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  2006/6/7  No.337   週刊メールジャーナル  読者数11806人(前回)
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●「亀田」と「細木」で視聴率を稼ぐ
      テレビ局の呆れたモラル喪失!
(会員制経済情報誌『現代産業情報』6月1日号より転載)

 興毅、大毅、和毅の亀田三兄弟――マスコミが待望する久々のボクシングヒ
ーローである。

 大阪・西成の貧しい環境から、父を師匠に世界を目指すというサクセススト
ーリー、「街のチンピラ風」の風貌でカメラに向かってメンチを切る悪童ぶり、
対戦相手をののしりKOラウンドを予告する「ビッグマウス」と、三兄弟はマ
スコミが期待する条件をすべて満たしたうえに、テレビカメラの前でそれを忠
実に演じる。

 格闘技は、日常生活で暴力を封じられた一般人に、「肉体的言語」を思い出
させるスポーツである。

 抑圧のなかから生まれたストレスは、鍛えられた肉体と磨き上げられたテク
ニックが織り成す「殴り合い」を観戦することで発散され、だからボクサーは
リングのなかで野獣を強いられる。

 ただ、亀田三兄弟の場合は、その演出がリングの外にまで及び、見苦しいこ
と甚だしい。

 年端もいかない中学3年生の三男・和毅が、まともに学校に通わず、行く時
は「アロハに短パン姿」と公言するのは異常である。それをテリ―伊藤は「い
いね!」と誉めそやし、三兄弟の演出に力を貸す。

 すべては視聴率のためだ。“噛ませ犬”のタイ人ボクサーを長男・興毅の対
戦相手に選んで連勝を重ねさせるのも、「父と子」の親子鷹を強調するのも、
リングの外での悪童ぶりを際立たせるのも、全てテレビ局の演出といってよく、
「ボクシング馬鹿」でしかない三人の子供たちは、傍若無人のふるまいが許さ
れ、それがまた受けるので、ますます図に乗り服装も人相も言動もチンピラ風
となって視聴率に貢献する。

 亀田三兄弟はカッコいい――テレビの演出による作られたヒーロー像を無批
判に受け入れがちな子供が、こう思ったとしても不思議ではなく、進む低所得
化の中で荒れる教育現場に明らかな悪影響を及ぼすだろうが、視聴率第一主義
のテレビ局にとっては「考慮の外」なのである。

 三兄弟の背後も、テレビ局にとって関係ない。最近、三兄弟は大阪のグリー
ンツダから東京の協栄ボクシングジムに「3000万円の移籍料プラスアルフ
ァ」で所属ジムを変えた。

 『週刊ポスト』が報じたように、グリーンツダの有力後援者は、広域暴力団
山口組の最高幹部の一人で、「移籍料プラスアルファ」にはそんな意味合いが
含まれているのだが、視聴率稼ぎのテレビ局にとっては、そんなことはどうで
もいいことで、むしろ「東京在住」の方が都合がいい。

 細木数子もまた、テレビ局が作り上げた「視聴率の女王」である。

 「あんた死ぬわよ!」「地獄に堕ちるわよ!」という歯切れのいい決めゼリ
フ。占いはさっぱり当たらないが、その断定的な物言いが受けて人気がある。

 もっとも細木の場合は、計算された「芸」であり、亀田三兄弟のように、テ
レビを通じて社会に悪影響を与えるというほどのことはない。

 ただ、その背景に多数の暴力団関係者が絡むという現実を忘れてはなるまい。
ルポライターの溝口敦氏が『週刊現代』で連載している「魔女の履歴書」――
妻妾同居の家に育ち、管理売春まがいのビジネスに手を染めてのし上がってい
く「細木の履歴」が、溝口氏らしい粘っこい筆致で描かれている。

 人気が出て、テレビ局で「ズバリ言うわよ!」という自前の番組を持ってい
るのだから、細木はれっきとした公人。

 裏を探られるのは当然だが、その「原稿つぶし」のために細木が暴力団の最
高幹部を使って“工作”したとなると、テレビ局の責任は重い。

 工作の詳細は『週刊現代』(6月10日号)に譲るが、暴力団幹部の実質的
な女房だった過去を持つ細木が、今もそのパイプを絶やさず、イザとなれば暴
力装置として使う事実は、細木に「公人」としての資格を失わせる。

 亀田三兄弟も細木数子も、「ヒーロー」「女王」に仕立て上げたのはテレビ
局である。

 視聴率のためならモラルは問わず、反社会的勢力とも結果的に手を結ぶ。こ
れが、「乗っ取り」を仕掛けられたら「電波の公共性」を口にするテレビ局の
正体である。「公共性」など、言うもおこがましい。

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【あとがき】

 ニッポン放送株の売買をめぐり村上ファンドがインサイダー取引をした疑い
が強いとして、東京地検特捜部は5日、同ファンド代表の村上世彰容疑者を、
証券取引法違反(インサイダー取引)の疑いで逮捕した。

 数時間後に容疑者に変ずる村上代表は、異例の記者会見を開き、「聞いてし
まったことが、それが罪になるというのなら仕方がない」と述べた。

 巧みな弁明にも聞こえたが、その後明らかになった捜査情報では、株式の高
値売り抜けのために、ライブドア(LD)を巻き込んでの、巧妙な段取りを仕
組んでいた可能性が強くなった。

 これまでに証取に摘発されたインサイダー取引は、自分の会社や取引先など
の内部情報を事前に得て、私的に株売買を行なった、いわば「こそ泥」的なケ
ースばかりだった。

 ファンドによるインサイダー取引の摘発は初めてのケースで、その立件には
証取法167条のインサイダー取引規制にあたるかどうかが論点になる。

 特捜部は、証券取引等監視委員会とともに、LDの行為は「公開買い付けに
準ずる行為」にあたると判断した。

 本誌は、05年2月23日号(NO.273)の【あとがき】で、当時ニッ
ポン放送株を買い占め、フジテレビの経営権を支配しようとしたのは「堀江・
村上連合」だと書いた。

 当時「ほんとに“連合”といえるのか」という読者からの指摘が数通あった
が、本誌は当時、「裏取り」をして書いたのであり、それがようやく正しかっ
たことが証明された。

 ただし、本誌が言いたかったのは、グローバルスタンダードに対応した、証
取法などの整備が遅れていることが、一般の株主の権利を脅かすことになりか
ねないという指摘だった。

 「大金持ちの守銭奴」や外国投資家をバックにしたファンドと、LDのよう
なM&Aで成長を狙う野心的な企業とが連携をすれば、公正公平な証券市場が
保てない懸念は今も残る。

 監視委員会や公正取引委員会などの行政の仕組みを、根本から変える必要が
あることを、再度指摘しておきたい。
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 週刊メールジャーナル 2006年6月7日 第337号(水曜日発行)
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