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  2007/5/2  No.380   週刊メールジャーナル  読者数10978人(前回)
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●官僚の「事務局長争奪戦」が暗示する日本版NSCの将来
(会員制経済情報誌『現代産業情報』5月1日号より転載)

 国家安全保障会議(日本版NSC)に向け、安全保障会議設置法案が国会に提
出され、NSC設置は安倍首相の「夢物語」の域を脱し、正式にスケジュールに
のせられた。

 ただ、2月に出された有識者会議の報告書から、今回の関連法案提出の一連
の流れの中で、最も喜んでいるのは官僚――特に外務、防衛両省に加えて、警
察庁の面々であるという実態が、NSCの先行きを暗示している。

 創設手続きの土台となった有識者会議「国家安全保障に関する官邸機能強化
会議」で、最も目立った“争点”は、塩崎恭久官房長官と小池百合子首相補佐
官の暗闘だった。

 小池氏が求めていた「補佐官とNSC事務局長の兼任」は、安倍政権発足直後
から表出している、塩崎ー小池の幼稚な主導権争いの延長戦上で議論され、結
局は、兼任は可能との見識で一致すると同時に、「補佐官が現職議員の場合は
事務局長を兼任させない」との条件を付す形で、塩崎氏が小池氏を組み伏せた。

 その陰で、関係官僚たちは目立たないながらも、重要な「果実」を得ていた。
NSC常設メンバーが首相、官房長官、外相、防衛相の4人と固められる中で、
外務、防衛両省は「NSCは両省の権限を変更するものではない」と明記させる
ことに成功したのである。

 既成組織・権限の変更に対する本能的ともいえる警戒をとる必要はなく、両
省は心置きなく焦点を「初代NSC事務局長」の獲得に絞ることが可能となった
のだ。

 事実、現段階で既に事務局長ポストの争奪戦は水面下で始まっている。

 官房副長官級である事務局長候補として、外務省内部では、NSC発足のメド
である来年4月までに退任が見込まれる加藤良三駐米大使、谷内正太郎事務次
官の名が有力として挙がる。

 対抗する防衛省からは、佐藤謙・元防衛事務次官を推す目論見がある一方、
現職の守屋武昌事務次官が強い意欲を示しているとも伝えられる。

 ただ、両省ともに脛に傷を持つ身であり、首相がこうした思惑をすんなりと
受け入れるかについては、疑問視する向きもある。

 「上海の日本総領事館員の自殺での外務省の対応に、首相は非常に強い不信
を持ち続けている。外務省出身者に『情報』を扱わせるかどうか」(関係者)

 一方の防衛省も、弊誌(No.574)が指摘した防衛・軍事専門商社「山田洋行」
の分裂問題の余波が及ぶ懸念が強い。

 分裂双方のグループには、現職を含む防衛省幹部がべったりと癒着しており、
NSC人事とリンクしてスキャンダルに発展しかねない状況になっているのであ
る。

 その間隙を縫って攻勢を強めているのが警察庁だ。警察官僚は早い時期から
NSC構想には協力的で、密かに官邸に知恵を授けていたフシがある。

 漆間巌長官を通じて、首相は警察官僚に近いとみられていることもあり、警
察庁の水面下の動きは予想以上に厳しい。

 漆間長官を始めとし、杉田和博・前内閣危機管理監や大森義夫・元内閣情報
調査室長らを送り込もうという動きが、バラバラに発生しているのが現状だ。

 そもそも警察官僚には、NSC運用において、「内調に新設する内閣情報分析
官が各省庁からの情報を集約して、情報評価書(原案)を作成してNSCに提供
する」という、アドバンテージが与えられる方向になっている。

 「警察屋は強気になっている」と、他省庁の幹部が吐き出すような追い風に
なっているようだ。

 とはいえ、内調はこれまで情報に弱く、その名に相応しい仕事はほとんどし
てこなかった。

 分析官なるポストが与えられたとしても、他省庁の妬みを買えば、これまで
と同様に情報は得られず、NSCは空転する可能性がある。

 日本版NSCが機能を発揮するかは、事務局にいかに優秀なスタッフを確保で
きるかにかかっている。

 米国の200人規模に大きく劣る20〜30人体制と、「少数精鋭」にする
というからには、余計に事務局長人事の重要性が増してこよう。

 現状のごとく外務、防衛、警察の欲と思惑に任せ、足の引っ張り合いの争奪
戦の末の役人人事では、NSCの機能発揮は「夢物語」で終わることは間違いない。

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