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  2006/7/12  No.342   週刊メールジャーナル  読者数11724人(前回)
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●「市場の正義」を検察・金融庁の官僚に委ねる危険
(会員制経済情報誌『現代産業情報』7月1日号より転載)

 年初から続いたライブドアと村上ファンドの摘発は、市場に激震をもたらし
た。また、東証マザーズ、大証ヘラクレスなどの新興市場に上場する企業への
投資家の不信感は払拭されず、株価は低迷したままである。

 モラルなきファンド感覚の経営者、あるいは改革者を装うマネーゲームの主
宰者に対して鉄槌を下した検察への評価は高く、「行き過ぎは是正しなければ
ならなかった」といった論調がマスコミでは主流を占める。

 市場は強欲なものである。そして市場には、インサイダー取引や株価操縦な
どでうまく立ち回る者が巨利を得る、という現実がある。

 その無法地帯の監視を、「事前」のチェックで違法を許さないシステムから
「事後」の摘発に切り替えた時、検察が乗り出してくる回数が増えることは予
想できた。

 検察だけでない。金融庁傘下の証券取引等監視委員会は、予算と人員を始め
とする強化策で能力をあげて摘発件数を増やしており、金融庁もまた弊誌前号
(No.555)で紹介したように「平成の大獄」と呼ばれる思い切った行政
処分を続々と行なっている。

 尽きぬ欲望に支配される無法地帯だからこそ、事後チェックを万全にして違
法を許さない――検察や金融庁がその意志を明確に持つのは当然のことである。

 そうした役所と意識の上で一体化するマスコミが、彼らを高く評価するのも
わからないでもない。

 しかし、検察とて万能ではないし、「調活費隠し」のために大阪高検元部長
を検察が逮捕したことに象徴されるように、検察にも権力の濫用があり、マス
コミがネタを取るために、検察捜査をチェックせず、批判することがないのは
危険だ。

 例えば、村上ファンド捜査でみせた「逮捕者は村上に限定する」と誓い、代
わりに自供を引き出した司法取引、松尾邦弘前検事総長の「勇退の花道」にす
るために早めた事件着手、金融庁の積年の恨みを晴らすべく着手した旧UFJ
銀行の検査忌避事件など、検察や金融庁の官僚による“ご都合主義”で事件の
方向性が定まったものは少なくない。

 検察幹部は常々「正義」を口にする。自分たちは「素朴な正義感」を持ち続
けなければならないと言い、「額に汗する庶民の正義感」を大事にしたいと言
う。

 しかし、市場犯罪の摘発を検察の機軸にしたいと言いながら、大半の検事に
は株式投資の経験すらなく、「市場とは何か」がわかっていない。

 また、市場が悪の巣窟であることを、“体感”としてわかっていない。だか
ら捜査は、目立つ者、著名人、キャラの立っている人間に向かう。

 それがホリエモンと村上だったが、二人の摘発は、市場へのチャレンジを萎
縮させる結果につながった。

 その代わりに息を吹き返したのが、市場経済のテンポアップについていけな
い旧来型企業の経営陣である。

 1兆円内外の経常利益をあげたメガバンクも同様で、重厚長大企業とメガバ
ンクとの株式持合いや役員の交流が復活、「モノ言う株主」の排除をいいこと
に、馴れ合いの緊張感を欠く、悪い意味での日本型経営に先祖返りしている。

 本来、市場にモラルがあったためしがない。モラルを口にし、実行した段階
で企業の競争力は失われる。

 企業もまた社会貢献や地域社会などステークホルダーとの良好な関係を心が
けねばならないが、それはモラルではなく、そうした社会性をもつ企業として
の装いが、株価のためにも従業員の雇用確保とロイヤリティのためにも必要だ
からであり、すべて計算づくである。

 したがって、ホリエモンや村上に欠けていたのは、嫉妬深い国民への遠慮で
あり、二極化の中で貧しさを増す低所得者への配慮であり、検察などの捜査当
局が重厚長大の経営陣と同レベルの価値観で、自分たちを攻めてくることを予
期する思慮である。

 今年の上半期をかけた捜査で、マネーゲーム的市場に警告を与えた検察の一
罰百戒的な効果はこれを認めよう。

 ただ、結果的に捜査は、市場主義への行き過ぎた振り子を元に戻したに過ぎ
なかった。

 そして、そうした「目立つ芽」を“裁量”で摘み取るのが自分たちの役割だ
と、検察・金融庁の官僚が思い込んでいるのだとしたら、これは市場経済で否
応なく生きる日本という国家の将来を思い描いていないという意味で罪深い。

 我々は、検察や金融庁の役人に「正義の実現」を望んではいない。無法地帯
としての市場をルールで縛り、違法があれば摘発、ルールがなければ制定する
こと。それが市場経済で生きる国家の定めである。

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【あとがき】

 「北朝鮮のミサイル発射」問題は、今週中にも、発射前の、要するに何ごと
も無かった状況に戻る可能性が高まっている。

 それが、米・中両国の国益に最適という結論が出そうだからだ。

 そして、きつい後遺症が残るのが、北と日本の2国。

 8、9日にかけて欧州では、金正日総書記の亡命説が一部で流されたほど。

 北の政権内で混乱が起き、その沈静化のために、政府高官の一部粛清が実行
されるだろうという観測が流れている。

 日本では、日米安保の信頼性が再議論になりはじめている。幼稚なナショナ
リストたちは“独立”と“軍備”の議論をはじめている。

 一部閣僚や防衛族からは、専守防衛原則の見直し論が飛び出し、MD開発前
倒しの世論が勢いを増しそうだ。

 北も日本も、後遺症から立ち直るにはかなり時間がかかりそうだ。

 したがって、6カ国協議が再開されても再び中断し、結局、ミサイル発射前
の状況に逆もどりする可能性が高い。

 なにしろ、米・中両国とも、いまは時間がほしいのだから。お互いの“顔”
を立て合うための調整が続いている。

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 週刊メールジャーナル 2006年7月12日 第342号(水曜日発行)
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    編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社
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