■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2008/10/29 No.456 週刊メールジャーナル 読者数11560(前回) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ●国家の非常時に金融パニックを助長した金融庁の大罪 (会員制経済情報誌『現代産業情報』10月15日号より転載) 国家は強い。信用不安には、紙幣の増刷でパニックを押さえ込むことができる。 その後にインフレが発生すれば、それはその時のこと。 そんな先進各国の「開き直りの強さ」が、日本時間10月10日までの世界恐 慌を、なんとか止めた。 米国がベア・スターンズ破綻からこれまでに投じ、これから投じることになる ドル、英仏独などヨーロッパ主要国がこれから投じるポンド、ユーロは天文学 的数字で、金融に最も大切な信用システムが崩壊する時の怖さを、まざまざと 見せつけた。 唯一、利下げに応じることもなければ、銀行への資本注入に迫られることもな かったのが、日本である。 それだけバブルの傷跡は深く、「リスクを取らず、なにもしない金融」であっ たことが奏功した。 では、なぜ日本の株式市場が欧米各国と同じ恐慌に陥り、しかも“本家”の米 国以上に平均株価は落ち込んだのか。 ヘッジファンドを始めとする「外資の換金売り」や、「安全資産への逃避」な ど理由はいくらでもあるし、実際、経済のグローバル化は、日本だけの独歩高 を認める環境にないが、他の先進国以上に落ち込む理由もない。 考えられるのは、9日の上場REITの初破綻と、大和生命の経営破綻である。 暴落につぐ暴落で市場が悲鳴を上げている時、REITと生保が破綻したので は、日本も他国と同じか、それ以上の不安を抱えていると見られても仕方がな い。 しかし、何度強調してもいいことだが、日本の金融機関の基盤はしっかりとし ていたし、事業法人も「失われた10年」の間の設備や雇用などの「過剰の調 整」で、足腰は強くなっていた。 したがって、REITと生保の破綻は個別の事情であり、そうであるなら金融 庁は、「国家の非常時」にこれを救済、少なくとも金融パニック時の破綻は避 けるべきではなかったか。 ニューシティレジデンス投資法人は、首都圏を中心に約100棟のマンション を所有、業績悪化というより、一部金融機関からの借り換えができなかったこ とによる、典型的な資金繰り倒産である。 また、大和生命も、ハイリスクハイリターンの金融商品で利益を確保していた がゆえの倒産だった。 共通するのは、破綻の調整は可能だったということである。 なにも上場REIT初の破綻と生保破綻を、最も悪いタイミングで認める必要 はなかった。 これは、旧大蔵省時代に悪評が高かった「裁量行政」とは別次元の問題であり、 「国家の観点」を持ち得ないのは、金融庁官僚の自覚のなさというしかない。 恐慌に陥った金融システムを守ろうと、米国政府は、バランスシートを傷めつ ける時価会計を否定、カラ売りを規制、「ご都合主義批判」など歯牙にもかけ ず奔走した。 その一貫した姿勢は、今回の恐慌の大きさを表しているわけで、それを横目に 監督官庁が、金融機関を潰れるに任せている日本は、明らかにおかしい。 弊誌がNo.606(本誌9月3日号にて転載)で指摘したように、金融庁は 不動産の金融化商品とともに、REITを含む不動産ファンドを傘下に収める ために、金融商品取引法の施行(昨年9月)まで、経営体質やコンプライアン スに問題のあるREITや私募ファンドをあえて放置、「徐々に飼い慣らして いく作戦」を取った。 管理監督で屈服させる作戦。強権発動はしない。その無策が、金融機関の不動 産融資からの総撤退を、認める結果となった。 ニューシティレジデンス投資法人の“死”は、その延長線上にあった。 大和生命についてもそうである。金融機関を監督権限によって屈服させる方針 の金融庁は、今年9月、5年ぶりに立ち入り検査を実施、「支払い能力指標が 基準を下回る」と通知して、大和生命を追い込んだ。 放置して追い込み、最後に引導を渡すのが許されるのは、平時であって、「世 界の非常時」に役所の論理だけを貫いた金融庁の責任は、大暴落助長、日本の 独自性と力強さを世界に見せつけるチャンスを失ったという意味で二重に重い。 「官」の凋落はそれだけ著しいが、今回の恐慌を教訓に、「国家の責任」を再 度、官僚のあり方を含めて論議すべきだろう。 ◆会員制(法人・個人)経済情報誌『現代産業情報』購読のご希望は、本誌が お取次ぎします。お申し出あれば、無料で見本誌をお送りいたします。 【あとがき】 「日本の金融機関の体力は強い」といって、日本のメガバンクが、当初、米欧 北欧金融機関の深刻な信用不安を静観し、米英の大手証券や銀行に資本参加す るなど、対岸の火事視することを許したのは金融庁だった。 だが、27日の週明けからの日本市場は、米欧亜の市場以上に深刻なパニック 状態を示している。 なぜか。 日本の経済と株式市場が、実体経済も含めて外需に影響される構造だからであ る。市場では、ヘッジファンド、外人投資家が、一斉に資金回収に動けば、コ ントロールできないほど下落することは目に見えていた。 これに、日本の個人投資家や仕手筋が「信用」の追証破綻に見舞われているた め、整理手仕舞いなどによる売りが、さらに下落を加速している。 素人筋、なかでもネットトレーダーたちの狼狽売りは目も当てられない状況だ。 当初、マスメディアは、「会社価値を下回る株価は考えられない」「いずれ反 騰」などという評論家の妄言を流し、ネットトレードの新規口座開設申し込み が増えている、などと楽観的な報道をしていた。 このことがあってか、当初、日本の市場は、“戸惑い”をそのまま反映したよ うな乱高下を繰り返したが、やがて評論は「先が見えない」に変わってきた。 米欧の市場では、本記のように、政府のなりふり構わない介入決断がアナウン スされたが、日本政府では「総合的な対策の検討を“指示”」に止まったまま だ。 これが「底なし」の原因といえる。 要するに、先のバブル崩壊で学習した日本の経済と金融のシステムは、直ちに 米欧の影響は受けないだろうという判断が、「楽観的口先コメント」を許した のであろうが、グローバルな金融システムの影響を軽視したのは間違いだ。 日本のグローバルな立場をどう考えるかは政府の自由だが、いまは、「財政赤 字」を理由に、四の五の言うべきときではないだろう。 ■■コンプライアンスの実効を上げる社内コミュニケーション■■ (「ナナ総合コミュニケーション研究所」のポータルサイト「Commu−S uppo.net」(コミ・サポ・ネット)のコラム「社内広報を考える」か ら転載。このコラムは毎月更新されます) ⇒http://www.commu-suppo.net 第3回「なぜ コンプライアンスなのか」その1 「CSR経営」の本質は、「社会に役立つ商品を提供し、利益をあげ続けるこ とによって、社会に存在し続けることにある」と説明してきた。 つまり、会社経営は、つねにCSR経営を目指すべきであるということである。 だが、経営環境は、つねにCSR経営を許すとは限らない。 したがって、利益をあげることが困難な状況になったら、継続が困難になるよ うな社会貢献事業、慈善事業などは、CSRの範疇に入れるべきではないとい うことでもある。 むろん、コストを掛けず、従業員や労組が主体的に取り組むボランタリー社会 事業などは、大いに奨励されるべきだが、それらをもって、ことさらCSRの 実践経営というのも、さびしい経営観といわざるをえない。 それよりも、創業時の事業目的なり会社設立時の経営理念を愚直に実現しよう とする経営こそ、CSR経営と呼ぶに相応しい。 もちろん、経営環境の変化(外圧)によって、リストラクチュアリング(事業 の再構築)を迫られることもある。 ただし、その際には、経営ミッション(事業理念)をあわせて再構築しなけれ ばならない。さもないと、利益の追求、会社の生き残りにのみ汲々とする経営 に陥り、CSRの実現は不可能になるからだ。 この前提に立って、多くの会社がCSRを標榜し、その実践を競うようになる ことは、市民生活の向上や社会の高度化にプラスになることであり歓迎できる。 しかし、市場原理に立脚する自由競争社会では、ステークホルダーの要求圧力 によっては、可能な限りの利益追求に、経営の軸足を置かなければならなくな ることが、しばしばである。 いま、世界中の金融システムがメルトダウンの危機を迎えている。 これまで、CSR経営を論ずるとき、主にドメスティックな経営環境を視野に 入れておけばよかったのだが、グローバル経済が、日本の会社経営に、これほ ど大きな影響をおよぼすのであれば、もはや独りよがりのCSR経営は成り立 たなくなっているのかもしれない。 実際、いま多くの邦人会社では、収益予測が不透明になり、株価の下落が強ま っている。 そのため、利益還元を前提とするようなCSRの表看板などは、もはや掲げて おれなくなっているのではあるまいか。 いまのところ、本稿の論旨はたんなる予測に過ぎないが、おそらく数週間後に は、金融の信用収縮による実体経済への影響が加速し、途上国も含めたグロー バル経済は、新たな深刻な状況に直面していることと思われる。 その時、はたしてどれだけの会社がCSRの具現化に向かって真摯な経営を続 けていることができるのだろうか、心もとない。 したがって、本稿を書き起こした趣旨からすれば、かなり“脱線”にはなるの だが、グローバルな経営環境からも、わが国会社経営のCSRのありかたを考 えてみなければならなくなった。 いまの金融システム危機のきっかけは、米国での新古典派経済学への過信によ るサブプライムローンの過剰な与信と、これを証券化した金融商品のグローバ ルな販売にある。 本来貸し付け対象にならないような所得層の人たちに、住宅資金を貸し込むこ とで、経済成長が持続することをアクチュアリアルな(数理統計上の)前提に したのだが、結局、住宅バブル経済は崩壊した。 しかしこのプロセスにおいて、米国証券会社の「投資銀行」は、融資リスクを 分散する金融工学を利用した証券化商品の販売によって、莫大な利益をあげる ことができた。 このような投機的な金融業務は、まさに、利益の追求に軸足を置いた、金融機 関経営の所業といってよい。 だが、この投資銀行業務に対して、だれが社会的な責任を問うことができるの であろうか。 余談になるが、世界のメガバンクで、ことさらにCSRを掲げている会社はほ とんどない。なぜなら、金融業務自体に社会的な責任があるからだ。 金融システムの危機が実体経済に及ぼす影響がいかに大きいかということが、 またもや歴史的に証明されることになった。 ただし、1930年代の大恐慌と異なる要素も多分にある。先進各国の政府は、 公的資金を金融機関に注入することをいち早く決定し、今後は、途上国も含め た、金融経済のグローバルな協調体制も視野に入れた危機対応の作業も可能に なりつつある。 このとき、米国金融機関で発生した金融暴走に対して、グローバルな批判が集 まるかもしれないが、これら金融機関の社会的な責任は、新しいグローバルな 金融システム規制を構築する中で、明らかにされることになるだろう。(以下 次号) 【お知らせ】 ■□■「第4回全国社内誌実態調査」アンケートに ご協力ください! 社内誌の発行状況や編集組織の体制、編集担当者の意識や周辺の状況、新しい 動きなどを調査、分析した『 社内誌白書 』を、隔年で発行しています。 ■□■『 社内誌白書2009 』を進呈します! お答えいただきましたみなさまには、調査結果を分析し、2009年4月に発行を 予定しています『 社内誌白書2009 』を進呈いたします。 お忙しい中ですが、11月10日までに回答フォームよりご回答ください。 アンケートは ⇒https://www.commu-suppo.net/hakusyo/ ------------------------------------------------- 株式会社 ナナ・コーポレート・コミュニケーション 取締役 社内広報事業 ナナ総合コミュニケーション研究所 所長 豊田 健一 〒160-0022 東京都新宿区新宿1-26-6 新宿加藤ビルディング5F Tel : 03-5312-7471 Fax : 03-5312-7475 E-mail :toyoda@nana-cc.com URL : http://www.nana-cc.com URL : http://www.commu-suppo.net ------------------------------------------------ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 週刊メールジャーナル 2008年10月29日 第456号(水曜日発行) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社 〒130-0026 東京都墨田区両国2-1-4 第2西村ビル201 ホームhttp://www.mail-journal.com/ メールadmin@mail-journal.com 転載・再配布等には事前にメールジャーナル社に許可をお取り下さい。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |