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  2006/1/11 No.316   週刊メールジャーナル  読者数11319人(前回)
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●イーホームズなど偽装を見逃す指定検査機関が抱える民営化の罠
(会員制経済情報誌『現代産業情報』12月15日号より転載)

 規制緩和と民営化は、濃淡こそあれ中曽根康弘政権以降、日本政府が選択し
てきた道だった。小泉首相は、それを最も強引に押し進めることで、権力基盤
強化の道具にしてきたに過ぎない。

 その方向性が、たとえ米国政府に示されたものであろうと、巨額の負債を抱
えつつ少子高齢化社会へと向かう日本が、「官」のムダを省いて「民」の活力
を使おうとすることは避けられないのだが、それが危険を孕むものであること
は自覚すべきだろう。

 国会の参考人招致で、日本最大手の民間指定確認検査機関である日本ERI
と、「姉歯秀次建築士案件」を最も多く見逃したイーホームズが、責任をなす
りつけあう泥仕合を演じた。

 そこには、偽造を見逃した反省はカケラもなく、「仕方なかった」という開
き直りがあるばかりで見苦しかったが、そこにこそ収益を優先、安全性をない
がしろにしてしまう「民営化の罠」がある。

 表面的に反省のポーズを取りながら、モラルを消失させてしまった民間指定
確認検査機関の本音は次のようなものだ。

 建築確認を一件20万円前後(10階建て程度の中規模マンションだとして)
で調べろというのが間違っている。まともな審査などしていたら時間とカネが
かかるばかりだし、客は逃げてしまう。

 そもそも81年の建築基準法改正前に建てられたものは、今回、倒壊の恐れ
ありと指摘されたマンション以下の耐震強度のものばかりで、耐震ウンヌンで
目くじら立てるほどのことはない――。

 誰も口には出さない。だが、「偽装を見破れ」というほうが無理、という点
では共通しており、その開き直りと無責任の背景には、120以上もの指定確
認検査機関が99年の建築基準法改正で誕生、競争が激化、「検査などできな
い価格」となっている現実がある。

 そして、民営化を強く推進している森派が、この機に乗じて建築確認申請の
現場で主導権を握り、それが結果的に派閥強化につながっていることもまた事
実である。

 建築確認件数でシェア1割を握る日本ERIは、最大手であるとともに大臣
認定機関の第一号だった。創業オーナーの鈴木崇英社長は、ユージー都市建築
という会社で幕張メッセなどを手がけた都市開発の第一人者。

 東大工学部都市工学科の一期生で、同級生に森派の上野公成元官房副長官
(落選中)がいる。

 都心部での大型都市開発が、汐留やお台場で一段落したことで、次のステッ
プとして「確認検査」の分野への進出を決意、出資を募るなどして準備を進め
てきた。

 その建築確認の民営化への動向は、住宅局住宅建設課長を務めた元建設官僚
で友人の上野氏からもたらされたと見るのが自然だろう。

 この問題を含む建築基準法の改正を審議する98年5月28日の参院国土・
環境委員会で、「民間で確認をするということは、競争を含めていい方向に行
くんじゃないかと思います」と、民営化を後押しした。

 この上野氏に、鈴木社長は昨年7月の参院選挙前に300万円を献金、他に
森派の政治団体である清和政策研究会にも100万円を献金していた。

 また、ライバルのイーホームズの藤田東吾社長は、伊藤公介元国土庁長官の
秘書だった吉原修都議に、2年間(03〜04年)で365万円を献金してい
る。伊藤元長官も森派。

 旧経世会のお株を奪う森派の業界への侵食は、規制緩和とそれに伴う民営化
に乗じたものなのである。

 通信自由化に顕著なように、規制緩和はビジネスチャンスをもたらし、そこ
には新たな政治家と業界・企業の“連携”が生まれる。

 そのこと自体は否定できなくとも、「安全性」まで競争原理にぶち込んでは
ならないことは、JR西日本の悲惨な事故が象徴している。

 今、我々は建築の安全を民間に開放することの危うさを学んだ。「あいつが
悪い」と責任をなすりつけ、「安すぎて検査できない」と開き直る「みなし公
務員」に、このまま建築確認を委ねていいかどうかを、もう一度検討する必要
がある。

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【編集後記】

あけましておめでとうございます。

年末の28日号を出す予定でいたところ、あるソフトプログラムをインストー
ルしたら、突然パソコンが動かなくなってしまった。

メーカーの相談室やブロードバンドの回線業者、プロバイダーに電話したりと
大騒ぎをしたが、結果、システムリソースの不足ということが分かった。

要するにCPUのメモリが一杯になっていたということだが、結局、28日号
を発行するタイミングを逸して越年してしまった。

そのため、「年末最終号」と「1月4日号は休刊」いうご挨拶をしそこなって
しまった。「どうかしたの?」という年賀状を多数いただき恐縮した次第。

結局、ほとんど使わなくなったソフトは、あれこれアンインストールすること
で使えるようになったが、ウィンドーズ98の意外な弱点を勉強した。

さて、耐震強度偽装問題では、昨日の衆院国土交通委員会で、建築主である
「ヒューザー」の小嶋進社長を、17日の委員会に証人喚問することを決めた。

小嶋社長が、一部のメディアに「私が正直に喋ったら国土交通省が困る」と、
ブラフをかけたりしたことから、同省内の調査や調整を行なうための時間稼ぎ
が行なわれた形跡があるが、昨年11月29日の参考人質疑と同じような内容
の繰り返しでは喚問の意味がない。

そもそも建築基準法は、耐震基準を細かに決め得る法律なのか、耐震基準とは
何か、震災で倒壊した場合の責任は誰が取るのかなど、そもそも論が明らかに
なっていない。

民営化に名を借りた「天下り先の確保」だけが優先して行なわれた可能性もあ
る。

そこに、「羊頭狗肉の建築ビジネス」を許す余地を残していたのであり、その
意味では、「生活のリスクを担保する」を売り言葉に商売をしながら、いざと
なったら支払を拒んだ明治安田生命保険の不祥事と、全く同質の問題ではない
のか。

小嶋社長は、いざとなれば「俺だけじゃない」と、居直る可能性が高い。委員
会では小嶋社長の責任追及だけでなく、官と民、それぞれのやるべきこと、責
任分担のありかたなど、監督行政のあり方をはっきりしてほしいものだ。
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 週刊メールジャーナル 2006年1月11日 第316号(水曜日発行)
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