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  2006/4/26  No.331   週刊メールジャーナル  読者数11901人(前回)
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JR西日本福知山線事故から1年、
事故調はJRの社内コミュニケーションを調査すべし
            本誌編集発行人・ジャーナリスト 川崎 明

 4月23日投開票が行なわれた千葉7区補選の結果は、「小沢民主」が僅差
で勝利した。

 メディアは、さまざまな分析をし、今後の永田町全体への影響、とくに、
「ポスト小泉」自民党総裁選びへの影響をいろいろと言い募っている。

 だが今回の勝敗は、“マスメディアの不作為”が招いた結果であることが、
本誌関係者が選挙区内を広く取材して歩いた結果、明らかになった。

 今号では、そのことをお伝えしようとパソコンに向かったのだが、25日朝
から、TVニュース等で繰り返し流される、特別長く吹鳴されたJR電車の警
笛音を聞いて、これは、テーマを変えざるを得ないと思った。

 1年前の4月25日、JR西日本(以下単にJR)福知山線尼崎駅の手前の
急カーブで、スピードを出しすぎた電車が横転脱線、線路脇のマンション1階
と地下駐車場に突っ込み、107人の死者、555人の負傷者を出した。

 25日、事故発生時刻の8 時18分、その少し前、現場を新しいダイヤで走
る快速電車が通過。恐らくその電車は、遺族や被害者、関係者多数を載せて。
通過の際、特別に長い警笛音を吹鳴して行ったさまが画面に映し出された。

 1周年を迎えたこの事故を特集したニュースによれば、被害者本人・遺族の
ほとんどは、いまだ、JRとの補償交渉のテーブルについていないという。

 「JRは事故原因についての説明をしようとしていない」「JRは、どこが
何が変わったのかという説明をしない」というのが、被害者・遺族の方々の不
満と疑問だと報道されている。

 このことを聞いただけでも、JRは、「民営化された」といわれながら、実
態は「収益管理だけの民営化」だったことが良くわかる。

 ところで、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は、今年度内に最終報告を
まとめたいとしている。

 そのため、9月をめどにJR幹部や専門家から意見を聞く「意見聴取会」を
開くという。

 事故調が、鉄道事故で意見聴取会を開くのは初めてのことであり、この聴取
会は、航空・鉄道事故調査委員会設置法に基づく法的な制度である。

 つまりは、それほどの大事故であり、社会的関心の高い事故なので、事故の
原因や背景を解明するために、関係者や学識経験者から事実への認識やその評
価を聞こうというものだ。

 だが、事故調が昨年出した中間報告は、見てわかるとおり、運転士がなぜス
ピードをあげなければならなかったかという理由については、懲罰的な研修や
人事給与制度の存在、慢性的に遅延が発生するようなダイヤ組成など、表面的
な原因調査に偏りがちな内容になっている。

 JRでは、運転士ばかりでなく、保線や信号・電気などの現場担当者にミス
が発生したとき、その責任の所在と懲罰の仕組みが現場に偏りすぎ、このため、
事故報告がネグレクトされたりしている事実を、事故調はもっと重くみる必要
がある。

 ときに命をかけて働く軍隊ではもちろんのこと、警察や消防などでも、「命
令には絶対服従」が決まっている。

 平時の挙措動作にしても、「規律順守・上意下達」の仕組みが徹底しなけれ
ば、その組織がもたないからだ。

 ただし、そこ(命令)には、発令者にすべての責任があることが前提になっ
ている。

 平時の勤務における、部下のミスでさえ、責任の所在は「上方指向」(上司
が責任をとる)が常なのである。

 当然のことながら、働く人はもちろん、利用者、消費者の安全を第一にする、
職種、職業、職場でも、似たような組織原則があり、鉄道事業もそれにあたる。

 旧国鉄では、このような組織原則がありながら、その一方で、官僚的な「誤
謬神話」(ごびゅうしんわ=官僚に誤った判断はあり得ないという神話)が存
在していたことも良く知られている。

 形のうえの民営化は、このような官僚的な組織体質が、なかなか変えられず
に残っていたことは、容易に想像がつく。

 思い起こすのは、91年、滋賀県で起きた第3セクター「信楽(しがらき)
高原鉄道」の列車との正面衝突事故だ。

 42人が亡くなり、重軽傷者は600人を超えた。詳細は省略するが、この
ときのJRの対応は、まさに、官僚組織のそれであった。

 この事故を真摯に受け止め、民営会社として企業体質を根本から見直してい
れば、福知山線事故は起きなかった可能性もある。

 民の企業にあって、官の組織にないものは、「社内コミュニケーション」で
ある。

 社内コミュニケーションとは、経営目的を達成するための、トップマネジメ
ントである。

 JRには、このマネジメントが無かったか、あったとしても、弱かった。本
誌は、かつてこのことを書いた。

 あえて重複を避けるが、JRは、事故調が最終報告を出すまでは、事故原因
に関するコメントを避けようとしているのではないか。

 このような態度は、JRが国鉄時代から引き摺っている官僚的な体質といっ
てもいい。

 一方、さきごろ「安全性向上のための社内の意識調査」を、JRの各労組が
合同で実施した。結果、会社では把握できない組合員の本音をかなりつかむこ
とができた。

 組織拡充のライバル関係にある労組が、このようなアンケートを実施するの
は、安全第一を標榜する民間企業の労組の体質に一歩近づいたものといえる。

 しかし、JRの企業体質に官僚的な組織原理が残っている原因には、労組自
身が求めてつくり出している側面もある。

 例えば、上司(管理職)とのトラブルや職場内の軋轢は、組合を通じて解決
すべきだという組織論があり、それが、職場コミュニケーションや時間外、職
務外のコミュニケーション(飲食を通じた懇親・飲みニケーションなど)を阻
害しているという現実もある。

 そうした現実をみた時、思想的な組織論で労組が分立している状態は決して
好ましいことでない。

 民間企業の経営と対決するための組織論はそういくつも必要ない。各労組は
できるだけ早く統合してほしいものだ。

 事故調の中間報告では、亡くなった高見隆二郎運転士(当時23)が、脱線
する直前の40秒間、まったくブレーキをかけていなかったことが取り上げら
れている。

 運転士の肉体か精神に異常が起きたことも視野に入れる報告内容だ。しかし、
この事実だけを重視するならば、「緊急停止(EB)装置」や、「デッドマン
(DM)装置」の整備率を100%にすれば、安全性の向上はこと足りる。

 だが、民営化JRの経営課題はそれだけではない。乗客サービスの向上や、
コスト削減などは今後の経営上エンドレスの課題になり、これらは、本部管理
職の机上のプランだけで、できるものではない。

 ほんとの民営化JRが生き残るためには、現場の工夫や従業員個人のアイデ
アが必要であり、そのためには「社内広報」の仕組みが必要なのだ。

 筆者は、これまでこの会社の「社内報」を拝見する機会がしばしばあった。
評価の公表は憚るが、その社内報には「コミュニケーションの改善」を工夫す
る余地がかなりあると思っていた。

 <社内報を見直す動きが相次いでいる。従業員構成が急速に多様化する中で、
情報の共有を促し、社内コミュニケーションを活性化するのが狙いだ>、そう
いうリード文で始まる、4月24日付『日本経済新聞』の記事をみた。

 「スイッチオン・マンデー」という大型コラム企画だが、「社内報のリニュ
ーアル相次ぐ」の見出しで、その背景を探った記事が出ていた。

 残念ながら、記者もデスクも、恐らく「社内コミュニケーションの本質」を
理解していないために、トップマネジメントの経営課題を「社内報の課題」に
矮小化しているきらいはあるが、「経営者の考え方を非正社員にも伝え、社内
の一体感を高める狙い」から、社内報のリニューアルや配布対象者を拡大する
動きが相次いでいるというトピックスは、的確に伝えている。

 福知山線の大事故の背景には、経営者の考え方を全従業員に理解させるだけ
でなく、必要な時に必要な情報を全従業員が共有し、経営の意思決定と社内伝
達の仕組み、会議や打ち合わせのありかた、教育や研修、職場の声の吸い上げ
や提案の仕組みなどを網羅した、JRの社内コミュニケーションのあり方が大
きくかかわっているのである。

 事故調は、こうした背景を十分に把握し、実態を調査、評価した上で、最終
報告を提出してほしいものだ。

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