■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2008/5/7 No.431 週刊メールジャーナル 読者数11412(前回) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ●行員が食われていた三井住友銀行を舞台にしたコシ・トラスト事件の行方 (会員制経済情報誌『現代産業情報』5月1日号より転載) 厳しい審査で知られる三井住友銀行が、偽造された経理書類をもとに、コシ・ トラストという不動産会社の紹介で60数社に約170億円を融資して100 億円以上が回収不能となり、融資先の中には営業実態のないペーパーカンパニ ーが20社近くもあったという摩訶不思議な事件は、中堅行員が家賃を負担し てもらうなど完全に取り込まれていたことが判明、謎が少しは解けた。 弊誌は前号で、「新聞記事を何度繰り返し読んでも、よく理解できない事件」 と書いた。(本誌4月9日号に転載) それは多くの人が共通で思ったことだ。偽造された書類やペーパーカンパニー を見破れない銀行審査とは何なのか――。 だが、コシ・トラストを担当する三井住友銀行高円寺支店の元行員(43)が、 コシ・トラストの中林明久社長(39)と年齢が近く、大学の同窓でもあった ことから個人的にも親しくなり、総額410万円の家賃援助をしてもらったう えに、休日には会社所有のクルーザーで釣りに出かけるほどの仲だったという から理解できる。 中林社長を知る不動産業者によれば、氏は「商売はヘタだったけど、人を篭絡 するのはうまかった」という。 「地上げや再開発を通じ、シビアな不動産取引をこなすというより、戸建ての 仲介販売を着実にやるタイプだった。野村證券の出身ということで、不動産証 券化など“今風”なビジネスを打ち立てたという報道もあったが、そんな面倒 なことはしないタイプ。三井住友を相手に、インチキな商売が成功したら、す ぐに商売を遊びにしたところに、彼の本質がある」(同) 東京・青山の著名なビルに、「創作和食」の店を出店、「おもちゃ博士」とし て知られる北原正久氏とともに、アニメ主人公などをミニチュアにしたフィギ ュアを集め、「フィギュアバー」をオープンさせた。 また「K1戦士」でキックボクサーの天田ヒロミ氏を後援、天田氏はコシ・ト ラストの所属選手となった。 成功すれば、自分の店を持ち、趣味をビジネス化、芸能人やスポーツ選手の 「タニマチ」となるのは、出来のよくないベンチャー経営者に典型的な気質だ が、中林氏にも同じようなところがあった。 ただ、グッドウィル・グループの折口雅博氏がそうであったように、この手の かりそめの成功者には、反社会的勢力が寄り添ってくる。 中林氏にもそうしたアプローチがあり、氏はむしろ自ら飛び込むように付き合 った“節”がある。 「不動産の仲介を巡ってもめた時、山口組の最高幹部と知り合い、助けてもら ったそうです。その組長と若頭の名を出して、『お世話になっている』という のを聞いたことがあります。実際、中林が利用した企業の中には、一目でその “筋”とわかるような人が出入りしている会社があった」(中林氏の知人) 彼らと付き合うリスクを考えていなかったとしたら、バカというしかないし、 知っていて「防御」のつもりだったとしたら、ますますバカというしかない。 どちらにせよ05年9月から07年3月まで、暴力団関係者が取締役に就任し ており、お目付け役として送り込まれていたに違いない。 暴力団が関与する不動産会社へのメガバンクによる不正融資――事件化しない わけはなく、警視庁の内偵は始まっているが、ここで問題となってくるのは、 三井住友銀行が純粋な被害者とはいえない点だ。 もちろん関与がきっかけをつくった行員だけなら個人犯罪だが、後任の行員も 「過剰といっていい接待を中林から受けていた」(前出の知人)というし、上 司の異動先の支店が融資先窓口となった不可解さもある。 また、優越的地位を利用して三井住友銀行が、取引先に変動金利を固定金利に スワップするデリバティブを販売していた問題は、金融庁が06年4月、一部 業務停止命令を出したことで違法性が証明されたが、60数社の中にはデリバ ティブを強引に売りつけられたところもあるという。 その“見返り”がズサンな融資だったとすれば、「貸し借り」の中での融資と いうことになり、銀行側は少なくとも道義的責任を取らなくてはならない。 いずれにせよ、誰もが首を傾げる事件だったこの詐欺融資は、いろいろな企業 と人物の思惑と立場が絡み合う、一筋縄ではいかない事件となることは間違い ない。 ◆会員制(法人・個人)経済情報誌『現代産業情報』購読のご希望は、本誌が お取次します。お申し出あれば、無料で見本誌をお送りいたします。 ◆◆あとがき◆◆ CSR(会社の社会的責任)が頻りに言われだして久しい。 そしてここ数年、業種を問わず、会社の不祥事や重大事故が頻発するのに比例 して、CSRを対外広報(PR:パブリックリレーション)の“看板”に掲げ る会社が増えてきたように思える。 事実、「CSR報告書」を毎年制作公表する会社が増えてきてもいるのだが、 それを読むと、「CSRとは何か」についての“誤解”もまた増えてきている ように見える。 本来、CSRは、会社の経営目的の実践を通じて、具現化していくべき事柄で あろう。 例えば銀行業では、本来の経営目的である金融業務を通じて、社会的な存在価 値を社会に認めてもらうことが、本来のCSRである。 それだけに、今回の三井住友銀行のような事案は、まさにCSRに反する事例 といえるであろう。 銀行に限らず、CSRを“声高に”PRしながら、不祥事を起こす会社が、近 ごろあまりにも多い。 CSRをコーポレート・ソーシャル・コントリビューション(CSC:会社の 社会貢献)と混同しているからではないか。 増えてきた「CSR報告書」を読むと、収益の一部を社会に還元する社会貢献 事業を含めてCSRと称している会社がかなり多いことが分かる。 それでは、手段を選ばずに収益を上げている会社でも、CSRを具現している ことになってしまう。 あるいはまた、コーポレート・レピュテーション(社会的な信望・評価)を獲 得するための手段として、CSRの“旗”を掲げているようにみえる会社もあ る。 CSRのコーポレート・ブランディング(CSRのブランド化)を急ぐあまり、 「こんなことも、あんなことも実践している」と、ことさらにCSCを強調す る会社もあるようだ。 しかしそれでは、CSRの本来の意味が軽くなってしまう。 前述のように、本来のCSRは、経営目的の具現化である以上、改めてPRを する必要はないのである。 真剣にPRしなければならないことは、組織と人が、いかにCSRの具現化に 努力を傾注しているか、ということである。 本業に直接かかわりのない分野での、社会的なコントリビューションは、付加 的にPRすれば事足りるはずだ。 例えば、特定地域への収益還元や慈善活動、芸術やスポーツ、教育など文化活 動への寄付、いわゆるメセナ活動などを広告宣伝に使うのは、逆効果さえ招き かねない。 なお、念のために補足をすれば、事業に関わる環境保全対策、サステナビリテ ィは、もはや、CSRの基本的事項に属することと認識する必要がある。 なぜなら、京都議定書の数値目標への取り組みが今年から本番に入るからであ り、さらには、今年の洞爺湖サミットに対して、日本の産業界は主体的に支援 するべきだからである。 したがって、このような経営環境のもとで、CSRを標榜する会社は、まずは、 会社の経営目的の実現に向かって、経営者も従業員も、真剣に真摯に努力して いる姿を具体的に説明する“レポート”を制作公表して欲しいものだ。 しかしながら、そのためには大前提が必要だ。 会社の経営目的は、社会的な存在価値を社会に認めてもらえるものでなければ ならない。 また、その目的を達成するために、経営方針や目標、経営者の考え方や姿勢を、 社内の隅々にまで、衆知徹底しなければならない。 さらに、その経営目的は、収益の都合によって“切り売り”するような、目先 の短期的な事業であってはならない。 会社経営のゴーイングコンサーン(継続原則)を前提にした、経営目的でなけ れば、CSRの対象にはなりえない。当然であろう。 そして、すべての組織と構成員の、意識と行動をガバナンス(経営統治)する ための手段、経営管理手法が、実は、社内コミュニケーションのマネジメント なのである。 この、社内コミュニケーションについても、わが国では、長い間、広く誤解が 流布されていたと言わざるをえない。 社内コミュニケーションのマネジメントとは、会社を動かすための、ありとあ らゆる意思疎通の仕組みを通じて、経営トップの意思を組織の末端にまで伝え、 その意思を実現するガバナンスのことである。 会社経営は、良くも悪くも社内コミュニケーションによって動いているのであ り、経営の結果は、社内コミュニケーションの反映といってよい。 ところが、この社内コミュニケーションを、社内広報という業務分掌に矮小化 してしまう傾向が、これまでのトップマネジメントにはあった。 端的にいえば、会社の不祥事や予見可能な事故(リスクコントロールの対象) の頻発は、100%社内コミュニケーションの結果といってよい。 経営陣はもとより、不心得な社員、個人的な思惑や誘惑によって経営のミッシ ョンを忘れてしまうような従業員、などが出てくる最大の原因は、社内コミュ ニケーションのマネジメントにあると断言してよい。 その意味で、三井住友銀行は、社内コミュニケーションの現状をコミュニケー ション・オーディット(社内広報監査)をしてみる必要がある。 わが国の経済産業行政は、グローバル化や市場原理の普遍化を受けて、産業界 への規制緩和と事後チェック方式に大きく舵を切った。 これにより、経営の自由度は増したが、反面、監査も含めて経営責任は格段に 重くなった。 改正会社法や金融商品取引法(日本版SOX法)の施行によって、内部統制シ ステムの構築が義務づけられたことは、このことと表裏一体の関係にある。 今年4月からは、内部統制の本番年度である。 4月以降に決算を迎える会社は、有価証券報告書の内容として、内部統制の評 価を記載することが義務づけられた。 社内コミュニケーションのマネジメントが機能していなければ、コンプライア ンスはもとより、内部統制システムが十分に機能することはありえない。 当然のことながら、CSRを標榜する会社にまず求められることは、社内コミ ュニケーション・マネジメントの抜本的な見直しと、コミュニケーション・オ ーディットのシステム化である。 ◆◆お知らせ◆◆ ■■第11回コミサポセミナー 2008/5/16 金曜日 開催■■ 今回のテーマは『CSR経営と社内コミュニケーション・マネジメント』です。 セミナーの講師は、本誌編集発行人・川崎明が担当します。 なお、「社内誌の母」福西七重さん(株式会社ナナ・コーポレート・コミュニ ケーション代表取締役)による『会社を元気にする社内誌』セミナーが同時に 開催されます。 CSRの具現化を目指す会社の経営者・社内コミュニケーションマネジャー、 社内広報担当者、社内報発行者、社内誌編集担当者は、CSR時代の社内コミ ュニケーションを実践するために、ぜひとも聴講にお出掛けください。 詳しくはこちらへ ⇒http://www.commu-suppo.net/seminar_pdf/20080516seminar.pdf ◆◆社内報、PR誌、コミュニケーション誌の編集者の皆さんへ!◆◆ 本誌推奨の新刊書「新聞記者のミニ法話」(新風書房刊・1575円・税込) の著者である元産経新聞編集委員・藤井元秀氏のエッセイを、社内報、PR誌、 ミニコミ誌などのコラムで連載しませんか? 「心の時代」と言われて久しいものの、社内・社外の人間関係は荒んでいます。 藤井氏が17年間かけて取材した、全国の名社・宮司、名刹・智識の法話を、 身近なたとえで、わかりやすく解説します。 人生の教訓を踏まえたヒューマン・コミュニケーションに役立ててください。 ライター・藤井元秀氏には、本誌が取り次ぎます。 ■■新刊書のご紹介■■ ◆売り切れ書店続出!発売3週間でたちまち5刷突破! ◆いま話題の「知的生産術」をたった100円で実現! 情報は複雑に管理しても使えない・続かない。本当に情報を活用するには、 すべての情報を1冊のノートにまとめる必要があるのです。 分類・整理は一切不要、時系列で書きとめ、メモや資料は貼り付ける。 無理してハイテクな情報管理をするより、 どこにでも売っている100円ノートで、 ローテクに情報を管理し、効率的・効果的にアウトプットする技術を ご紹介します。 ◆奥野宣之著『情報は1冊のノートにまとめなさい』(Nanaブックス) 詳しくはこちらへ ⇒http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4901491768/ ------------------------------------------------- 株式会社 ナナ・コーポレート・コミュニケーション 取締役 社内広報事業 ナナ総合コミュニケーション研究所 所長 豊田 健一 〒160-0022 東京都新宿区新宿1-26-6 新宿加藤ビルディング5F Tel : 03-5312-7471 Fax : 03-5312-7475 E-mail :toyoda@nana-cc.com URL : http://www.nana-cc.com URL : http://www.commu-suppo.net ------------------------------------------------ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 週刊メールジャーナル 2008年5月7日 第431号(水曜日発行) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社 〒130-0026 東京都墨田区両国2-1-4 第2西村ビル201 ホームhttp://www.mail-journal.com/ メールadmin@mail-journal.com 転載・再配布等には事前にメールジャーナル社に許可をお取り下さい。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |