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  2006/9/27  No.353   週刊メールジャーナル  読者数11598人(前回)
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安倍新政権は「安全運転内閣」といわれるが
それでも長続きできるのか
            本誌編集発行人・ジャーナリスト 川崎 明

 安倍新内閣が発足した。
 永田町での評価は、「論功行賞内閣」とか「安倍学園祭内閣」、あるいは
「官邸集権内閣」などといわれているが、実態は「安全運転内閣」(中曽根元
総理)が最も当たっているようだ。

 実際、安倍氏はもっと独自色を出したかったようだが、派閥の会長であり後
見人でもある森元首相と、18日夜、ひそかに会って相談の結果、「小泉内閣
積み残しの難題を臨時国会で片付け、天下分け目の来年の参院選を乗り切った
後、好きなようにやればいい」と説得され、派閥均衡、老壮青バランスの実務
型内閣ができたとされる。

 もっとも、派閥はかつての派閥ではなくなっている。5年5カ月におよぶ小
泉政権が派閥のカタチをすっかり変えてしまっている。

 したがって、派閥均衡とはいえ、派閥横断的に組織された「再チャレンジ議
連」や、派閥内での総裁選対抗馬の立候補を抑えた「派閥内安倍応援団」の中
から、安倍総理実現に貢献した議員をピックアップし、結果として、派閥バラ
ンスのとれた、党役員・閣僚人事が出来上がったまで、というわけだ。

 また安倍氏が、「総幹分離の原則」にこだわらないとするの当初からの姿勢
を守り、同じ派閥の中川秀直前政調会長を幹事長に就け、そして、盟友の塩崎
恭久外務副大臣を官房長官に据えることができたのも、派閥の干渉を前以て排
除することができたからにほかならない。

 マスメディアによる党三役、入閣予測が、「サプライズ人事」がなかったに
もかかわらず、ことごとく外れたのも、かつての派閥力学にこだわったからに
他ならないだろう。

 マスメディアといえば、3次にわたる小泉政権組閣によって、森内閣まで恒
例だった官邸前広場のテント村を、ほとんど無用になっていたにもかかわらず、
今回またもや出現させたことには、笑ってしまった。

 僅か半日のためにテントを設営したり撤去したりという、マスメディアの動
きをみると、安倍氏を中心とする若手政策集団と、一体どちらが保守派なのか、
区別がつかないほどだ。

 マーケットは、20日の総裁選を挟んで、株価は僅かながら“下げ”のトレ
ンドないしは“様子見”であったものが、26日からは“好感”のトレンドに
転換しているようにみえる。

 問題は、「拉致対策を含むアジア外交」「教育再生」「財政再建」「国・地
方分権」「公務員・行政改革」「憲法改正」など、小泉政権の「構造改革」積
み残しの政策課題に対して、前向きの姿勢を示したものの、「閣僚」と「官邸」
双方に担当を割り振ったことだ。

 一体どちらが主導権を握るのか、官僚復権がいわれるなかで、相互協力、協
調がどこまでできるのか、これからの成り行きによっては、新政権の評価は、
大きく上がりもするし、下がりもするのではないか。

 安倍政策の中核「再チャレンジ支援」も、山本有二・金融・再チャレンジ担
当相は就任挨拶のなかで、「再チャレンジは受験から失業まで多岐にわたる」
と述べているが、その「教育再生」では、伊吹文明・文部科学相や下村博文・
官房副長官(教育基本法で安倍氏と協調)、山谷えり子・首相補佐官(教育再
生担当)との連携・協調が試される。

 「拉致対策」でも、塩崎官房長官をトップに中山恭子・首相補佐官(拉致問
題担当)の重層コンビと、麻生外務相との連携・協調が問われることになる。

 官邸主導のもと、新閣僚や小泉時代からの復権をうかがう官僚らとの間で、
どのような綱引きが行なわれるかが見ものだ。

 立ち上がり、一気に官邸が主導権を握らない限り、来年の参院選では、野党
連合による政権交代の機運が高まるとみてよいだろう。

【あとがき】

 私事で恐縮だが、前号【まえがき】で書いた叔母の死去により、私たち3人
兄弟の父(赤紙に応召し昭和20年、38歳で西部ニューギニアで戦病死)の
兄と姉妹の4人すべて亡くなった。

 父が不在のなか、4人の母子は、昭和20年東京で戦災に会ったのち、新潟
県長岡市(再度戦災に会い)、岩船町(現村上市)、新潟市と、伯父伯母たち
を頼って転々とした。

 叔母にも世話になった。私たち母子は、もし伯父伯母たちがいなければ、ど
うなっていたかわからない。

 敗戦直後とはいえ、学力と意欲があっても、進学の希望を諦めたのは私たち
だけではないが、ものすごく残念だった。

 「経済力格差」が顕在したために、「普通」の人びととは、はじめから大き
な「人生格差」がついてしまった。正直にいって、その「格差」はいまだに埋
まっていないと思っている。

 いま政治が「格差是正」をいうなら、「再チャレンジ」は、「教育の機会均
等」が保障されてのうえではないか、と思う。

 「人生の出発点は教育」である。「美しい国」づくりの根本は「教育」にあ
るのではないか。人生に希望をもてるかどうかは、望む勉強ができるかどうか
にかかっていると思う。

 「勉強したい子に勉学の場を保障」することが、「勉強したい子」を増やす
大もとではないかと考える。

 「勉強したい子」が増えてこそ、「勉強嫌いな子」や「勉強しない子」を減
らす対策が実行できるのではないだろうか。

 小泉前総理は、「格差は必ずしも悪いことではない」と言明した。しかし、
もの心のつき始めから格差がついてしまっては、挽回は容易ではない。

 安倍総理が「再チャレンジ支援」を掲げたのは、公正公平な競争場裡での
「敗者」への配慮政策である。

 しかしこの“先進”国では、人生の最初から、運不運によって格差が固定化
する可能性が、いまだに厳然として残っている。

 「教育再生」とは、それを解消する政策であり、「再チャレンジ支援」はそ
れに連動するものでなければならないと思う。

 安倍政権であろうと、民主党政権であろうと、私は、それを実現可能な政権
を支持したい。

 ついでだが、この「格差」を生ぜしめた、具体的な「戦争責任」の追求こそ
が必要だと、少なくとも私たち兄弟は昔から考えている。

 長くなるので次の機会に譲るが、「東京裁判」の是非当否は別にして、「日
本国民自身による、戦争責任明確化の裁判が行なわれていない」ことにこそ、
国民の中に「歴史認識」が一様ではない原因があると思っているのだが、いず
れ書きたいと思っている。

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 週刊メールジャーナル 2006年9月27日 第353号(水曜日発行)
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