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  2006/11/8 No.359   週刊メールジャーナル  読者数11630人(前回)
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【お断り】
 本号は、ナナ総合コミュニケーション研究所が運営する「COMMU・SU
PPO(コミ・サポ)」のNET・WEBに掲載したコラムを転載します。
 このコラムは、同研究所のネット会員に向けたエッセイですが、本誌購読者
の中におられる企業広報関係者にも提供する目的で掲載するものです。
 ご関心の向きは、下記【お知らせ】のURLにもアクセスされることをおす
すめします。

■社内コミュニケーションと社内広報 2

「安倍政権の官邸広報体制は国家経営に必要なNCM
を意識したものだが……」
           ジャーナリスト・広報アドバイザー 川崎 明

 今回を含めて2回くらい、「社内広報」から少し脱線した評論をすることを
お許し願いたい。

 9月に誕生した安倍政権は、これまで、どの政権もやったことのない、新し
い試みにチャレンジしているといってよいのだが、そのことは、「社内広報」
の課題にも通じると思われるので、あえて、脱線をしたいのである。

 つまり、前回本欄の棹尾に書いた、「安倍新内閣の広報体制」については、
これまでどのマスメディアも踏み込んだ論評をしていないのだが、社内広報を
担当する人は、安倍首相の「広報体制」の意図するところを知るとともに、国
家の運営においても、「国内(国民)広報(コミュニケーション)」がいかに
大切か、参考にして欲しいからだ。

 安倍内閣は“理念先行”の政権である。
 首相就任時の所信表明は、企業経営における、経営トップによる事業目的
(ミッション)の表明とよく似ている。

 安倍首相は、自らの意思で自民党総裁に立候補したとはいえ、ある種特別な
政治的、歴史的環境の下(実質的には小泉前首相による禅譲)で、政治家とし
てのキャリアの少ない自分に、なぜ、総裁就任のチャンスが生まれてきたのか
ということを、よく自覚をしていると思われる。

 もし首相に就任すれば、これから先、この国をどのように引っ張ってゆく
(変えてゆく)のか、そのためには、いかなるガバナンスが必要になるかを考
え、さらに、ごく一部の仲間(主義主張が近い若手議員団)と相談して立候補
をしたはずだ。

 そのことは、「安全運転」と評された閣僚人事にも表われているが、何より
も、「官邸人事」に象徴的に表われているといってよい。

 このことについては、本欄の読者には、もっと分かりやすく丁寧に説明する
必要があるかもしれないが、そのスペースを取ることは、本欄の目的から逸脱
が過ぎると思うので、もし知りたい人は、筆者が主宰するメルマガ『週刊メー
ルジャーナル』のバックナンバーを参照して欲しい。
http://www.mail-journal.com/

 さて、安倍首相は、「美しい国づくり」というミッションを示したが、その
具体策となると、理念を実現する具体的な手立てや目標はあまり示していない。
そのため、マスメディアや野党の批判の矢面に立たされている。

 ことに、「靖国参拝」「憲法改正」「日米安保体制」「アジア外交」など、
小泉政権時代からの重要な政治課題については、かつて自ら発言してきた主張
でさえ、明確な発言を控えるようになった。

 そのことを、野党やマスメディアから、「君子豹変」などと批判されている
のだが、安倍政権の成り立ちからすれば、ある面、やむをえないことといえる
だろう。

 一方、企業経営では、「経営理念」や「経営哲学」がいかに明瞭でも、経営
環境に適した、具体的な「経営方針」や「経営目標」、「達成課題」を明確に
示さなければ、組織も従業員も動かない。だから、長期、中期、短期の経営方
針と計画がきわめて重要になる。

 安倍政権のいう「美しい国づくり」の国家経営においては、これから、閣僚
や5人の首相補佐官のもと、いかなる審議会やプロジェクトを立ち上げ、どの
ようなメンバーで、どのようなマイルストーンを設定していくのか、逐次、具
体的に明らかにしていくことが、当初の高い支持率を維持する鍵になる。

 実はそのことが、今回の「新しい広報体制」の主要な動機となった、といっ
てもよいのである。

 国家経営のミッションは、行政内部のコミュニケーション(指示および命令)
により、各行政機構の執行指針に反映され、行政施策として実行に移される、
というのが本来の姿である。

 賛否は別として、いま問題になっている「必修科目の履修漏れ」では、官房
と文科省、および与党との話し合いによる、「履修緩和対策」が決まったが、
これををみると、内閣の「広報対策」がいかに重要か、良く分かる。

 今後、安倍内閣が目指す「官邸主導」を機能させるためには、国民の高い支
持率を維持する必要がある。

 そのためには、企業経営におけるICM(インターナル・コミュニケーショ
ン・マネジメント)と同様に、NCM(ナショナル・コミュニケーション・マ
ネジメント)を機能させなければならない。

 そのため、塩崎官房長官は行政府の広報マンとして、行政府の執行状況に加
え、守旧派や野党との軋轢や交渉経過、政治的問題点を、わかりやすく、広く
国民に説明する責務を負っている。

 一方、世耕首相補佐官(広報担当)は、経営トップの広報マンとして、安倍
首相のダイレクト・コミュニケーションを担当する任務を負うことになったわ
けだ。

 米国の大統領広報担当官を真似たシステムともいわれるが、日本の首相官邸
でははじめての試みである。

 安倍政権の広報体制と小泉政権のそれとを詳細に比較すると、両者の政治体
制の違いが興味深く理解できるのだが、ここでは長くなるので割愛しよう。

 要は、小泉首相と安倍首相の、政治家としてのキャリアとリーダーシップを
比較すれば、安倍政権における広報体制の必然性が理解できるのである。

 安倍内閣は、官邸広報を“しっかり”やらなければ、国民の支持率を維持で
きない運命を背負って誕生したのである。

 小泉首相の政策広報との端的な違いは、いわゆる“ぶらさがり会見”にある。

 安倍首相は、この「官邸記者会見」を午前1回だけにし、午後は世耕補佐官
の会見に代えたいとしているのだが、記者団はこれに納得せず、いまだに、も
めている。

 小泉首相のような、“ワンフレーズ・ポリテックス”といわれた、国民向け
の分かりやすいメッセージを“ノンペーパー”で発信するキャリアは、安倍首
相にはない。

 だが、記者団は、これまでどおり2回の“ぶらさがり”を求めている。「国
民の知る権利に応える」というメディアの気持も分からないではないが、記者
団の想定質問に対する官邸側の準備はかなりの負担になっている。

 記者団の要求は、記者クラブ制度に慣れっこになっている、安易な取材癖と
無関係ではないように思われる。

 安倍政権の特質を考えれば、官邸が、企業における広報セクションと同様の
役割を果たすことが、きわめて重要であることを誰よりもよく認識しているは
ずである。

 そのためには、世耕補佐官が、「首相の分身」として、NCMの重要性を認
識して、メディア対応をすることがひときわ大切なのである。

 安倍政権の特長といわれる「官邸機能の強化」は、こうして生まれたのだが、
これが機能するためには、官邸を上げて広報機能を強化することであろう。

 これができるかどうかで、安倍政権に対する国民の支持率は、上がりもする
し下がりもするだろう。その様子を「しっかり」見届けたいと思う。(以下次
号)

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 ナナ総合コミュニケーション研究所
 「Commu-Suppo」 コミサポ
 http://www.commu-suppo.net/
 株式会社 ナナ・コーポレート・コミュニケーション
 社内広報事業部   豊田 健一
 Tel :  03-5312-7471    Fax :  03-5312-7475
 E-mail : toyoda@nana-cc.com
  URL :  http://www.nana-cc.com
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 週刊メールジャーナル 2006年11月8日 第359号(水曜日発行)
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    編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社
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