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  2007/1/10 No.365   週刊メールジャーナル  読者数11453人(前回)
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安倍政権の支持率急落の背景には
官邸広報の機能不全がある
            本誌編集発行人・ジャーナリスト 川崎 明

 9日昼過ぎ、安倍首相は欧州4カ国(英、独、ベルギー、仏)歴訪に旅立っ
た。昨年、首相就任直後の中国、韓国歴訪のようなサプライズはないが、日本
とEUとの関係強化は必須の政治的課題だけに、この歴訪の意味は大きい。

 ことに、英、仏は政権選挙を控えており、その行方は、日本にとっても大き
な影響がある。

 そこで、次期政権の有力立候補者とも会談する予定といわれるが、欧州でも、
安倍政権の支持率急落は驚きの目で見られており、駐日の各国大使館はその分
析に苦慮していたとされる。

 仮に、今夏の参院選で与党議席が過半数割れになるようなら、自民党内の総
裁交代機運が一気に強まる可能性もあるだけに、各国とも、安倍政権支持率の
動向予測には、格段の苦労があったようだ。

 この支持率急落は、小泉前首相が政権の命運を掛けたとされる郵政民営化に
造反した議員を、安倍首相がいともあっさり復党させたことに、国民が不審の
気持ちを表明したものだという分析は、各国共通だ。

 欧州では、野党政権が誕生したのならともかく、前政権の大番頭(幹事長)、
政府広報(官房長官)を務めた安倍氏のガバナンスだけに、正直各国ともびっ
くりしたというのが本音のようだ。

 「好きなようにやれ」というのが小泉流“禅譲”の真髄のようだが、主権者
が国民である以上、「衆愚政治」のお手本のような復党劇には、国民も怒りの
意思表示をした。

 安倍氏の言う「美しい国」とは、どのような国なのだろうか?
 そのことを、具体的に明確にしたうえで、その関連において、復党の合理性
が説明されなければならないはずだが、いまだにその骨格がはっきりしない。
 
 そのような中、「郵政民営化を骨抜きにするのか」とか、道路特定財源の一
般財源化の問題では「熊や狸のための自動車道路も全部作るのか」などといっ
た疑問が湧いてきたのだが、安倍首相本人からは、いまだはっきりした説明が
ない。

 また、「任命責任がないとはいえない」というのが、本間前政府税調会長や
佐田前行革担当相の辞任問題なのだが、これまた、いっとき「庇うような」発
言をしたり、その後「だんまり」を決め込むなど、およそ「安倍さんに期待し
たい」という国民感情を逆なでする言行が目立った。

 結局安倍さんも、“泣く子と地頭”ではないが、“選挙と地盤”には勝てな
いのか、「美しい国」よりも「目先の選挙」に、なりふり構っておれないとい
うことなのか、という思いがしみわたってしまった。

 さて、こうした「逆世論操作」の原因はどこにあるのか。
 実は、「脱小泉」というのが“安倍チーム”の政権戦略ではあったのだが、
幹事長・官房長官人事でのつまづきから、いまもって安倍体制が確立していな
いことがすべての原因と見てよかろう。

 そして、本来“安倍チーム”が目指す安倍体制の中で、重要な役割を果たす
のが広報担当補佐官のはずであったのだが、そのメッセージは影が薄い。

 筆者は、永年企業広報でメディア対応を担当した経験から、専門的な目で、
安倍政権の広報に注目してきた。

 政権発足100カ日の中で、官邸の広報機能が確立していないことが、実は
支持率急落の大きな要因ではないかという分析をし、そのことを、さる欧州系
メディアの取材に応じたところ、奇しくも認識の一致を見たのである。

 以下は、「ナナ総合コミュニケーション研究所」が運営する、「コミサポ・
ネット」 http://www.commu-suppo.net/
の社内広報コラムから転載した記事である。あわせてご覧いただきたい。


「社内コミュニケーションと社内広報」(4)

 前回までの脱線を元の路線に戻したいが、その前に、安倍政権の広報体制に
ついてもう少し触れておきたい。

 安倍政権が、なぜ画期的な広報体制を敷くことになったかといえば、初の戦
後生まれの総理大臣である、言い換えれば、政治家としてのキャリアが未熟で
ある、ということと無関係ではない。

 小泉前首相が、原則毎日2回の“ぶら下がり”会見で、国民に向けた政治的
メッセージを分かりやすく発信し、その結果が高い支持率を維持するのに役立
っていたことと比べれば、安倍首相とのキャリアの違いがよく分かる。

 安倍首相としては、まかり間違えばリスクの大きい単独記者会見よりも、官
邸で練り上げた国民向けのメッセージを、定期的に発信する「コミュニケーシ
ョンシステム」を機能させた方が良いと判断したのであろう。

 そのために、“安倍チーム”の一員である世耕・広報担当補佐官を任命した
のだが、今のところ、このシステムがうまく機能していない。

 本来、官邸の広報メディアの役割を果たすはずの商業マスメディアとの関係
がしっくりしていないことが原因のひとつと考えられるが、郵政造反議員の復
党、特定財源の一般財源化問題などでは、むしろマスメディアの報道が逆作用
してしまった。

 加えて、政府税調会長、行革担当相の辞任が相次いだうえ、タウンミーティ
ングでの「やらせ」発覚問題などでは、この政権の危機管理としてのメディア
対応がきわめてまずかった。

 結果として支持率が大幅にダウン。発足後僅か100日の間に、これほど極
端に支持率が低下したことには、駐日の各国大使館もびっくりしたらしい。

 その分析の中には、発生した事実そのものの重さよりも、首相のメッセージ
が国民に伝わらなかったこと、言い換えれば、首相自身の顔が見えないことに
あったという分析もあったくらいだ。

 さて、国の広報のありかたでもそうだが、会社の広報でも、トップの顔がど
う見えるかということがきわめて重要である。

 昨年は、湯沸器事故のパロマ、エレベーター事故のシンドラー社、駐車場不
正改造の東横イン、日興コーディアルグループの不正経理など、企業の危機管
理では、トップの対応に問題があったと思わせるケースが数多くみられた。

 事故や不祥事が発生したときの対応のしかた、とくに、メディアへの対応が
まずいとみられるケースが目立ったのだが、実は、よく考えなければいけない
ことは、単に「対外広報のマニュアル」がよく整備され、「危機管理の訓練」
が普段からできていればよいということではない、ということだ。

 事故や不祥事の内容や性質を見れば分かることだが、経営トップの対応が悪
い会社の場合は、平素から、社内の風通しが悪い、言い換えれば、社内コミュ
ニケーションがうまくいっていないケースが多いという事実がある、というこ
とだ。

 マスメディアで報道され、それがきっかけで業績に大きな影響が発生し、つ
いにはトップ更迭になったケースがあまりにも多いことから、「危機管理は主
として対外広報の問題である」という認識が一部にあるが、これは、大変大き
な誤解である。

 次回から、「社内コミュニケーションと社内広報」の本論に話を戻そう。

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 週刊メールジャーナル 2007年1月10日 第365号(水曜日発行)
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