会長は息子らと
ともに、第二の人生を歩むしかなく、「武富士のノウハウを生かして、健晃を
社長にもう一度消費者金融会社を興せばいいじゃないか」(先の消費者金融幹
部)という声が挙がっている。
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 週刊メールジャーナル 2004年9月29日 第253号(水曜日発行)
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