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  2009/3/11  No.474   週刊メールジャーナル  読者数11283(前回)
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●政治家が発すべき国民と市場への企業救済メッセージ
(会員制経済情報誌『現代産業情報』3月1日号より転載)

今年に入って、「何でもあり!」の企業救済が始まっている。

政府も日本銀行もなりふり構っていられない。それほど実体経済は奈落の底に
落ち込んでおり、財政と金融の両面で民間を支える覚悟を固めている。

これまで累計で、かつてない金融支援が金融機関、大企業、中小企業になされ、
枠組みも拡大した。

中小企業の資金繰り支援のための緊急保証制度の枠を6兆円から20兆円に引
き上げ、セーフティネット貸付を3兆円から10兆円にした。

改正金融機能強化法の公的資金枠は2兆円から12兆円となり、日本政策金融
公庫法に定められた「危機対応資金」として3兆円が用意され、日本政策投資
銀行などを窓口に2兆円がCP(コマーシャルペーパー)の買い取り、1兆円
が資金繰り支援に回された。

「中央銀行が信用リスクの補完に踏み切るのは異例中の異例」と、“言い訳”
をしつつ、日銀の白川方明総裁は、金融政策決定会合でなし崩し的な資金繰り
支援に踏み切っており、まずCPとABCP(資産担保コマーシャルペーパー)
の3兆円買い取りを決め、次に短期社債の1兆円買い取りに踏み切り、4年半
ぶりに銀行保有株買取を再開した。

国家が、全力をあげて金融機関と大企業から中小企業までを支援している。

貸し渋りを起こさないように金融機関には資本注入、大企業にはCPや社債の
買い取りで資金繰りを支援、中小企業は信用保証協会を使ってセーフティーネ
ットを張り巡らしている。

既に日本に市場の論理は働いていない。優勝劣敗の法則は機能せず、業績の悪
い金融機関と企業が、国家に救済されて生息している。

国家管理型資本主義が成立、本来、管理された資本主義など論理矛盾なのだが、
国民経済を壊しかねない大恐慌の前では、超法規的な管理が許されている。

未曾有の危機であることは疑いない。自動車、電機、造船、半導体などすべて
の製造分野での過剰が明らかとなり、しかも環境主義のうねりの中で、車を5
〜6年で乗り換えるような大量消費型社会が否定され、自然との共生や企業の
継続可能性が、模索されるようになった。

米国のオバマ大統領の「グリーンニューディール」には、石化エネルギーから
再生可能エネルギーにシフトすることで、新たな需要を創造しようという遠大
な構想がある。

それが根付くには時間がかかるものの、EUと日本も意識は同じ。

大不況と成長抑止の経済が同時にやってきた印象で、その心理的抑圧が企業と
消費者を冷え込ませている。

だから世界は動いた。世界のGDPの9割を占める20カ国が4月に集まる金
融サミットは、各国が手を携えて世界大不況に備えようという確認の場。

その対策は、財政出動による有効需要の創出と、紙幣増刷による金融システム
の安定である。

世界協調の意味からも、国民経済を堅持するという意味からも、政府、日銀は
企業を潰さず、パニックを抑え、「3月危機」を現出させない覚悟を固めてい
る。

おそらくそれは、日本が生き残る唯一の選択肢として認められている。

優勝劣敗の原則が働き、1社が倒産すれば、ドミノ倒しの危機をすべての業界
が抱えている。

その深刻さは、国家が紙幣の増刷で解消、「反転」の時を待つしかない。

問題なのは、「何でもあり」の大盤振る舞いを政府・日銀が続けているのに、
それを明確にメッセージとして伝える政治家がいないことだ。

前述のように、ざっと数えただけでも50兆円前後の資金が用意され、民営化
したばかりなのに政府系金融機関の役割を担うことになった政投銀と、本来、
民間企業のリスクを取ってはならないはずの日銀が、今後ともあらゆる手を尽
くす。

それなら麻生太郎首相は、「国難です!」と、非常事態宣言をしたうえで、
「安心してください。企業は国家が責任を持ちます」と、メッセージを発すべ
きだろう。

だが、明確なメッセージがないために国民に危機感は伝わらず、逆に安心感も
広がらない。

規律を無視した紙幣の増刷は、いつか国民から富を奪う円の暴落、ハイパーイ
ンフレにつながる。

それだけの負担を強いる政策なのに、活躍しているのは一部の財務官僚とメッ
セージ力のない日銀総裁だけ。

「死に体」の麻生政権に将来を語る資格はなく、小沢民主党は政局にしか関心
はない。

かくしてカネは企業に注ぎ込まれているのに、国民はその実態を認識できず、
証券市場は覚悟を聞いていないから「底」を確認できない。

情けない限りである。

経済の劣化に正面から向き合い、国民にアピールする政治家がいない。

日本の最大の不幸はそこにある。

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【あとがき】

西松建設の政治資金疑惑事件は、政権交代を何としても阻止したい一部少数勢
力による、「政局の一発逆転をはかるあからさまな国策捜査」、という声が強
まっている。

だが、いまの政権には、これをシナリオどおりに運ぶだけの力量が備わってい
ないようだ。

元警察庁長官で現政権の官僚トップ、漆間巌官房副長官の「記者懇」発言が、
二階経済産業相ほかの自民党幹部の同罪を指弾する世論を呼び覚まし、捜査方
針にも影響を及ぼす事態にしてしまった。

しかも、この軽率な発言者を簡単に公表してしまった河村官房長官と麻生首相
との連係プレイもお粗末だった。麻生首相が、漆間副長官を庇う発言を二転三
転させたのはその結果だろう。

これで、民主党小沢代表が辞任しようとしまいと、政権交代の可能性は大久保
秘書逮捕以前の状況に戻ってしまった。

この事件を政局に絡ませる陰謀は、これで元の木阿弥になってしまったといえ
るのだが、木阿弥に戻してはいけないのが、この事件の本質である“政官業癒
着”の実態を明らかにすることだ。

ももともと、東京地検特捜部は「政治的意図はない」と言明しているのだから
これができなければ、今回の強制捜査の意味がなくなってしまう。

2年前に「談合廃止」を宣言したゼネコン業界なのだが、実は、西松建設だけ
でなくゼネコン大手も、“合法的”な巧妙な手段で受注調整を行なっていると
いう話は以前から言われていたことだ。

そうした政官業癒着の実態を明らかにすることを国民は期待している。マスメ
ディアも、“政府高官”の名前の公表をさせただけでは、まさに“片手落ち”
だ。



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