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  2008/2/6  No.418   週刊メールジャーナル  読者数11151人(前回)
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●政府系ファンドを提唱する国会議員の無責任
(会員制経済情報誌『現代産業情報』2月1日号より転載)

 サブプライムローン問題によって、投資リターンを貪欲に狙うヘッジファン
ドや、M&Aに絡むことの多いプライベート・エクイティ・ファンドからリス
クマネーが逃げ出し、金融の世界が急速に冷え込んでいる。

 それだけ本当に求められている企業の資金調達やM&Aは少なく、ファンド
資本主義の本質は、ファンドや投資銀行が仕掛けるマネーゲームだった。

 カネ余りが世界の不動産価格と株価を上げ、その資産効果で上場企業を舞台
にしたマネーゲームが盛んとなり、それでも行き場のないカネが、商品市場へ
と向かって石油や金を暴騰させた。

 そういう意味でサブプライムローンの破綻は、いずれ起こるべきバブル崩壊
であり、それが米国発の貧乏人を相手にしたインチキなローンであったために、
ドルの信認は揺らぎ、限界を迎えたアメリカ流金融の実態が明らかになった。

 金融バブルの崩壊で、欧米の金融機関は相当に傷んだ。損失処理を急がねば
ならず、そのために増資に踏み切ったが、引き受け先は政府系ファンドだった。

 アブダビ投資庁、ドバイ・インターナショナル、シンガポール政府投資公社
……。

 正体を明かさず、カネを求めてひたすら動き回る強欲なファンドが、金融シ
ステムの変化に対応できずに立ち往生している時に、政府系ファンドが出てく
るのは非常に示唆的である。

 グローバル化は逆に国単位の権益争いを招き、金融は国家戦略にも成り得る
ことの証明だろう。

 軍事力とドルで世界制覇した米国の危機を、中東を中心とする政府系ファン
ドが、国家戦略として救うということだ。

 その政府系ファンドに、日本も名乗りを上げようとする動きがある。

 昨年12月5日、自民党有志が、「資産効果で国民を豊かにする議員連盟」
を立ち上げた。会長は山本有二前金融相。

 同日の設立総会で議員連盟は、中東、ロシア、中国などで石油の輸出代金や
外貨準備などの国有財産を原資に、ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)
という政府系ファンドが活発化している状況を鑑みて、2008年中に国営フ
ァンドの設立を求める方針を固めた。

 当初の運用資産は1000億円、年間運用収益40億円以上を目標とすると
いうことだが、08年に入って米シティグループの危機的決算で株価が暴落す
ると、早速、「市場緊急対策」をまとめて首相官邸に提出、対策の軸を政府系
ファンドの創設にもってくるなど、本気度は高い。

 だが、民間にできることは民間に委ねることを軸とした構造改革を進めてい
る最中に、政府系ファンドを設立しようとする意味がわからない。

 構造改革の逆行を証明するのなら、さらなる日本売りを招くことは必至だし、
そもそも政府に運用などできるのか。

 年金や保険がいい例で、さまざまな国策的縛りのなかで運用するとなると、
パフォーマンスは日経平均株価に限りなく近くなり、新たな国有ファンドを立
ち上げる必要がない。

 仮に、収益を向上させ、将来的に中国のように20兆円、30兆円の規模に
するというのなら、その重いファンドの運用責任を誰が担うのかということに
なる。

 運用方針を誰が決め、収益方針をどこに置き、損失が出た時の責任を誰が取
るのか。そうしたファンドとしての形を決める過程で、ファンドは必ず歪む。

 責任は取りたくないが、「口利き」を含めて、利権には関与したいという政
治家ばかりだからで、結局、いろんな意見を取り入れて、中途半端にスタート
して、ハイリスクローリターンの意味のないファンドになるだろう。

 そこは、別項にある新東京銀行と同じである。(本誌次号で掲載予定=本誌
註)

 政府系ファンドが威力を発揮するのは、国家戦略を持ちうる国か、シビアに
利益追求できる国かのどちらかである。

 王族支配の中東は、ドルと連動することで保ってきた安定を、ドルの信認が
薄れた今、どう確保するかに悩んでいる。

 いずれ本格的にドル離れするのだろうが、その際、米金融機関の大株主でい
ることは、米政府への牽制にもなるだろう。

 政府系ファンドの中国投資有限公司(CIC)を立ち上げたばかりの中国の
意図はまだ読めないが、ここ10年の本格的な資本主義の導入で、「資本の力」
はわかっているはずだ。

 最初の出資は世界最大ファンドのブラック・ストーン。ファンドを通じた金
融を含む、米国中枢への侵食を恐れる米政府関係者は少なくないという。それ
はロシアも同じである。

 一方、シビアな運営と言えばシンガポールである。運用は、シンガポール政
府投資公社とテマセク・ホールディングスが行い、四半世紀の投資実績が平均
りまわり9%強である。

 それは、ダメな運用をすれば、総裁から担当までのクビを飛ばす厳しさに支
えられている。

 日本が政府系ファンドを設立すれば、おそらく代表には天下り官僚が就き、
職員は公務員感覚を持つ。

 国家戦略がなく厳しさもない日本に、政府系ファンドは必要ない。それだけ
はハッキリしている。

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