■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2006/8/23 No.348 週刊メールジャーナル 読者数11592人(前回) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ●竹中総務相の「政界引退」で復活する財務省の“悪だくみ” (会員制経済情報誌『現代産業情報』8月15日号より転載) 小泉純一郎首相の退陣とともに、「小泉改革」を担った竹中平蔵総務相もお そらく内閣を去る。最後は議員バッチをつけたものの、竹中氏の意識は最後ま で学者。 仕事が無くなれば政界に留まる必要は全くなく、総務相退任とともに政界を 引退、“雑音”の多い日本を離れ、アメリカで学究生活を送ることになるとい う観測もある。 小泉首相に口説かれて経済財政担当相として入閣した竹中氏の役割は、経済 財政諮問会議を舞台に、小泉首相の「丸投げ」してくる政策を受け止め、財務 省を中心とする「霞ヶ関」や族議員がはびこる「永田町」の意向を排除、規制 緩和して民間活力を導入、簡素な政府を確立することだった。 政権交代とともにスタッフが入れ替わるアメリカ流の「政治任用スタッフ」 のようなもの。 “主”が退陣すれば「永田町」から身を退くのは当然とはいえ、政治システ ムの違う日本でこうした例はなく、引退すれば竹中氏は登場から退場まで、日 本政治に斬新な風を送り込んだことになる。 ただ、竹中氏の身に染みついたアメリカ流合理主義、市場中心主義、優勝劣 敗の法則は、改革の随所で衝突を生んだ。 官僚には「自分たちこそ日本の頭脳だ」という誇りがあり、政治家には「国 民の声を背負っている」という自負がある。 その「政官」が、長年続けてきた「政策と予算は両者で決める」というシス テムを壊し、竹中氏がシナリオを描く「官邸主導」の流れを定着させた。 学者ゆえ、竹中氏にはしがらみがない。潤沢な政治資金がない代わりに陳情 もない。酒を呑まず、「趣味は勉強」という人だから、酒食の接待もほとんど ない。 そのうえに、「超」のつく合理主義者。だから、持てる時間をフル活用、必 要ないと思われる政治家や官僚の既得権益はバッサリと削った。 竹中氏の功績は、「官邸主導」で「抵抗勢力」を封じたうえで、大手銀行に 不良債権比率の半減目標を課す、といった大胆な金融改革に踏み切ったことで ある。 「UFJをあそこまで追い詰める必要があったのか」といった怨嗟の声は、 今も金融界に根強いが、金融財政当局が金融機関と鋭く対峙する姿勢を演出、 実際に不良債権比率は激減、これを好感して金融株が証券市場を牽引、日本経 済に回復機運をもたらしたのは、竹中氏の功績としてこれを認めるべきだろう。 一方で、行き過ぎた規制緩和が証券市場のマネーゲーム化を加速、ライブド ア事件や村上ファンド事件を誘引したという「罪」もあった。 むろん竹中氏一人に着せられるものではないが、規制を極力排除した世界は 「勝ち組」と「負け組」を生み、社会は二極化する。 日本型システムの持つ社会主義的平等の居心地に慣れ親しんだ多くの国民は、 「競争がもたらす成長」の必要性を感じながらも、その変化に体がついていけ なかった。 「改革」が、功罪を併せ持ち、痛みを伴うのは当然である。5年の長きに渡 る「改革」の反動で、竹中総務相とそれに連なる宮内義彦オリックス会長など へのバッシングが強くなるのも無理はない。 しかし、時計の針を逆に回すような財務官僚の復権と、予算や政策システム の「先祖帰り」を許していいものだろうか。 財務省には、「官庁の中の官庁」といわれた旧大蔵省時代から続く「財務省 至上主義」があり、予算配分を通じて「霞ヶ関」に君臨する財務官僚には、族 議員に従うふりをして丸め込まずにはいられない習性がある。 この5年、その習性を「竹中主導」の経済財政諮問会議が打ち出す「骨太の 方針」によって“骨抜き”にされてきたが、最も財務官僚の信任の厚い、つま りは御しやすい与謝野馨氏が経済財政担当相として経済財政諮問会議の議長を 務めるようになって、見事、財務省主導に押し戻した。 さらに財務省は最近、「金融処分庁」という名で金融機関に恐れられる金融 庁を、検査機能だけ残し、企画立案と監督権限を財務省に移管するよう画策も している。 単なる「金融庁合体」は難しいが、証券取引等監視委員会の分離独立を画策、 そのドサクサに紛れて吸収という工作など、彼らにとっては朝飯前だろう。 また財務省の復権で、確実に台頭してきたのは「財務至上主義」である。日 本の危機的財政事情から、2011年までに基礎的財政収支(プライマリーバ ランス)の黒字化を実現、それに合わせて、急増する社会保障費負担などに備 えた消費税アップ等の増税は避けられない。 それを国民は理解しているが、それまでに歳出をギリギリまで切り詰めろと 要求するのは当然のことで、財務省はその要求に応える立場にある。 だが、省益優先の彼らが竹中氏に抗してやったのは、政府系金融機関の統廃 合における“骨抜き”だった。 「天下り先確保」を優先する役所が、財政危機を訴えて増税を持ち出しても 呑める話ではなく、財務官僚のいうままに「消費税10%」を口にする谷垣禎 一財務相は、それだけで首相の器を疑われる。 「竹中改革」には功罪もあるし好悪もあろうが、しがらみのない学者だから こそ「改革」に取り組めた。 ただ、現実問題として竹中氏の成し得たのは金融機関の不良債権を減らした ことだけであり、郵政改革その他は全て道半ば。 その状態で、財務官僚が復権、かつてのシステムを踏襲したのでは、国民の 期待を集めた「小泉改革」とは何だったのかということになる。 「族」と「官僚」を遠ざけた竹中氏のシステムを踏襲することはないが、彼 らの復権を許してはならない。 そうでなければこの先、民間の活力が失われ、借金の重圧に国民が苦しむこ とだけはハッキリしている。 ◆会員制(法人・個人)経済情報誌『現代産業情報』の購読ご希望は、本誌が お取次ぎします。お申しであれば、見本誌を無料でお送りいたします。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 週刊メールジャーナル 2006年8月23日 第348号(水曜日発行) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社 〒130-0026 東京都墨田区両国2-1-4 第2西村ビル201 ホームhttp://www.mail-journal.com/ メールadmin@mail-journal.com 転載・再配布等には事前にメールジャーナル社に許可をお取り下さい。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |