■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2006/5/17 No.334 週刊メールジャーナル 読者数11917人(前回) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 社内広報とは、コミュニケーションを統轄する トップ・マネジメントである ジャーナリスト・広報アドバイザー 川崎 明 (ナナ総合コミュニケーション研究所発行 『Commu-Suppo/コミ・サポ』5月号より転載) ◆日本的経営の社内広報を見直す時期にきている 社内コミュニケーションとは、一般に「社内広報」といわれるが、そこから イメージされるのは、社内報など社内メディアを中心としたコミュニケーショ ンである。だが、その本質は「経営目的を達成するためのマネジメント」だ。 権限を委譲する組織職制づくり、指示命令を伝達する通知・通達から、現場 からの報告や公聴まで、「企業統治に必要なあらゆるコミュニケーションを統 轄するトップマネジメント」が社内広報なのである。 しかし、日本のマネジメントは社内広報が重視されてこなかった。その理由 には、終身雇用や年功序列などによる日本型マネジメントが、社員の忠誠心や 仕事のやる気などを支えていたからにほかならない。 だが、非正規社員やフラットな職制が増え、グローバル化が進むなか、日本 的経営の社内広報を、根本から見直す必要が生まれているはずである。 ◆ダイレクト・コミュニケーションを重視した創業者 松下電器産業(株)の創業者・松下幸之助氏は、創業2年目の大正9(19 20)年、早くも全従業員28名のコミュニケーション組織「歩一会」を結成 し、さらに昭和2(1927)年には、金融恐慌のさなか『歩一会々誌』と 『松下電器月報』という、社内外に向けたコミュニケーション・メディアを創 刊している。 これは、ほかの多くの経営者と異なる独自の経営意図を、全従業員と販売店 にダイレクト・コミュニケーションしたかったからにほかならないと思われる。 昭和21(1946)年に創業した本田技研工業の創業者・本田宗一郎氏は、 研究や設計の現場を歩き回り、車への情熱と意地を従業員に直接伝えた。 「バカヤロウ!」と担当者を怒鳴りまくるのが常のようだったが、そこから、 車づくりに賭ける経営トップのミッションをくみ取った幹部従業員が数多く育 ったことは、今に語り継がれている。 ◆編集部門と経営ボードの連携不足 このように、創業経営者がダイレクト・コミュニケーションを重視し活用し た事例は、今日までわが国の経済界でも限りなく多い。 しかも、このようなダイレクト・コミュニケーションは、創業期の経営を支 えただけでなく、やがて大企業に成長した今日、企業理念や役・職員の行動規 範として引き継がれ、定着化している例も多い。 ところが、社内広報の本来の意味、経営上の価値、目的があいまいなため、 トップ・マネジメント(ICM=インターナル・コミュニケーション・マネジ メント※)として位置付けられていない企業が意外に多いのも、実態である。 媒体編集制作部門と経営ボードとの連携が不十分なために、ICMとして機 能していないケースが多いのだ。 主な理由は、ICMの経営論が体系化されていないことにある。さらには、 広報媒体の編集制作は技術論に影響されやすく、編集制作部門や担当者の裁量 に委ねられやすい特質をもっていることもある。 そのため、リストラ経営においては、アウトソーシングの対象にもなりやす く、ことさらトップ・マネジメントとのかい離を生みやすい。 ◆現状は水平型社内コミュニケーションだが 今日、経済の現状をみればわかるように、大企業といえども創業精神にかか わりなく、経営資源の選択と集中は避けて通れない。 であればこそ、ICMが喫緊の経営課題になるのである。ただし、ICMを 媒体の編集制作だけに矮小化しては、経営目的の達成は不可能といっていい。 ICMの本質は、経営ボードの意思決定と権限委譲にもとづく指示命令や、 ホウ・レン・ソウなど、上下組織間の垂直型コミュニケーションの早さ、的確 性の確保にある。 しかし昨今、長期にわたるリストラ経営がもたらした労使関係や勤労価値観 の変化は、従業員個人の意見、職場の声をくみ上げ、すぐれた業績や貢献事例 などを情報交換する、水平型の社内コミュニケーションの重要性を高めている といえる。 ここにこそ、伝統的な社内報・社内誌が分掌すべきICM上の役割があると いっていいと思われる。 ※社内広報マネジメント 【あとがき】 5月1日、「新会社法」が施行された。だが、多くの会社では、昨年4月に 施行された個人情報保護法にくらべ、この問題をとくに社内広報の課題として 取り上げようという経営意図が感じられない。 恐らく、会社法の問題点は、トップ・マネジメントの専管分野、という認識 から、社内広報の必要性を感じないのだろう。 だが、それは本末転倒である。改正会社法の主旨は株主の権限強化にあるの だが、その柱の一つに「コーポレートガバナンス(企業統治)」の強化がある。 5月1日以降、最初に開催される取締役会で、「内部統制システム」の基本 方針を決め、これを株主に開示することが義務付けられた。 相変わらずあとを断たない企業の不祥事や事故、従業員のなミスが原因で顧 客や利用者に迷惑をかけ、結果として株主が損害を蒙ることを防止する狙いが ある。 その根本にあるのが、コンプライアンス(法令順守)である。 法律・法令だけでなく、社規・社則、会社の定款に違反する業務や行為をし ていないか、チェックを含む責任の所在を明確にする内部統制システムを構築 しなければならないことになった。 同時に、このシステムは、役・職員の不適切な行為によってもたらされる損 失を最小限におさえるリスクマネジメント(危機管理体制)の役割を果たすも のでもある。 つまり、個人情報の保護なども含む、包括的な企業統治の仕組みを明文化し、 役員、従業員が一体になって取り組まなければならないのだ。 ひょっとすると、今日のような経済の仕組みができるまでは、この国の企業 が、もっとも避けたいと思ってきた経営体制づくりを、いまになって、迫られ ることになったのかもしれない。 企業規模によっては、監査役や会計監査人の決め方を変える必要もでてきた 会社もある。企業とは何か、会社とは誰のものか、を問い直す、明治以来の法 体系の見直しが、始まったとみてもいい。 すでに、法令違反の内部通報制度を発足させたり、役職員の不適切な行為に よって、会社に大きな損失が出た場合の危機管理体制を整備しはじめた会社も ある。 このような、全社的な経営管理・危機管理体制を、速やかに機能させるため には、強力な社内コミュニケーションが必要だ。 トップマネジメントが、意図的に社内広報を展開しない限り、そうした社内 コミュニケーションは十全に機能できないはずだ。 この問題を、真剣に社内広報できない会社は、究極、株主から評価されるこ とはない。つまりは、市場から退場を迫られることになるだろう。 耐震強度偽装の、一連の企業群を育ててきた、建築業界の過去、現在の広報 システムは、「談合」を「必要悪」として育てあげた、この業界のコミュニケ ーションシステムと無関係ではない。 社内広報マネジメントが、企業統治に必要なコミュニケーションを統轄する トップ・マネジメントであることは自明である。 社内広報の問題は、一部の専門職と担当役員が考えればすむ問題では、もは やなくなった。 トップの経営思想・哲学を源泉として、全役職員が、あらゆるステークホル ダーに支持される経営の理念と目標、経営情報と価値観を共有するためのコミ ュニケーションをマネジメントすることが当たり前になったのである。 これができれば、企業の不祥事や大事故を未然に防ぐことも可能であろう。 また、このことが、究極の危機管理でもあることを経営トップは知るべきだ。 もし、企業行動を、国家的立場から監督・指導する必要があるというのであ れば、官僚機構の中にも、「組織内広報マネジメント」が機能できるような 「内部統制システム」が必要なことはいうまでもない。 _____________________________________ このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発 行しています。( http://www.mag2.com/ ) 配信を希望または中止されたい方はこちらでどうぞ。 http://www.mail-journal.com/touroku.htm ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 週刊メールジャーナル 2006年5月17日 第334号(水曜日発行) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社 〒130-0026 東京都墨田区両国2-1-4 第2西村ビル201 ホームhttp://www.mail-journal.com/ メールadmin@mail-journal.com 転載・再配布等には事前にメールジャーナル社に許可をお取り下さい。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |