■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2007/3/7 No.372 週刊メールジャーナル 読者数11283人(前回) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ●『「法令遵守」が日本を滅ぼす』を上梓した郷原元長崎地検次席の慧眼 (会員制経済情報誌『現代産業情報』3月1日号より転載) 日興コーディアルグループ(日興CG)の不正会計事件は、「金子(昌資前 会長)ー有村(純一前社長)体制」と呼ばれた、前経営陣のコンプライアンス 強化が原因となっている。 これは逆説ではない。 総会屋への利益供与事件で誕生した「金子ー有村体制」は、米シティグルー プとの提携によって、創業以来の危機を乗り切ろうとし、実際、リストラを含 む大胆な経営改革を断行した。 その中には、当然のことながら弁護士、公認会計士といった顧問団や法務担 当セクションを増強したうえでの、コンプライアンス強化が盛り込まれていた。 コンプライアンスを略してコンプラ。 今や固い印象の「法令遵守」と呼ばれることもなくなったが、企業の必要十 分条件として認識されたコンプラが、どれだけ企業の役に立っているかは疑問 だ。 強化されたコンプラに寄りかかってしまったがゆえに発生してしまった事件 がいかに多いことか。 法に違反しているかどうかだけをチェックするコンプラは、「法をクリアし ていれば、なんでも許される」というモラルハザードを生み、それが事件につ ながっている。 利益だけを本体に取り込み、損失は孫会社に残すという、子供でもわかるイ ンチキを、日興CGの経営陣は「厳しいコンプラのチェックを受けているから」 という“言い訳”で通してしまった。これが「コンプラ強化」が抱える“罠” である。 この矛盾を見事に突いたのが、郷原信郎元長崎地検次席検事が上梓した 『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)である。 郷原氏は、「単純な『法令遵守』のひと言で問題を片付けてしまおうとする ことで、問題が解決するどころか、一層深刻な事態を招いているのです」と指 摘、コンプライアンスの持つ弊害を次のように書く。 「抽象的に法令遵守を宣言し、社員に厳命するだけの経営者の動機が、命令 に違反して社員が行った違法行為が発覚した場合の『言い訳』を用意しておく に過ぎないこと、法令遵守によって組織内には違法リスクを恐れて新たな試み を敬遠する『事なかれ主義』が蔓延し、モチベーションを低下させ、組織内に 閉塞感を漂わせる結果になっていることを感じています」 日興CGの場合は、そこから一歩踏み込んで、「法令をまもればいい」「法 令に従がって物事の是非を判断すれば良い」と、経営陣が安易なコンプラ利用 に走ったわけだが、郷原氏はそれとは別に、一つひとつの「適法判断」が生ん だ事件としてパロマを挙げる。 「25年間1200万台以上、不完全燃焼無事故の安心給湯器」というキャ ッチフレーズで、パロマは問題となった給湯器を製造販売してきた。 だが、実際には製造開始の5年後の1985年に初めての死亡事故が起き、 その後も事故が相次いでいた。 それでもパロマは、刑事、民事の責任を回避するために、「メーカーの責任 ではなく、不正改造を行った修理業者の責任だ」と、主張してきたという。 郷原氏は、そのこと自体は責めない。 「訴訟対応をした受任した弁護士としては、依頼者であるパロマ側の利益を 図るために法的に許される範囲の最大限の主張を行うのは当然です」 つまり、パロマ側の対応は、コンプラの観点からは問題なかった。だが、悲 惨な死亡事故が繰り返されることによって、メーカーとして果たすべき社会的 責任を回避、それが嵐のような批判となってパロマを追い詰めた。その誤謬を 郷原氏はこう指摘する。 「パロマ側は、民事、刑事の責任回避のための訴訟対応を行うという『法令 遵守的対応』を取り続け、それが、メーカーとして必要不可欠な事故再発防止 のための社会的責任を果たすことを妨げてしまいました」 「法」の前に、企業が社会的存在であるがゆえに果たすべき責任がある。そ れは「法」に縛られない「モラル」や「道」であり、成文化されているわけで はない。 だが、そのうえに立った「法令遵守」でなければ、企業には自律の精神が失 われ、結果的に「法」を犯して社会に指弾される。 この皮肉を、長崎地検次席検事を経て、2005年から桐蔭横浜大学法科大 学院教授で同大コンプライアンス研究長を務める郷原氏は、本書で描き切った といえよう。 ◆会員制(法人・個人)経済情報誌『現代産業情報』購読のご希望は、本誌が お取次ぎします。お申し出あれば、見本誌を無料でお送りいたします。 【あとがき】 社内広報によって、「コンプライアンス委員会を設置しました」とか、「コ ンプライアンスを心掛けましょう」などと、呼びかけるだけではなにほどの意 味もなさない。 それどころか、成文化された「社規」「社則」「法規」「法令」を形式的に 守りさえすれば、あとは「何をしてもよい」といった、誤った価値観を共有す ることにさえなりかねない。 「適法」ともいえないが「違法」にはあたらない、グレーゾーンを利用した 「脱法」行為を「うまいこと」と考える風潮がはびこっている。 そういうこともふくめて「反法」をやめようというのが、いまいわれている コンプライアンスの本意のはずだ。ということを、本誌は繰り返し訴えてきた。 企業が、「物づくり」や「サービス提供」を通じて、その社会的存在価値を、 消費者、利用者に認めれられ、コーポレートレピュテーション(企業の信望) を獲得するするためには、「物」「サービス」そのものがコンプライアンスで なければならない。 昨今、経済のグローバル化によって持ち込まれた外来語、カタカナ語が、正 確な日本語に意訳されないまま、溢れかえっている。 「コンプライアンス」は、マスメディアによっては、いまでも「法令遵守」 という注釈がつけられているが、これが「狭い意味」の「守るべきことがら」 になってしまっていることは、大変なミスリードである。 コンプライアンスを徹底するということは、「物づくり」「サービス提供」 の企業活動全般を通じて“貫通”しなければならない“こころ”を鍛え上げる ことである。 「コンプラ」「コンプラ」と、みんなで合唱しているだけでは、定着するも のではない。 朝日新聞夕刊のシリーズ企画「ニッポン 人・脈・記」で、先ごろまで連載 されていた「拝啓 渋沢栄一様」シリーズでは、渋沢の経営哲学「論語とそろ ばん」が、いま、グローバル化の波のなかで、この国の経営から消えかけてい ることを問題提起していた。 この企画のなかで、真のコンプライアンスの意味を、取り上げるべきであっ たろう。 トップの経営哲学に裏付けられた企業文化として、本物のコンプライアンス が根付くことで、はじめて企業価値はたかまるといえる。 その企業文化は、活発な社内コミュニケーションによってのみ構築すること ができる。 その社内コミュニケーションは、トップの経営戦略として、トップみずから のガバナンスガ必要であり、一介の広報担当者など余人を持って変えがたいと、 広報アドバイザーの筆者は考える。 【お知らせ】 ◆◆ 第六回 全国社内誌企画コンペティション 募集開始 ◆◆ Challenge! あなたの企画を見せてください いよいよ、恒例の社内誌企画コンペティションが始まります 社内誌の専門家による客観的な審査が受けられ、 今後の社内誌制作を変える大きなきっかけとなります 詳しくは ⇒ http://www.commu-suppo.net/competition.html ------------------------------------------------------------------- 株式会社 ナナ・コーポレート・コミュニケーション 社内広報事業部 豊田 健一 Tel 03-5312-7471 Fax 03-5312-7475 E-mail ;toyoda@nana-cc.com URL ;http://www.nana-cc.com ------------------------------------------------------------------- ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 週刊メールジャーナル 2007年3月7日 第372号(水曜日発行) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社 〒130-0026 東京都墨田区両国2-1-4 第2西村ビル201 ホームhttp://www.mail-journal.com/ メールadmin@mail-journal.com 転載・再配布等には事前にメールジャーナル社に許可をお取り下さい。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |