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  2008/6/11  No.437   週刊メールジャーナル  読者数11456(前回)
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●野村證券インサイダー事件で正鵠を射たマーケットの「憶測」
(会員制経済情報誌『現代産業情報』6月1日号より転載)

いかに社会が高度化した21世紀であれ、その主人公が生身の人間である限り、
人の目や口は塞げない。

物理的な因果関係とは無関係に、人の思惑や憶測は飛び交い、時にそれが物事
の因果関係を支配してしまう場合すらある。

野村證券社員らによるインサイダー取引事件をめぐっては、それをまざまざと
見せ付けられた。

野村證券でM&Aなどを担当する企業情報部に所属していた、香港現地法人の
中国人社員は、東証2部上場の富士通デバイス(現富士通エレクトロニクス)
が株式交換によって富士通の完全子会社になるとの内部情報を入手、中国人仲
間二人と共謀し、株価上昇が見込まれる同社株などを購入して、4000万円
前後の利益を得た証券取引法違反容疑で、東京地検特捜部に逮捕された。

マーケット倫理浄化の先頭に立つべき、“天下の野村”の社員のインサイダー
取引に、誰もが驚いた。

捜査の端緒を入手し、検察を動かしたのは、証券取引等監視委員会である。

この仕事には相当の評価なされてしかるべきなのだが、なぜかマーケットには
憶測が流れ、監視委に反発する動きが見られるのだ。

関係者が明かす。

「『野村本体が家宅捜索を受けなかったはなぜか』という話です。個人犯罪だ
としても相当に悪質だし、業務上の情報をもとにしたインサイダー取引なのだ
から、情報の流通ルートの解明に捜索が入るのが普通。多くの関係先が捜索を
受けながら、野村本体が捜索を回避できたのは、野村OBの熊野祥三氏が監視
委の委員を務めているからではないか――と囁かれているのです。『監視委は、
委員の出身母体だから捜索をしなかったのか。そういう手心を加えるなど、捜
査機関としては言語道断である』という反発の空気が証券界に広がっているわ
けです」

監視委は、調査官たちを統括する事務局が提案する案件を、委員長と二人の委
員が合議で決済する。

まさに最高幹部である委員は現在、公認会計士の福田真也氏と、野村證券で4
0年近い勤務経験を持ち取締役まで経験した熊野氏。

「証券業界での経験を買われた」(関係者)という熊野氏は、2006年6月
に委員長補佐官に抜擢され、昨年7月に委員に昇格している。

「監視委が熊野氏に配慮し、野村本体への捜索を控えたのではないか」という
マーケットの疑念は、熊野氏が監視委委員就任後も、委員室で野村幹部と頻繁
に会っていた事実を元に発生している。

だが現実問題として、マーケットが疑うような「監視委と野村の癒着」は考え
にくい。

検察出身である佐渡賢一委員長の性格を反映し、熊野氏に“野村贔屓”があっ
たとしても、それがまかり通るような緩さは、現在の監視委にはない。

検察担当の社会部記者は、「監視委は野村への捜索令状も用意していました。
しかし、野村が必要資料の任意提出に応じたため、令状を行使する必要がなく
なったのです」と、野村への捜索が行なわれなかった理由を明かす。

マーケットの疑念は全くの憶測に過ぎない。

とはいえ、監視委にとって、この憶測が意味するものは軽くない。マーケット
の憶測の根には、摘発対象とすべき業界から最高幹部の委員を招聘している
“矛盾人事”がある。

監視委や政府は、その人事・人選の正当性を強調するが、いくら理屈をならべ
たところで、その本質的な矛盾を関係者の目は見逃さない。

野村事件は、事件の摘発よりも、それを見守る関係者の憶測の方が正鵠を射た
好例と解釈すべきかもしれない。

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 ナナ総合コミュニケーション研究所  所長
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 週刊メールジャーナル 2008年6月11日 第437号(水曜日発行)
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