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  2006/3/15 No.325   週刊メールジャーナル  読者数11893人(前回)
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企業の事故や不祥事はなぜ起きるのか
社内コミュニケーションの不全を正す必要がある
            本誌編集発行人・ジャーナリスト 川崎 明

 企業の事故や不祥事が、相変わらず続発している。

 スカイマークエアラインズ(SKY)の東京・羽田ー徳島線などで使用する
ボーイング767ー300ER型機で、機体に付いた傷を抜本修理せずに、運
行させていたことが国土交通省の調べで判明した。

 詳細はマスメディアの報道に委ねるが、本来ならSKYの整備責任者が、ボ
ーイング社の指示で抜本修理をしなければならないのに、9カ月も放置してい
たというものだ。

 ブルネイの航空会社からリース契約で使用していた機材であったため、引き
継いだ整備記録のフォローがされていなかったのが原因。

 整備士の思い込みでボーイング社の指示待ちのままで運行が続けられたが、
航空法で定めた安全基準に抵触することから、国交省はSKYを呼び厳重注意
をしたという。

 先頃の日本航空(JAL)でのトラブル続発に続き「SKYよお前もか!」
といったところだが、全日空(ANA)も例外ではなかった。

 ANAでは、昨年6月高度計の故障とパイロットの勘違いが重なり、航空管
制の指示と違う高度を40分間飛びつづけるというトラブルを起こしている。

 あいおい損害保険では、満期時に、当初契約時の受け取り金が、保険期間中
の金利変動で変わるかもしれない保険契約のパンフレットに、そのリスクの説
明が記載されていなかったことが明らかになり、変動が無かったことにした受
け取り金との差額を追加支払する破目になっている。

 ところが、同様の問題が損保ジャパンでも明らかになり、巨額の支払補償が
必要になりそうだという。

 東京海上日動火災や三井住友海上でも、同種の契約のパンフレットや加入時
の説明の調査を始めているが、合併会社のため、古い書類が残っていないとも
いう。

 だが仮に、注意書きが印刷されていたとしても、90年前後の販売当時は、
金利変動のリスク説明は不十分だった可能性がある。(15日の報道では、三
井住友海上には、やはり問題契約があったことが明らかになった)

 損保だけでなく日本生命保険や第一生命保険など大手生保会社でも、同様の
事例がないかどうか調査するとしている。

 先ごろの、明治安田生命保険の保険金不当不払い問題が、生損保業界全体に
波及したケースと同様、こんどのリスク説明の不備もまた、保険業界全体に広
がる様相を見せている。

 航空会社の乗客の安全性を軽視したトラブルといい、保険会社の契約者の権
利を損なうトラブルといい、いずれも国民生活の利便性ニーズを商売にする会
社の、本業中の本業にかかわるトラブルであり、このようなことでは、企業の
社会的存立意義が問われるといってもいい。

 意図的に会社を貶めるような悪意の行為、犯罪行為は別として、このような
“うっかりトラブル”が発生する原因はどこにあるのか。

 普通、従業員の誰ひとり何も気が付かない、ということはまずありえない。
誰かが「オヤッ?」とか「少し変だ!」と思うものだ。

 口に出すか、キチンと報告するか、誰かと相談するものだ。そうすれば、の
ちのち大きな問題に発展するトラブルを防ぐことができる。

 それができない企業には、それなりの“理由”がある。

 従業員個人の思い込みや不注意が組織的に看過された結果、経営を揺るがす
ようなトラブルに発展した例は、この数年、マスメディアで取り上げられた例
だけでも枚挙にいとまがないほどだ。

 実は悲しいかな、本誌には、裏取りに手が回らないほど、企業の不祥事予備
軍といってもいいような内部告発が多数寄せられているのだ。

 このような組織内事故や不祥事の発生は、企業組織の中での個人と個人の繋
がり、経営目的達成のための意思疎通、職務のリレーションが、合目的的に働
いていないことが理由ではないのか。

 このような組織的な齟齬について、ジェームス・リーゾンというイギリスの
心理学者は、原発や航空機あるいは金融機関の事故を調べて、“組織事故”と
いう考えを提起している。

 彼は、組織事故をなくすには、四つの「安全文化」が必要といっている。1
は情報を隠さない「報告する文化」、2は信賞必罰を行なう「正義の文化」、
3は失敗の経験を生かす「学習する文化」、4は必要に応じ組織や仕組みを変
革する「柔軟な文化」という。

 JALの相次ぐトラブルからは、民営化以来の複雑な労使の対立、経営をめ
ぐる派閥抗争の結果、組織全体の風通しが悪くなり、縦割りの組織や夥しい数
の子会社・関連会社相互の連携不全という、縦割りの「官僚文化」が見て取れ
るのだ。

 これは、本誌がバックナンバーで指摘した、JR西日本の大事故発生の原因
ときわめて相似形である。

 本来、経営目的を達成するためには、縦割りの分掌組織に、横串を刺し通す
経営理念やミッションが必要である。

 こうした横串を刺し通すことが経営トップ本来の役割である。経営哲学や強
烈な目標達成の情熱が必要なゆえんでもある。

 組織全体を貫く共通の価値観、必要な情報の共有化を達成するためには、ト
ップにコントロールされた社内コミュニケーションが必要である。

 この社内コミュニケーションは、経営トップの最も重要な専管事項であり、
筆者が長らくかかわった「社内広報」の世界では、これをインターナル・コミ
ュニケーション・マネジメント(ICM)といっている。

 相次ぐ企業の事故や不祥事は、すべてICMの不足といっていいだろう。あ
るいは、ICMを阻害する要因が組織内に沈潜している結果といってもいいだ
ろう。

 そして、ICMをサポートする業務が「社内広報」なのだが、この国の場合
は、この業務の役割認識が概して弱い。

 中には、この業務を、社内誌や社内報(イントラネットメディアや映像メデ
ィア)の発行だけに矮小化している企業も多い。

 「本来の社内広報業務」には、経営の意思決定システムと末端組織への伝達
システムの構築・運営のチェック、会議・打ち合わせのシステムチェック、教
育・研修のシステムチェック、通知・通達のシステムチェック、従業員の意識
調査、コミュニケーション・オーディット(広報監査)など、経営全般にわた
るコミュニケーションを監理する役割がある。

 ところが多くの企業には、社内誌や社内報の発行だけで社内広報「こと足れ
り」としている現実がある。

 こうした現状やその原因については、いずれまた、事故や不祥事の機会に指
摘したい。

【あとがき】

 本誌が関係しているある民間会社は、このような社内広報業務のソリューシ
ョンをコンサルティングしている。その会社を紹介しておきたい。

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 週刊メールジャーナル 2006年3月15日 第325号(水曜日発行)
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