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  2006/4/12  No.329   週刊メールジャーナル  読者数11916人(前回)
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●「情報源証言拒否は違憲」決定の背後にある判事の「邪」
(会員制経済情報誌『現代産業情報』4月1日号より転載)

 この国は憲法によって「裁判官独立の原則」が掲げられ、その身分が厚く保
証されている。

 同時に、あらゆる裁判官は最高裁の人事システムに組み込まれ、全国への配
置がなされるという宮仕えの側面も併せ持っている。

 これは完全なる矛盾であるが、司法の「建前」「本音」のごとく、なんとか
うまく運用されてきた。

 ところが、いったん両者のバランスが崩れると、看過できない現象が起きる。
代表的な例が、サラリーマンよろしく“上”におもねる裁判官が跋扈してくる
ことであろう。

 それが露になったのが、『読売新聞』記者の「取材源」証言拒否を認めなか
った、東京地裁の藤下健裁判官のケースである。

 『読売』記者が米国の食品会社の課税処分に関する取材源の証言をめぐる裁
判で、藤下裁判官は「証言拒否を認めると、(守秘義務違反という)犯罪行為
の隠蔽に加担することになる」「記者が取材源を明かすことで、公務員からの
取材が難しくなっても、法秩序の観点からは歓迎すべき」と“豪語”して証言
拒否を違法と断罪、証言するよう迫る決定を出した。

 同僚の判事からでさえ、「報道の存在意義を全く認めていない、かなりすご
い判断だ。一件の公務員の守秘義務違反が、将来的な国民の知る権利より重い
というのだから、憲法感覚ゼロ」と扱き下ろされる藤下決定の中身について、
弊誌はこの稿で論じようとは思わない。

 取り上げたいのは、この決定が引き出されていった藤下判事の「心象風景」
である。

 この決定を考えるうえで、藤下判事の経歴は示唆に富むものがある。83年
に東京地裁判事補となった藤下氏は、法務省民事局、在オランダ大使館一等書
記官、法務省民事局第五課長、中央省庁等改革推進本部事務局企画官を歴任。

 
 判事というよりは高級官僚といったほうが相応しい経歴である。注目すべき
は法務省勤務が長いことだ。藤下判事を知る関係者はこう指摘する。

 「確かに彼は最高裁判事におけるエリート。本人もそれを自覚している。法
務省で検事と一緒に長く仕事をするうちに、検事の色に染められたのでしょう。
知る権利よりも法秩序を優先させるべきという決定には、その形跡が強く認め
られる」

 検事色が強い判断であったとしても、そこに判事としての信念があれば、ま
だ救われる。

 関係者の証言を繋ぎ合せると、どうもそういうことではないようなのだ。
「藤下判事は異常なまでに上昇志向が強い。あの決定は最高裁の意を汲んだ、
おもねった判断だ」。藤下判事を知る関係者の多くが、そう証言するのである。

 「あの裁判は、米政府が日本の国税当局に情報を開示し、それが日本のメデ
ィアに洩れて報道され、損害を受けたとして、食品会社が米裁判所に提訴した
もので、米司法当局が最高裁を通じて東京地裁に記者の尋問を嘱託していたの
です。最高裁からの“下請け仕事”を受け、藤下判事は『証言拒否されて聞け
ませんでした』では済まさず、最高裁からの嘱託に最大限応えようとしたので
しょう。もちろん出世を見越してのことです。彼ならそういう発想で動いても
おかしくない」

 原被告、社会を見据えての判断ではなく、最高裁の顔色を窺っての判断――。
判事としての自殺行為である。

 しかし現実には存在するのだ。「憲法と法律のみに殉じる」べき立場を忘れ、
人事を司る組織に擦り寄る裁判官が。

 本来であれば、邪な判断を発した裁判官に、組織は何らかの手立てを講じる
べきである。

 それが組織と個の健全性を担保するはずだ。ところが、こういう事態になる
と、裁判所当局は「裁判官独立の原則」を持ち出し、立ち入れないと釈明する。
組織の都合のいいように「独立原則」が使われている感が拭えない。

 この国の裁判官は、かつて検察や政治から圧力をかけられ、苦渋の歴史を歩
んできた。

 不当な圧力や介入を排するための「独立原則」は、与えられたものではなく、
先人の裁判官たちが勝ち取ったものである。その苦難の道を汚すようなゴマス
リ判断は、自らの首を締めるものであり、いつまでも国民の目を騙せはしまい。

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 週刊メールジャーナル 2006年4月12日 第329号(水曜日発行)
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