■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2008/1/30 No.417 週刊メールジャーナル 読者数11137人(前回) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ●シティの大損失に揺れる市場と日興コーディアル経営陣の罪 (会員制経済情報誌『現代産業情報』1月1・15日号より転載) 発表のたびに不良債権が増え、市場も国民も疑心暗鬼にかられて銀行を信用 しなくなる――この日本のバブル崩壊後に似た泥沼の不信に、米国金融界が陥 っている。 サブプライムローンショックは容易に解消しない。1月15日に米シティー グループが発表した2007年1月ー12月期決算は、なんと235億ドル (約2兆5000億円)の損失だった。 この膨大な損失には目もくらむが、それより問題は底が見えないことである。 ことにシティが抱えた証券化商品の損失が、どこまで広がるか見当もつかない。 これまでに公表されたシティの持つサブプライム関連資産は、住宅ローン担 保証券と債務担保証券などを合わせて550億ドル(約6兆5000億ドル) だった。そのうち処理済みは3分の1ほどで、残りの処理はこれから。 さらにシティは、SIV(ストラクチャード・インベスト・ビークル)と呼 ばれる簿外の特別目的会計を、本体決算に連結処理すると発表、この総額が4 90億ドル(約5兆3900億円)にも達する。 今や証券化商品というだけで売れず、処理しようと思えば、叩き売らなくて はならない。 シティは処理しきれない不良債権の山を抱えたのも同然で、現在、公表され ている増資では、とてもしのぎ切ることはできまい。 15日に発表した追加増資案は、シンガポール政府投資公社、クウェート投 資庁などに145億ドル(約1兆5000億円)の増資(優先株と公募)を行 なうというもの。 その前の増資がアブダビ投資庁の75億ドル(約8000億円)で、これだ けの増資をしても「焼け石に水」(金融筋)というのだから、末期的症状であ る。 さらに問題なのは、今回のサブプライムローン問題は、米国型の経営や金融 の「信用」が毀損してしまったことである。 「米国型」はシンプルだった。 金融機関はムダな資産は持たず、常に自己資本を厚くして不測の事態に備え ると同時に、身軽でフレキシブルな対応を可能にする。 同じように事業会社は、本業に影響を及ぼすような余分な資産を持たず、バ ランスシートはできるだけ小さくし、でも株主資本利益率は上げて、企業価値 =株価を極大化するのが理想とされた。 証券化は、そのオフバランスを進める仕組みであり、例えば住宅ローンを増 やしたとしても、それを証券化でオフバランスすれば、売却の時点で責任は転 嫁され、増資することなく次のビジネスに取りかかることができる。 この証券化マジックを使って、ITバブルの崩壊と01年9月11日の同時 テロ危機を乗り切ったのが、グリーンスパンFRB(米連邦準備制度理事会) 前議長だった。 グリーンスパン前議長は、株バブルを住宅バブルに飛ばした。それも中間層 は、長い景気に支えられて自宅を所有しているから、黒人やヒスパニックを対 象にローンを組ませ、それも金利を高くするのは2年後からという条件だった から、金利引き締めに入ったらひとたまりもなかった。 焦げつきが急増、さらに証券化につぐ証券化でローンの中身をわからなくし て、米国金融資本の“手先”である格付け会社に高格付けをつけさせて販売す るという、米国流のいかがわしさがすべて露呈、投げ売りが始まったのだった。 考えてみれば、すべての資産を売却、ストックをなくし、業績が悪ければリ ストラ、好調時に再雇用といった米国的な経営手法が正しいわけはない。 株式持ち合いの日本型経営に問題はあったかも知れないが、効率だけを求め るのは誤りだった。 皮肉なことに、その米国流を最も信じたのが旧日興証券である。1998年 6月、“身売り”した責任者の金子昌資社長(当時)は、シティグループとの 資本提携に臨んでこう述べた。 「しがらみに守られた国内証券から脱却、外資との提携で世界的レベルの証 券を目指す」 その決意が悪いとは言わない。グローバルな世界で勝ち残ろうとするのは当 然だろう。だが、それが日本の経営環境とかけ離れた外資との提携に、なぜ結 び付いたのか。 「アメリカかぶれ」の経営は、結局、日興証券を消滅させ、そして今、シテ ィそのものが存亡の危機に立たされている。 国益とは何で、国情に合ったシステムと経営環境とは、どんなものなのか。 米国という指標を失った今、日本はそのことを真剣に考えねばなるまい。 ◆会員制(法人・個人)経済情報誌『現代産業情報』購読のご希望は、本誌が お取次ぎします。お申し出あれば見本誌を無料でお送りいたします。 【あとがき】 サブプライムローンの処理をめぐって、米国型の経営と金融の「信用」が毀 損した意味は重大である。 このことに関連して、1月24日7時35分発のロイター電は次のように伝 えている。 <世界はドルの買い増しに消極的=ジョージ・ソロス氏> <著名投資家のジョージ・ソロス氏は23日、世界経済フォーラム年次総会 (ダボス会議)で、世界的にドル離れが進んでいるとの認識を示した。同氏は 「金融市場には保安官が必要だ。世界はドルを買い増すことに消極的だ」と発 言。> このことに対して、日本のマスメディアは意外に冷静であり、重大発言とし て解説している記事は、今のところ見当たらない。 むしろ、ダボス会議で福田首相が自ら草稿に手を入れてまで力説した「環境 提言」に、各国首脳やメディアがほとんど反応を示さなかったことに対して、 「落胆」の記事を大きく書いている。 しかし、今年の世界経済の見通しのなかで、「米ドル」の価値が凋落すると すれば、どのような影響が考えられるのか、「札幌サミット」どころではなく なることを見通せないマスメディアの“感度”はまことに情けない。 当然、日本経済は大きな打撃を受けよう。「回復基調」とされる景気が失速 することは明らかであろうし、「北京オリンピック」後の中国経済の見通しを 絡めれば、日本政府も産業界も、なおのこと安閑としてはおれない。 ことに、グローバル化を進めている日本企業は、新たな見通しのもとでの 「リスク管理」に、抜本的な対策が求められよう。 そうしたなかでの日本の経営トップらは、いかなるガバナンスを進めるのか、 改正会社法や金融商品取引法という、新しい経営の枠組みの中で、コンプライ アンスを守り続けることができるのであろうか。 非正規従業員はもとより、パートやアルバイト従業員も含めて、全従業員の 力を結集して乗り切る覚悟が必要になるのではあるまいか。 これまでの日本的経営のもとで“過小”に扱われてきた「社内コミュニケー ションのマネジメント」を根本的に見直す必要があることを、本誌はしばしば 書いてきた。 いささか手前味噌になるが、こうした“警鐘”に、素直に反応を示した会社 が増えてきたことは喜ばしいことではあるが、まだまだ、米国経済の混迷と軌 を一にして、不幸な会社と従業員が多数生まれる可能性は消えていない。 【お知らせ】 本誌編集長・川崎明が執筆し、「ナナ総合コミュニケーション研究所」が提供 http://www.nana-cc.com/commu-suppo/comuncation.html したコラムが「NIKKEI−NET」(「経営BIZ」)に連載されています。 「BIZ+PLUS」の「知財・総務」欄で、特集として5回、隔週で連載さ れます。「特集:CSR時代の社内コミュニケーション・マネジメント」の標 題で、今回の第2回目は、「なぜCSR経営に社内コミュニケーション・マメ ネジメントが不可欠なのか」(01/30) です。なにとぞご高覧ください。 http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/soumu/rensai/kawasaki.cfm 【新刊本のご紹介】 ◆「新聞記者のミニ法話」◆(新風書房刊・1575円・税込) 「よくぞ、これだけ“坊さん”を追いかけたものだ。やさしく深く説かれた 法話だ」と、鎌倉・円覚寺、京都・清水寺の管長も絶賛! 元産経新聞の編集委員・藤井元秀氏が17年間かけて取材、高僧の話のエッ センスをまとめた。 人生の教訓がやさしく紹介されており、“座右の書”として活用できる。 登場する名刹には、円覚寺、清水寺のほか、東から成田山新勝寺、護国寺、 高幡不動尊、身延山久遠寺、永平寺、知恩院、比叡山延暦寺、高野山金剛峰 寺、東大寺、興福寺、薬師寺、法隆寺、四天王寺など、神社では、石清水八 幡宮、熊野那智大社などがある。 なお、同書所載の写真の多くは、本誌編集発行人・川崎明が撮影したもので す。あわせてご高覧いただければ幸いです。 ◆ お申し込みは本誌がお取次ぎいたします。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 週刊メールジャーナル 2008年1月30日 第417号(水曜日発行) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社 〒130-0026 東京都墨田区両国2-1-4 第2西村ビル201 ホームhttp://www.mail-journal.com/ メールadmin@mail-journal.com 転載・再配布等には事前にメールジャーナル社に許可をお取り下さい。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |