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  2006/2/22 No.322   週刊メールジャーナル  読者数11268人(前回)
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●野口氏の怪死を「沖縄の闇」のせいにするジャーナリズムの堕落
(会員制経済情報誌『現代産業情報』2月15日号より転載)

 弊誌は前号で、加熱する「ライブドア報道」において、ジャーナリズムが安
易に「闇勢力」と表記することの問題点を指摘した。

 これだけオープンに情報が開示される時代に、「闇」など存在しないし、広
域暴力団にも企業舎弟といわれる企業にも右翼にも総会屋にも、すべて「名」
がある。

 それを表記できないのは取材が足りないか、逃げているかのどちらかで、い
たずらに読者や視聴者を惑わすだけだ。

 その傾向は、事件化から時間が経っても衰えることなく、なかでも沖縄で怪
死したエイチ・エス証券の野口英昭副社長の報道は、自殺か他殺かはわからな
い状態なのに、「闇」が関与したと、あたかも暴力団関係者が殺したかのよう
な雰囲気を誌面に漂わせ、読者を引き込もうとしている。

 おどろおどろしさを読者は好み、「売れるから」という理由で、野口氏の死
を怪しさ、不可解さの中に投げ込もうとする商業ジャーナリズムの宿命はわか
らないでもないが、根拠もなしに「闇勢力」との関係を臭わせるのは、報道人
として失格だろう。

 野口氏と「闇社会」との接点を解説する代表例は、次の二つの週刊誌報道だ。

 第一は、沖縄のリゾート関係であり、石垣島の新空港をめぐるリゾート開発
に野口氏が絡んでいたという説。

 『週刊ポスト』が熱心に報道、同氏はライブドアの窓口として動いていた野
口氏が、ライブドアの都合によって買収約束を反故にしたため、「闇社会の連
中と際どい交渉をしなければならなくなった」(2月24日号)と書く。

 第二は、ライブドアに強制捜査が入った日(1月16日)の午後7時、沖縄
の暴力団組員が暴行を受けて殺された事件を、野口氏と引っかけた報道である。

 『週刊朝日』は、「うちの店には数回、一緒に来ているんですよ」「(殺さ
れた暴力団組員の)Aさんは『野口さんは大きな商売をしている。ワシらはそ
れを手伝ってるんだ』と言っていました」(2月17日号)というコメントを
使い、結果的に二つの死を結びつけている。

 死亡の当日、那覇空港に降り立った野口氏を4人が出迎えたという未確認情
報などが、ミステリアスな死を倍加、そこに「闇社会」が関与したかのような
週刊誌、夕刊紙、ワイドショー報道が重なって、国民の頭には、今や「野口氏
は暴力団勢力によって殺されたに違いない」という情報が、いつの間にか刷り
込まれている。

 その結果、風評被害を受ける人や企業が出てくる。

 例えば、エイチ・エス証券が主幹事となって3年前に上場した、沖縄のサイ
バーファーム。

 『週刊文春』(2月16日号)ではS社と仮名ながら、他殺説をさんざん繰
り広げた後、「マザーズ第一号上場企業で、刑事事件を引き起こしたリキッド
オーディオが出資企業で、S社は2000年に設立された企業だ」と記す。

 こう書けば、サイバーファームであることは明白で、しかも記事の流れから
すれば、「闇社会」と関係が深いように受け止められる。このため、サイバー
ファームの株価は、この種の報道が続いて大暴落した。

 しかも問題なのは、こうした「闇社会報道」が独自取材によって浮上したの
ではなく、姉歯問題で有名になった『きっこの日記』をはじめとした、ネット
情報を起点としていることである。

 サイバーファームが「怪しい」いうのもそうなら、ライブドアの広報担当で
ある乙部綾子氏が「香港経由でマニラに飛んで現金を運んだ」という情報もそ
うだ。

 エイチ・エス証券が主幹事であった以外に、野口氏との接点がないサイバー
社を、『夕刊フジ』はネット情報をもとに「疑惑企業」と書いたし、『週刊ポ
スト』は「マニラには一度も行ったことがない」という乙部氏に、「疑惑直撃」
と題したインタビューをし、掲載している。

 ネットで流された、無責任な匿名情報をもとに「疑惑」を捻出、裏が取れな
ければ「闇社会」という便利な表現で逃げているのが、現在の「野口報道」で
ある。

 人の死をこうして弄ぶのが不遜であることはいうまでもないが、ネットを小
道具に、狡い報道を続けていれば、雑誌ジャーナリズムの力は弱まり、信用は
失われる。

 今回の「野口報道」にみられる総合週刊誌の堕落――販売部数の落ち込みの
原因は、少なからずここにある。

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取次ぎします。お申し出あれば見本誌を無料でお送りいたします。

【あとがき】

 明日22日、国会での党首討論は「ホリエモン・メール」をめぐるやりとり
が見ものである。

 この「メール」に関するかぎり、民主党永田寿康衆院議員の“勇み足”がど
うやら明らかになってきたが、民主党前原誠司代表は、小泉首相と武部勤自民
党幹事長の「ホリエモン選挙応援」の責任を追求するため、他の材料でどこま
で迫れるかがポイント。

 これが不発に終われば、先の、前原代表の「責任発言」の“責任”が問われ
ることになるだろう。

 したがって、自民、民主ともに現執行部としては後に引けない討論になるは
ずだが、実は、両党ともに党内の反執行部勢力の不協和音が大きくなってきて
いることが頭痛のたね。

 それゆえこの論争、双方ともに“死傷者”を出さないように“落しどころ”
を探っている、といつものような永田町の駆け引きになっているようだ。

 「ホリエモン」に熱中するあまり、本筋の予算審議をおろそかにしてもらっ
ては困るのだが、「メール」はともかく、「現なま」が動いたのかどうか、そ
の点だけはこの際明白にしてほしいものだ。(2006・2・21)
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 週刊メールジャーナル 2006年2月22日 第322号(水曜日発行)
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