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2006/10/11 No.355 週刊メールジャーナル 読者数11636人(前回)
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●安倍政権のアキレス腱となりかねない杉山敏隆氏とは何者か
(会員制経済情報誌『現代産業情報』10月1日号より転載)
「人脈屋」と呼ばれる“商売”がある。
座持ちが良くて人好きのする人物が、「政と民」「官と民」「民と民」を結
びつけ、それを自らの仕事にも生かす。人間社会の「潤滑油」のようなもので
あり、社会的役割もそれなりにある。
東京・銀座でゴールネットというコンサルタント会社を経営する杉山敏隆氏
は、典型的な「人脈屋」だろう。
Webに詳しい次男を社長にしたこの会社で、会長の杉山氏はホームページ
の作成を請け負いつつ、会社経営の長い経験を生かしてコンサルも行なう。同
時に、異業種交流会や勉強会、政治家の後援会に誘うこともある。
その杉山氏が注目を浴びたのは、ヒューザーの小嶋進社長が、「安晋会の会
員として安倍晋三事務所に相談に行った」と、政界への働きかけを口にし、そ
の安晋会の取りまとめ役が杉山氏だったからだ。
この問題を国会で追及された安倍氏は、政治団体ではなく「私的後援会の一
つ」と説明、新聞・テレビもそれ以上、安晋会について突っ込むことはなかっ
たが、安倍政権発足にあたり「新首相周辺の疑惑団体、疑惑人物」として、安
晋会と杉山氏のことが改めて注目を集めている。
連続追及しているのが『週刊ポスト』。同誌は、やはり杉山氏が理事長を務
める「竹中平蔵経済塾」に絡めて、安倍氏や竹中氏を支援する杉山氏が、会費
を集めてパーティーを主催しながら、政治資金収支報告書に正確に記載してい
ないことを問題にしている。
確かに、杉山氏は任意の勉強会、交流会、後援会を主宰、21世紀政治研究
会という政治団体の代表も務め、懇親会やパーティーなどで会費を徴収しなが
ら、それがどのような形で、政治家への献金になっているのかが曖昧だ。
『ポスト』報道によれば、政治資金収支報告書に記載されているものもあれ
ば、ないものもあるという。
「どんぶり勘定」の印象で、いい加減な記載で許された時代はともかく、政
治資金規正法で厳しく律せられることになった今は、そんな曖昧は許されず、
所管する総務省が、そのあたりをチェックすることになろう。
それはともかく、安倍首相にとって問題なのは、不動産・建設業界に足場を
置いていた杉山氏が、そうした業界人脈を安倍氏につないでいたことである。
「貸し借り」の関係が、すでに確立していたとすれば、今後、「杉山人脈」
が安倍政権の足を引っ張ることになりかねない。
ゴールネットのホームページによれば、顧客(サイト制作を受注)にダイナ
シティ、大京、ジョイントコーポレーション、レオパレス21、ABCホーム
など新旧不動産・建設業者の名が並ぶ。
また、杉山氏はかつてUDI経営者連合会を主宰していたのだが、ここにも
不動産・建設業者が多かった。
その流れを汲む安晋会に、アパグループ、アパマンショップネットワーク、
三光ソフラン、菱和ライフクリエイトなどが名を連ねているのも理解できる。
杉山氏は、1945年1月生まれの61歳。慶応大学文学部を卒業、ホンダ
などに勤務の後に独立、バブル期の前に不動産業に進出し、一時は不動産販売、
マンション建設などで飛躍的に業績を伸ばすが、バブル崩壊後の91年9月に
会社を倒産させた。
もっとも、「人脈屋」としての活動は、“本業”の浮沈に関わらず活発で、
91年12月、不動産業者を中心としたUDI都市開発情報協会(後にUDI
経営者連合会に名称変更)を発足させた。
安倍氏は、岩国哲人、渡辺秀央などの政治家とともに、「顧客」として名を
連ねていた。
杉山氏の人脈は、ともかく幅広い。「謎の宗教団体」といわれた慧光塾の光
永仁義氏(昨年死去)とも事業を通じて密接に関わっていたし、HISの澤田
秀雄氏が会長を務める日本ビジネス協会(JBC)のメンバーとの交流も深い。
不動産を核にした各界に人脈を持ち、政治家にも知己が多い杉山氏だが、安
倍家との関係は別格で、慧光塾では安倍氏の母の洋子さんと、UDIでは父の
晋太郎元外相と密接な関係を築いていた。
そういう意味で杉山氏が「安晋会」を立ち上げ、小泉改革を推進する竹中氏
のために「竹中平蔵経済塾」を発足させたことも理解できるが、参加する不動
産・建設業者にも、当然、思惑はある。
参加者には、規制改革路線に乗った法改正や不動産流動化の推進を要望する
業者が少なくなかったという。
ヒューザー事件をきっかけに杉山氏は活動を休止。だが、杉山人脈は既に安
倍氏に食い込んでいる。そして、過去の例が示すように、一発勝負の不動産・
建設業者の“仕掛け”が政界スキャンダルに発展することは多い。
それだけに首相となった安倍氏には、こうした業者とつきあいを遮断するぐ
らいの覚悟でいなければ、いつか足元を掬われる可能性があると指摘しておき
たい。
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【あとがき】
北朝鮮の核実験は、いまなぜ行なわれたのか。かの国は、これからどうなる
のであろうか。
この核実験は、やるとすれば、やはりこの時期しかなかったようだ。谷内外
務事務次官の「ワシントン報告」は正しかった。
安倍首相の中国、韓国訪問が、北の核実験をプッシュした一因となったこと
は間違いない。
もちろん、「北の(核実験)予告」に対して、米国が「二国間交渉には応じ
ない」ことを明らかにするタイミング。
それと、6日の「国連安保理の議長声明(議長国は日本)の採択」、10日
に控えた「朝鮮労働党創建記念日」というタイミング。
これらをあわせれば、「早ければ7日(週末)に実行」という、「報告」の
精度はきわめて高かったのである。
それにしては、久間防衛庁長官を大阪に派遣したという、防衛庁と自民党の
危機管理はまことにお粗末だったが、本論からそれるので脇に置く。
実際、米欧の有力メディアのほとんどは、安倍首相の中・韓首脳会談におけ
る中心的議題は、もっぱら「北朝鮮問題」である、と書いていた。
これに対して日本のマスメディアの多くは、「靖国」や「歴史認識」などを
取り上げ、安倍氏の首相就任前後の“心理変化”や“行動変化”を探る、情緒
的な問題を中心に報道していたが、的を射ていたとはいい難い。
いずれにせよ、欧米各国の「首脳外交の常識」からすれば、日中、日韓の当
面する最大の外交課題は北の問題だったのである。
現に、中・韓の外交戦略からしても、靖国や歴史認識などの“神学論争”を
蒸し返すよりは、「北の予告」にどう対処するかが、眼前の現実的外交課題に
違いなかった。
一方の当事者、北朝鮮にとって、日中・日韓首脳会談の実現は、予想を越え
た早さだったようだ。
ことに中国については、その“奥の院”での権力闘争の結果、胡政権が日本
に対して柔軟な姿勢を見せるのは、北にとって、きわめて気掛かりなことでは
あったろう。
今回の実験が成功だったのか、失敗だったのか、あと数日の分析が必要のよ
うだが、北は、安倍首相の訪中、訪韓にあわせて、実験を急いだとみてよいだ
ろうし、実験を継続するかどうか、国連安保理の動きをみている。
安保理の議論は、米国の提案に対して、予想どおり中・ロが慎重論を唱え、
制裁決議の内容を不透明にしている。
仮にも北の体制が崩壊した場合、中・韓への影響は計り知れないものがある
以上、結論を急げば軍事制裁の道は除外されるであろうし、いずれにせよ議論
は簡単には進まない。
結論が長引けば、「核不拡散条約(NPT)へ復帰させる」というような、
“軟着陸路線”の選択もありうる。
問題は、日本国内の議論である。ここを先途と、ライトウィングからは、
「核武装論」が聞こえてくることだ。
この国の「戦後60年の歩み」から、ようやく国際的に認められてきた「平
和主義」を、この際一層明確に認知させる外交努力が必要だということだ。
少なくとも、「非核3原則」の存在が日本の平和主義の象徴であることを、
いま、改めて安保理の議論の場で確認する必要がある。
今回の“実験”は、周辺各国にとっては確かに“脅威”ではあろうが、その
先に、韓国や台湾の核武装といった可能性がちらつきだしたならば、それこそ
北やイランの思うツボにはまることを、この際、自覚しておく必要があるだろ
う。
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週刊メールジャーナル 2006年10月11日 第355号(水曜日発行)
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編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社
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