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  2006/1/25 No.318   週刊メールジャーナル  読者数11231人(前回)
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●安倍晋三官房長官の軽挙妄動
(会員制経済情報誌『現代産業情報』1月15日号より転載)

 ポスト小泉の報道が過熱している。大手新聞から雑誌、テレビに至るまで、
競馬レースに見立てたような報道が連日続いている。

 最近では、山崎拓元副総裁まで意欲をにじませ、混沌とした状況になってい
る。小泉首相は昨年暮れ、郵政後の総仕上げプランをめぐる攻防で、三位一体
改革、医療制度改革、政府系金融機関の統合、道路特定財源の見直しなど、首
相主導で次々と決着させた。

 新年を迎えた首相は、最後の年を高支持率を維持したまま、9月の任期を迎
えたいのは当然で、政局の主導も、後継指名も自分のイニシアティブで決めた
いと思っているだろう。

 政権末期特有の権力の衰弱化をいかに阻止し、後継者にも小泉改革の路線を
堅持させようと必死の思いで、毎日が権力者特有の不安感との戦いだろう。そ
のために、言わずもがなの発言を外遊先でまで行なっている。

 靖国問題に関しても、「靖国の問題を自分から提起したことはない。参拝し
ろとか、してはいかんとか、誰にも言うつもりはない」と述べている。

 しかしながら、2001年の総裁選で、8月15日参拝を公約し、党の有力
支持団体、日本遺族会の票獲得に動いたのは、小泉氏ではなかったか。それで
いて、ポスト小泉の総裁選は、靖国を争点にするなでは、話が違う。

 盟友であるはずの山崎氏が、「小泉政治を踏襲するならば、靖国参拝は意志
表示になる。外交問題ではないといったとしても内政問題であり、争点になる
と述べるのは、当然であろう。

 そもそも、靖国参拝をわざわざ外交問題に発展させたのは、首相自身だ。参
拝自体がいけないのか、外国がだめだというからいけないのかと居直って見せ
る首相は、極東軍事裁判、いわゆる東京裁判とそこで断罪されたA級戦犯の評
価が本質だということを忘れているのか。

 ポスト小泉に名の挙がる安倍官房長官も、麻生外務大臣も、小泉首相に何も
意見を言えず、最近では谷垣財務大臣までも「小泉首相の参拝は私人としての
ことだから……」などと、あいまいなコメントをしている。

 しかし、靖国問題は中国・韓国だけでなくアジア諸国からも関心を呼び、加
えて同盟国米国の議会や政権内部からさえ批判の声が出てきている。

 靖国問題をめぐり、日中関係の修復が絶望的になったとみて、米政府は外交
ルートを通じて、懸念を伝えてきたが、いっこうに改善の兆しがないことから、
ブッシュ大統領周辺までが重大な関心を寄せているという。

 靖国問題が、ポスト小泉の争点になることは当然だが、小泉首相の胸中は、
弊誌が再三指摘したように、引退後も中川政調会長、竹中総務大臣に改革総仕
上げに挑む「最後の小泉体制」の骨格を担わせようとしている。

 消費税増税や公務員削減、金融の量的緩和解除の問題などで、中川ー竹中コ
ンビの積極発言が際立ち、それが小泉首相の意思だとされている。

 小泉首相らの発想は、使いやすい安倍官房長官を国民的人気の上に首相の座
に就けさせ、実質的には中川ー竹中コンビで小泉改革路線を徹底させるという
構想だろう。

 それにしても、小泉首相から最有力と示唆されている安倍官房長官の動きが
おかしい。雑誌、新聞のインタビューから民放各社の番組に次々に登場してい
る。

 最近では、民放テレビで自宅の様子までカメラで写させている。そもそも、
官房長官の役割とはなんなのか。内閣の要として調整機能を果たし、スポーク
スマンとして、政府の情報を提供することではなかったか。

 毎日の記者会見での報道は、内外のマスコミの注視の的である。それを個人
プレーよろしく民放テレビまで登場し、勝手な意見を喋っているのはおかしく
ないか。

 官房長官の発言は、内外の関係者からみれば、全てが政府の発言だと思われ
るのは当然で、個性的なキャスターやらに誘導されて危ない発言をするのは危
険極まりない。歴代の官房長官の中でこの人ほど軽い人はいなかったのではな
かろうか。

 安倍氏が総選挙が近づく中で、政策論議をまっとうに戦うことに自身がなく、
今から国民的人気を背景に一人抜け出そうというような発想でいるとすれば、
必ず反発を食うことになるだろう。

 小泉首相は、政権末期まで自分の政局主導カードを維持すべく、後継指名や
路線設定に注文をつけ、マスコミの関心を自分に引きつけておくべく勝手な発
言を続けるだろう。

 いずれにせよ、内外の難しい課題が多い中、ポスト小泉に名が挙がる閣僚を
含め、淡々と国民のための職責をまっとうするのが務めで、責任のないマスコ
ミの「ポスト小泉レース」に踊らされているわけにはいかないのだ。

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【あとがき】

 小泉政権最後の通常国会が始まった。案の定、みずから改革を指揮する意欲
を欠いた施政方針演説は、迫力を欠くものだった。

 開会直後に起きた「ホリエモン逮捕」は、耐震偽装問題や米国産牛肉輸入問
題とともに、小泉政権が自画自賛した政策成果を揺るがすできごととして、代
表質問などで、与野党の枠をこえた追求が避けられない状況となってきた。

 ライブドア事件の陰に隠れたカタチだが、ヤマハ発動機の無人ヘリ中国輸出
事件は、大きな問題を内包している。

 陸上自衛隊のミサイル研究資料が総連系団体元幹部が関与していたソフト会
社に流出した事件とともに、この国の安全保障体制を揺るがす問題として、こ
の通常国会での議論が必要だ。

 実は、この数年発覚している企業による経済事犯は、新しい経済の仕組みの
中で発生している。

 その背景には、優勝劣敗の市場原理が強く働く仕組みがある。その中で、
「拝金思想」が企業経営のなかに色濃く入り込んできていることがある。

 このような状況下で、すっかり根付いてきたこの国の「平和ぼけ」がシナジ
ー効果を及ぼしてきたとしたらどうなるか。

 ライブドアのようなIT産業に、金になる、国の安全保障をゆるがすような
軍事情報が入ったらどうなったのであろうか。仮定、空想論では済まされない
現実があるのではないか。

 それは、権力者である経営トップにとって、つねに魅惑的な誘惑になりうる
からだ。経理操作というリスクの高い経営情報開示を選択するよりも、本業で
の業績向上がはかれるならば、それにこしたことはないと思われるからだ。

 「(外国為替法違反とは)認識していなかった」という、ヤマハ発動機幹部
の広報コメントをきけば、そのことをよく証明しているといえる。

 だが、ひるがえって社内では、「大丈夫だろうか」という疑問をもつた管理
職や従業員が多数いたことは間違いない。

 ヤマハ発動機だけではない、ライブドアでも、あのヒューザーや木村建設の
内部関係者からでさえ、「おかしいのではないか」という意見が、つねに出て
いたという。

 陸自のミサイル資料の流出には、三菱重工、三菱電機、三菱総研というメジ
ャーな企業が関係している。

 一人でも二人でも従業員がからむ業務では、「当たり前でないこと」が行な
われれば、そのことは直ぐに仲間に広がるもの。

 それが、「おかしい」と、トップに上がらない仕組みになっていることが、
そもそも経営の不幸といえる。

 企業内部で、価値観を共有する仕組みが「社内コミュニケーション」であり、
経営目的を達成するための、組織・職制を通じた上下の意思疎通が「社内広報」
である。

 もっとも、この「社内コミュニケーション」や「社内広報」の概念が、経営
論として整理されていないところが、この国の企業経営の問題点ではある。

 いまここへきて、この問題を議論しようという空気が湧きあがってきたこと
は、多いに歓迎したいし、こんごの成り行きを注目したい。実は筆者も、この
議論に参加したいと思っているひとりである。
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 週刊メールジャーナル 2006年1月25日 第318号(水曜日発行)
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