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  2009/11/18    No.508   週刊メールジャーナル   読者数11058(前回)
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●官邸と蜜月・日銀の「獅子身中の虫」
(会員制経済情報誌『現代産業情報』11月1日号より転載)

民主党が政権党となって、関係が蜜月の中央官庁の唯一は日銀であろう。

現在の白川方明総裁を誕生させたのは、自民党が推した財務省OBを拒否した
民主党なのだから、双方の蜜月関係は当分続くというのが大方の見方である。

現在の経済状況で、政権与党と中央銀行の関係が良好というのは、せめてもの
救いではある。

その日銀の内側が、ごたついているらしい。
原因はきわめて単純で、古手審議委員の“専横”に、闊達な金融政策議論が妨
げられているのだという。「獅子身中の虫」(関係者)という指摘もある。

金融ジャーナリストが説明する。

「幹部たちがごたついている原因となっているのは、役員中唯一の女性である
S審議委員の存在です。審議委員としては一番の古株であることをいいことに、
傍若無人な振る舞いが目立ち、異常な自己顕示欲をあからさまにしています。
幹部人事にも露骨な介入をし、日銀内部では『女帝』とすら呼ばれています」

総裁、副総裁(2名)、審議委員(6名)、監事(3名以内)、理事(6名以内)、
参与(若干名)で構成される日銀役員のうち、常勤役員である審議委員は「経
済・金融についての見識の高い有識者」の中から、衆参両院の同意を得て内閣
が任命する。

「女帝」と名指しされるS女史は、東大大学院経済学研究科の博士課程に学ん
だ後、専修大、学習院大の教授を歴任。新日銀法施行に伴い、2001年審議委員
に登用された。

総裁、副総裁とともに最高意思決定機関の政策委員会メンバーであり、月2回
の金融政策決定会合、週2回の通常会合に出席して業務の審理や決定を行なう。

任期は総裁と同じ5年で、「大きな不祥事でも起こさない限り、簡単に辞めさ
せることができない高ステータスのポスト」(関係者)にある。

「1期目を大過なく務めたS女史は再任され、6人の審議委員の中では最古参
の存在となった。発言力は増しています。その内容が日銀の金融政策の方向性
について重きをなす発言であるならば、誰もS女史を悪くなど言いません」と
ジャーナリスト。

「ところが実際は、人の好悪を露骨に言い放ち、金融政策に真面目に取り組ん
でいるとは思えない態度をとっているのです。最近では、信任理事(役員)候
補者について、『あの方は理事にはまだ早いのではないか』『彼は人格に問題
がある』など、本質的でない部分に感情的な執着を示して難癖をつけることが
目立つ。

瑣末なことのようですが、理事の選定は政策委員会の満場一致が原則のため、
S女史の賛成が得られないと、昇格は不可能となってしまう。人事が進まない
のです」

問題は、女史の執着が、人事対象である日銀幹部の萎縮を招いているという現
実――だと関係者は指摘するのだ。

「理事候補に名前が挙っている各局の局長らは、声の大きいS女史の機嫌を損
ねないよう、ひたすら低姿勢で接している。これでは闊達な政策論議など望む
べくもない」(関係者)

G7などの場で、各国の中央銀行総裁に早口の英語で真正面から金融政策論を
ぶつける白川総裁の評判は国際的にも悪くない。

それだけに、この微妙な時期にある日銀の内部がこのような低次元の要因でか
きまわされている現状は国益の観点からはゆゆしく、加えて、あまりに情けな
い。


●悪化の一途をたどる暴対法「副作用」
(転載同前)

弊誌は2001年9月15日発行446で、「ビル火災で浮かび上がった歌舞伎町の深
刻な『無法化』」と題し、警察が鳴り物入りで施行した暴力団対策法の激烈な
“副作用”を、歌舞伎町の情景変化の中に指摘した。

その年は歌舞伎町で44人が死亡するビル火災が発生したが、警視庁は放火、失
火のいずれかを判断できず、アングラ情報も入手できなかった。

「今回のビル火災の怖さは、ビルに窓がないことではなく、警察の管理がとっ
くに及ばなくなっているにもかかわらず、警察は暴対法によって歌舞伎町を制
圧したと勘違いしていること」だと指摘した。

それから8年。状況は悪化の一途をたどっている。

警察当局が言うところの「指定暴力団」の一つである山口組が、その象徴であ
る「菱の代紋」をあしらった名刺の使用を組織内部で禁ずる通達をしていた実
態を各紙が報じたが、これは相当にインパクトのある現象だとみていい。

「菱の代紋や組の名称が刷り込まれた名刺は、『日本最大の暴力団』の証。二
次、三次団体の傘下組員が資金稼ぎをする際に、『威圧力』『恐怖力』として
相手に作用してきた。

抗争が原因で第三者が被害を受けた場合に、組トップが賠償責任を負うことを
定めた暴対法改正(04年)前後から、山口組は直系組長以外が『山口組』の名
刺を使うことを禁じるなどの動きを見せていました。

しかし今回判明した動きは、直系組長も含めた全禁止。本気で完全潜行しよう
という、山口組の意思が感じられます。警察庁も、そこは認識しているようで
す」(ジャーナリスト)

1992年に施行された暴対法は、暴力団であることを示威して不当な要求を強い
る行為そのものを摘発対象とし、いわゆるみかじめ料やショバ代などシノギを
暴力団が得られないようにするのが目的だった。

「資金源を断てば暴力団は生存できず壊滅する」。それが暴対法を立案した警
察官僚たちの理論であった。

確かに中小勢力は行き詰った。が、それらは山口組に次々と吸収され、業界バ
ランスの流動化を招いた。

中小吸収は山口組に東京進出の足がかりを与え、稲川会や住吉会など関東勢力
と摩擦を起こす。

山口組の東進は抗争を呼び、銃需要を喚起、密輸銃の拡散が進んだ。

一時期、各地で銃の事件が頻発したのは、暴対法で困窮した末端組員が手元の
銃を使って強盗に踏み切るなど、暴発したためである。

しかも暴対法には弱点があった。

「暴力団であることを示威」しなければ効力が及ばないのを逆手に取り、大勢
力は次々に暴力団の看板を外して地下に潜った。

「かつては、警察が全ての組事務所と構成員を把握していた。日常的に捜査員
が事務所に出入りし、足と目で情報を更新していた。しかし暴対法後は、令状
を示さない限り捜査員を事務所に入れず、事務所を移転して雲隠れしたり、い
つの間にか株式会社にしたりと相次いでマフィア化しているのです」(社会部
記者)

山口組は六代目の現体制になってから、いっそう反警察色を強め、捜査員の自
宅、家族、ローン残高などの情報を収集しているほど。

「愛知県警が中枢の組事務所を捜索したところ、最高裁判事の自宅電話番号を
記した資料も出てきた。県警幹部は青ざめたといいます」(同)

警察当局による監視は、限界に来ているのではないか――。

その見方は、もはや支配的だといっていい。情報を取れない警察と、最高裁判
事の個人情報にまで手を伸ばす暴力団。

警察庁は9月29日の会議で、六代目の出身母体である弘道会(名古屋)の摘発
強化を決定したというが、警察に勝ち目があるとは誰も思っていない。

暴対法の副作用は、もはや「租界の形成」から、「暴力団に警察が押し潰され
る危惧」にまで拡大しているのである。

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 週刊メールジャーナル 2009年11月18日  第508号(水曜日発行)
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