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2008/11/12 No.458 週刊メールジャーナル 読者数11568(前回)
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【まえがき】
今回は、■ Japan On the Globe(571)■ 国際派日本人養成講座 ■より転載
します。
本誌は、■ナナ総合コミュニケーション研究所■Commu-Suppo.Net■にアップ
したコラム「社内応報を考える」(本誌に転載)をつうじて「CSR時代の会社
経営」について問題提起を続けています。
ときあたかもISO理事会は、「組織の社会的責任」に関する国際規格ISO
26000の、2010年9月発行を目指して原案審議を重ねています。
今回転載するメルマガ事例は、わが国で、このISO12000認証をとるた
めには、いかなる経営であらねばならないかが、示されていると考えます。
Common Sense: 日本を支える「いい会社」
(社員とその家族の幸福追求を自らの使命とする
「いい会社」があちこちで日本を支えている)
国際派日本人養成講座⇒http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/
■1.人件費は社員の幸福を実現するための生活費■
「いい会社をつくりましょう」という社是を掲げている会社がある。子どもに
も分かるシンプルな表現だが、この「いい会社」とは何か。こんな文章が続く。
いい会社とは、単に経営上の数字ではなく、会社を取り 巻くすべての人々
が「いい会社だね」と言ってくださる会社のこと。
「良い会社」というと、高い技術で高収益を誇る優等生企業を想像するが、
「いい会社」には「あの人はいい人だね」と言うのと同様の共感が籠もって
いる。
そして、この「すべての人々」の筆頭は社員である。社員自身が会社に所
属することの幸せをかみしめられるような会社のこと。
この会社は、寒天作りで国内シェア80パーセントを持つ。48年間増収増益
を続けており、売上高利益率10パーセント以上という「優等生企業」である。
しかし、そんな数字よりも、この会社の会長は、48年間、リストラもせずに、
社員の給料とボーナスを上げ続けてきたことを誇りとしている。
現在のような不況下では、多くの企業が派遣社員、パート、アルバイトの首を
切ったり、それでも行き詰まると、正社員でも希望退職を募ったり、賃金カッ
トをする。
そのような経営は間違っています。小社はこれまでも、またこれからも社
員のリストラはやりません。なぜなら小社にとって、人件費はコストでは
ないからです。人件費は目的である社員の幸福を実現するための生活費だ
からです。[1,p84]
こう言うのは、長野県伊那市にある伊那食品工業の会長・塚越寛さんである。
■2.出入り自由の「公園」工場■
その本社がたたずむ3万坪の敷地内には赤松などの樹々がたち並び、四季折々
の花が咲き乱れ、公園さながらである。しかも、塀も門も守衛所もないので、
どこからどこまでが敷地か分からず、まさに公園のように、誰でも自由に出入
りできる。
幼稚園の先生が子どもたちを引率して、敷地内の小高い丘でお弁当を食べてい
る。花が咲き乱れた処には、ベンチがあり、おじいさんとおばあさんが座って
いる。「日向ぼっこに来た」とのことで、「ここに来ると心が和む」と語る。
フルートを吹いている人もいる。
会社の敷地内を通って、子どもたちが通学する。その途中に、敷地内を縦断す
る車道があり、最近は車の交通量が多くなって、子どもたちには少し危険とな
った。会社は役所に歩道橋を作ってくれるよう要望したが、なかなか実現しな
いので、「ぜひ歩道橋を寄付させてください」と、自社で設けた。
この広い「公園」で、朝早くから竹箒で落ち葉を集めたり、また昼休みや休日
には、草花の剪定をしているひとたちがいる。会社の社員たちが自発的にやっ
ているのである。
地域住民から見ても、「いい会社」である。
■3.「いい会社」でありつづけるために■
こうした「いい会社」であり続けるためには、企業として成長し、利益を上げ
なければならない。そのために、塚越会長は3つの経営方針を立てている。
第一に「無理な成長は追わない」。一時、寒天ダイエットがブームとなった。
当然、トップメーカーである伊那食品工業には全国各地から注文が殺到した。
しかし、会長は「すべて断ってください。これは一過性の流行です。必ず廃
(すた)れ、そのあとには必ずいやなことが起きる。その時に社員を犠牲にし
たくない」と明言した。ブームに乗って、急激な設備投資や人員増強をしたら、
ブーム後に利益が落ち込んだり、人員削減を迫られたであろう。同社の成長と
は、年輪が刻まれるようにゆっくりしたものである。
第二に「敵を作らない」。競合他社と熾烈な価格競争をしていれば、負けて、
売上減、利益減に追い込まれることもある。今まで世の中になかったオンリー
ワン商品を創り出せば、敵はいない。同社は「かんてんぱぱ」という商品を開
発している。粉末にした寒天をお湯に溶かし、冷蔵庫で冷やせばゼリーとなる。
フルーツ、抹茶、ババロアなど、数百種類ある。こうした商品を一つ一つ開発
して、世の中に提供しているのである。
「かんてんぱぱ」を見た大手スーパーが、「これはすごい商品なので、ぜひう
ちで売らせてほしい」と日参してきたことがあったが、「無理な成長を追わな
い」という経営方針から、これも断った。
第三に「成長の種まきを怠らない」。世の中にない新商品を生み出していくた
めには、研究開発を続けなければならない。新商品開発は「センミツ」と言わ
れるように、千の種を蒔いて、三つ芽が出ればよい、という世界である。目先
の利益を追わず、常に先を見て、成長の種まきを怠らないことが、オンリーワ
ン商品を生む秘訣である。
「成長するのも利益を上げるのも、会社を継続させるためです。なぜ継続させ
るのかといえば、社員を幸せにするためです」と塚越会長は言う。
■4.「せめてあの子たちに働く体験だけでもさせてくれませんか?」■
約50名の従業員を抱える小企業で、知的障害者がその7割を占める会社があ
る。ダストレスチョーク(粉の飛ばないチョーク)で3割のシェアを持つ神奈
川県川崎市の「日本理化学工業」である。
この会社が知的障害者を雇い始めたのは、すでに50年近く前の昭和34
(1959)年である。近くの養護学校の先生が訪ねてきて、近く卒業予定の二人を
採用して欲しい、と依頼されたのが、事の始まりだった。
専務をしていた大山泰弘さん(現社長)は悩みに悩んだ。雇うのであれば、一
生幸せにしてやらねばならないが、当時十数人の会社では、まったく自信がな
かった。「うちでは無理です」と断ったのだが、その先生は2度、3度とやっ
て来て、頼み込む。3回目には、大山さんをこれ以上悩ませるのに堪えられな
くなって、こんな申し出をした。
大山さん、もう採用してくれとはお願いしません。でも、就職が無理なら、
せめてあの子たちに働く体験だけでもさせてくれませんか? そうでない
とこの子たちは、働く喜び、働く幸せを知らないまま施設で死ぬまで暮ら
すことになってしまいます。私たち健常者よりは、平均的にはるかに寿命
が短いんです。
そこまで言って頭を下げる先生の姿に、大山さんは心を打たれて「一週間だけ」
という約束で、二人の少女に就業体験をさせてあげることにした。
■5.「あの子たちを正規の社員として採用してください」■
就業体験の話が決まると、子どもたちだけでなく、先生方や親も大喜びした。
朝は8時始まりなのに、7時には会社に来た。それもお父さん、お母さん、さ
らには心配のあまり先生までが付き添ってきた。夕方3時頃になると、親御さ
んたちが「何か迷惑をかけていないか」と、遠くから見守っていた。
約束の一週間の就業体験が終わる前日、十数人の社員全員が「お話があります」
と大山さんを取り囲んだ。
あの子たち、明日で就業体験が終わってしまいます。どうか、大山さん、
来年の4月1日から、あの子たちを正規の社員として採用してください。
もし、あの子たちにできないことがあるなら、私たちみんなでカバーしま
す。どうか採用してあげてください。
これが、社員みなの総意だという。それほどに二人の少女の一生懸命の働きぶ
りは、みなの心を動かしたのである。簡単なラベル貼りの仕事だったが、二人
は仕事に没頭して、「もう、お昼休みだよ」「もう今日は終わりだよ」と背中
を叩かれるまで、気がつかないほどだった。ほんとうに幸せそうな顔をして、
仕事に打ち込んでいたのである。
■6.働くことによって得られる幸福■
社員みなの気持ちに応えて、大山さんは二人の少女を正社員として採用した。
それ以来、障害者を少しずつ採用していったが、大山さんには一つだけ分から
ないことがあった。
それは彼らがミスをした時などに、「施設に帰すよ」と言うと、泣きながらい
やがる事だった。どう考えても、会社で毎日働くより、施設でのんびり暮らし
ていた方が幸せなのではないか。
ある時、法事の席で一緒になった禅寺のお坊さんに、この点を尋ねてみると、
こんな答えが返ってきた。
そんなことは当たり前でしょう。幸福とは、(1)人に愛されること、(2)人
に賞められること、(3)人の役に立つこと、(4)人に必要とされること、で
す。そのうちの(2)人に賞められること、(3)人の役に立つこと、(4)人に
必要とされること、は施設では得られないでしょう。この三つの幸福は、
働くことによって得られるのです。
こう聞いて、大山さんは、目から鱗(うろこ)が落ちるような気がした。「人
間にとって『生きる』とは、必要とされて働き、それによって自分で稼いで自
立することなんだ」と気づいた。
それなら、そういう場を提供することこそ、会社にできることなのではないか。
企業の存在価値であり社会的使命なのではないか。
これ以来、50年間、日本理化学工業は積極的に障害者を雇用し続けてきた。
■7.65歳のおばあさん■
障害者を受け入れたものの、はじめの頃は、どうやって仕事を教えたらいいの
か、苦労の連続だった。普通は設備に人間の仕事を合わせるのだが、大山さん
は、障害者たちが仕事ができるように、一人ひとりの状態に合わせて機械を変
え、道具を変えていった。
たとえば、数字が読めないために、量りが使えない子には、色分けした様々な
重りを作って、青い容器の材料は青い重りで量って混ぜて、と教える。こうい
う工夫をして、一人ひとりの能力を最大限に発揮させていけば、健常者に劣ら
ない仕事ができることが分かった。
[1]の著者・坂本光司氏が、この会社を訪ねた時、おばあさんがコーヒーを持っ
てきてくれた。「よくいらっしゃいました。どうぞコーヒーをお飲みください」
と小さな声で言うと、お盆を持って帰っていった。
「彼女です。彼女がいつかお話しした最初の社員なんです」と、大山社長がぽ
つりと言った。15、6歳のときに採用されて、今は65歳ほどにもなって、
腰が曲がり、白髪になっている。60歳で定年を迎えたが、その後も嘱託社員
として雇われているのである。その50年という年月の重さを思うと、坂本氏
は涙をこらえることができなかった。
その後、坂本氏が工場を視察したら、この女性は一生懸命、チョークを作って
いた。
■8.「人の役にたつ」幸福■
工場では、健常者の社員たちも実に明るい顔つきをしている。なぜか、と尋ね
た坂本氏に、大山社長はこう答えた。
自分も社会に貢献しているんだという、思いがあるからだと思います。一介の
中小企業ではありますが、そこに勤めて、自分も弱者の役に立っている、社会
の役に立っている、という自負が、社員のモチベーションを高めているのでは
ないでしょうか。[1,p62]
ある市役所の市長はじめ幹部役員が同社を視察した後、帰りのバスに乗り込ん
だ途端、市長がこう言った。
役所で使うチョークは全部、この会社から購入できないか。それくらいしか、
私たちは、この会社に貢献することができないから。[1,p58]
「人の役に立つこと」が幸福なら、この会社はこうして顧客にも幸福のお裾分
けをしていることになる。
■9.「社員第一」こそ企業の最大の使命と責任■
坂本光司氏の著書『日本でいちばん大切にしたい会社』[1] には、ほかにもこ
のような心を打つ「いい会社」が、いくつも登場する。それらに共通する点が
いくつかある。
その一つは、これらの会社は、社員とその家族を幸せにすることを、最も大切
な使命であると考えている、という事である。経営の世界では、よく「顧客第
一」というが、それは間違っていると、坂本氏は主張する。
・・・自分が所属する会社に不平と不満・不信を抱いている社員が、どうして
お客様に身体から湧き出るような感動的な接客サービスができるでしょう?
お客様が感動するような製品を創れるでしょう?
ですからいちばん大切なのは、社員の幸せなのです。社員と、それを支える家
族の幸せを追求し実現することが、企業の最大の使命と責任なのです。[1,p21]
社員を幸福にするためには、会社は存続し、利益を上げ続けなければならない。
こう覚悟した経営者は、不景気になっても、安易に人を切ったりできないので、
真剣勝負となる。社員の方も、会社の存続と発展のために、全力を尽くす。そ
こから、並の企業では思いつかないようなアイデアや力が出てくる。
こういう「いい会社」があちこちで、従業員とその家族、顧客や地域を幸せに
して、日本を支えているのである。
(文責:伊勢雅臣)
■リンク■
a. JOG(354) 道徳力と経済力
経済発展の原動力は「正直、信頼、助け合い」の道徳力にある。
⇒http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h16/jog354.html
b. JOG(489) 天命と天職 〜 日本人の仕事観
天命に仕え、天職を持つことが、 「世の中で一番楽しく立派なこと」で ある。
⇒http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h19/jog489.html
■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社』★★★★、
あさ出版、H20
⇒http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860632486/japanontheg01-22%22
【あとがき】
いま、国際的な金融危機が実体経済に大きな影響を及ばしています。この現状
をどうとらえるか、経営マインドが試されています。
この数年、わが国では経営のミッションとして、CSRの実現を掲げる会社が
増えました。しかし、それらの会社の経営実態をみると、CSRの本質を曲解
している経営も多数見られます。
自動車や電機など、輸出関連会社は大きな影響を受けていますが、これらの下
請け会社も受注減に悩んでいます。CSRとは何か、良く考えてみるチャンス
です。
本誌は、10月29日号、10月15日号、9月17日号にわたって、この問
題に関連して「コンプライアンスの実効をあえる社内コミュニケーション」を
掲載しています。
再通読をいただければ幸いです。
【お知らせ】
■□■「第4回全国社内誌実態調査」アンケートに ご協力ください!
社内誌の発行状況や編集組織の体制、編集担当者の意識や周辺の状況、新しい
動きなどを調査、分析した『 社内誌白書 』を、隔年で発行しています。
■□■『 社内誌白書2009 』を進呈します!
お答えいただきましたみなさまには、調査結果を分析し、2009年4月に発行を
予定しています『 社内誌白書2009 』を進呈いたします。
お忙しい中ですが、11月10日までに回答フォームよりご回答ください。
アンケートは ⇒https://www.commu-suppo.net/hakusyo/
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株式会社 ナナ・コーポレート・コミュニケーション
取締役 社内広報事業
ナナ総合コミュニケーション研究所 所長
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週刊メールジャーナル 2008年11月12日 第458号(水曜日発行)
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編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社
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