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  2010/2/3    No.517   週刊メールジャーナル   読者数11087(前回)
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●異常なパワーゲーム「小沢VS検察」その本質は?
(会員制経済情報誌『現代産業情報』2月1日号より転載)

資金管理団体「陸山会」の土地購入に絡む政治資金規正法違反の捜査をめぐる
小沢一郎・民主党幹事長と検察当局の“パワーゲーム”は、異常な様相を示し
ている。

衆人環視(報道機関を通じて)の中で1月23日午後、東京地検特捜部の小沢
氏聴取が行なわれた。

政界実力者の任意聴取の日時と場所が事前に漏れ、マスコミが取り囲む中で聴
取がなされたという事態も異常なら、任意聴取後に対象の政治家が記者会見を
開いて聴取内容を明かし、その場で容疑を否認するなどという現象も過去に例
がない。

小沢氏は、利権にまみれた自民党旧田中派を離れて以来、常に政界の重心のひ
とつであり続けてきた。

野党時代も一定の存在感を示し続けてきたが、昨年の総選挙で政権交代を実現
して以降、首相という傷付きやすい表のポストを鳩山由紀夫氏に渡し、自らは
幹事長におさまった現在の状態は、小沢氏にとって最も権力を行使しやすいポ
ジショニングにあるといえよう。

事業仕分けで大混乱に陥った来年度予算編成で右往左往する政府を、公約違反
との謗りを受けても一定の方向に動かしたのは小沢氏の叱責であったし、公約
にはなかった外国人地方参政権の法案提出を政府に固めさせたのは、小沢氏の
与えたプレッシャーがエンジンだった。

自らは傷付きにくい立場で権力(それも日本最大の権力と言ってもいい)を行
使する小沢氏は、自分に刃を向ける検察当局にもプレッシャーをかけてきた。

人事をちらつかせながら検察組織に手を突っ込もうとする小沢氏の力は、検察
にとって、何かと検察批判を繰り返す鈴木宗男代議士などとは比較にならない
脅威を検察当局に与えている。

対する検察は、小沢氏の脅威を感じながらも、自身が日本の権力中枢にあるエ
リートであると自認している。

「川(=政官界)は放っておくと汚れるもの。汚泥を取り除き、川の清らかさ
を取り戻すのはわれわれの任務である」

検察官たちが自身の任務をそういう表現で語る自負の裏には、「日本という国
家を守っているのは自分たちである」という強烈な選民意識がある。

「幹部以上が天皇の認証官となる検察当局には、『きれいな社会』をつくるの
が最大使命だという意識が染み付いている。

その組織的良心から見れば、元秘書だった現職衆院議員の逮捕という事態を生
んだ小沢氏という政治家に権力が集中する現在の政界のありようは、許せるも
のではないはず」

法務・検察を熟知するジャーナリストが指摘するように、現在の検察の心理は
このような種類のものであることは想像に難くない。

その観点で言うと、検察は一度小沢氏に惨敗を喫している。昨年、公設秘書を
逮捕しながら、その後の総選挙で小沢民主党が大勝したことだ。

民主有利が確実視される中での小沢氏側近の摘発は検察の目算とは逆に、検察
と自民党の「謀略」と有権者に勘ぐられ、検察の強引さを批判するかのように
308という異常な議席数を民主党に与える結果となった。

政治家である小沢氏は「数」に価値を置く。官僚ではなく、選挙によって選ば
れた政治家が社会を支配するべきと考え、権力の源泉ととらえていよう。検察
批判の裏付けもここにある。これが「汚れなき社会の形成」を使命と自認する
検察には許せない。

小沢氏と検察の異様なまでの死闘の本質は、畢竟、ある種の権力闘争にあると
みるべきだろう。

論点の拡散を防ぐため、この稿では小沢氏という権力実体の在り様や検察の手
法の是非には触れない。

小沢氏と検察の異常なパワーゲームを「誰がこの国の支配者か」という軸で見
ると、極めて本質的であることに納得する。

いずれにしても現在の局面は、どちらが勝ったとしても、敗者は権力を簒奪さ
れて哀れな末路が待つシナリオしかない極限状態に入っている。



●小沢捜査で「法務・検察」と手を結んだ「財務・国税」
(転載同前)

政治資金規正法違反(虚偽記載)の共犯での起訴に向けて、東京地検特捜部の
「小沢捜査」は、“着々”と進んでいる。

その“着々”に、検察の持つ「独善」やマスコミ司法記者クラブとの「癒着」
があり、それが戦前の戦争報道を思わせる、一方的な「小沢攻撃」につながっ
ている危険性は、別項で触れているので繰り返さない。

ただ、ネズミだって猫を噛む。まして小沢一郎という政治家は、離反する者を
決して許さない強気の人で、だからここ10数年、日本の政局は「小沢VS反
小沢」で揺れ動いた。

事件化が近づいた今は「検察批判」を封印しているが、起訴がなければもちろ
んのこと、起訴されたとしても国会議員である間は、徹底的な検察攻撃を仕掛
けよう。

それがわかっているから検察は、「小沢つぶし」を狙っているのだが、いくら
ゼネコンやサブコンを叩いたところで、収賄やあっせん利得につながるような
犯罪はでてこない。

政治資金規正法の“タマ”は、既に打ち尽くした感がある。では、小沢氏の反
撃に、どうやって備えるのか。

脱税である。政治資金規正法で略式起訴して脱税で逮捕した金丸信元自民党副
総裁と、まったく同じストーリーを検察は考えているのだという。

「おそらく、政治資金規正法違反に絡めて、小沢の自宅を家宅捜査します。既
に、国税の“側面協力”を得て、タマリの目星はついていると思われます。
『脱税カード』を握ることで、小沢からの攻撃の“備え”とするでしょう」
(全国紙社会部デスク)

小沢氏は、「親父」と慕った金丸氏が、集めた政治資金を、現金、金融債、金
の延べ棒といった形で事務所の金庫にしまい込み、それを「タマリ」と認定さ
れて脱税犯に“転落”、政界引退を余儀なくされた過程を、側近としてつぶさ
に見ている。

それだけに、政治献金を個人の資産と認定されないよう、相当に神経を使って
いるはずだ。

政治団体の陸山会が都心のマンションを中心に一時は14物件も取得していた
のは、「裏」を含む献金を、「表」の献金にすり替えるテクニックであり、あ
る種のマネーロンダリングだった。

石川知裕容疑者ら逮捕された元秘書による複雑な政治団体を経由した資金移動
は、その意図を感じさせた。

しかし、それだけでは小沢氏を徹底的に追い込むことのできない政治資金規正
法違反である。

検察としては、ゼネコンやサブコンから「裏」で渡されたカネが、小沢氏個人
のカネとなっていることを立証し、脱税事件に持ち込みたい。

そうしたデータは、当然のことながら検察庁にはない。あるのは国税庁。過去
の税務調査を通じて国税には、「表」にしていないさまざまなデータがある。

金丸脱税事件の発端が、別件での銀行調査で判明した金丸氏の「金融債記録」
であったことは有名な話で、これを当時の国税幹部が、「大物政治家を特別扱
いにした略式起訴」で、国民から轟々たる批判を浴び、困っていた窮地の検察
幹部に“裏”で渡し、救ったのである。

今回も前の証言にあるように、検察は国税に「側面協力」を要請、つまり小沢
氏に絡む人物、企業などの資料提供を求め、国税はそれに応じている。

それが脱税事件に発展するかどうかは不明ながら、ハッキリしているのは、国
税というより財務省が、「小沢民主党」と距離を置くようになったことだ。

それは単に、検察と近い国税が、いつものように捜査協力したからというので
はない。

「事業仕分け」に象徴されるように、民主党はこれまで、財務省を通じて国交
省、農水省、厚労省など他の官庁を押さえつけてきたが、財務省は他の官庁と
同じく面従腹背に切り替えた。

きっかけは、自分たちのOBであり理解者である藤井裕久氏の財務相退任であ
る。

「マニフェスト通りにガソリンなどの暫定税率廃止を貫こうとした藤井さんを
小沢氏は切った。そして持ってきたのが、官僚バッシングを人気取りに利用す
る菅(直人)さん。民主党との蜜月が終わったということです」(財務相関係
者)

ここで「法務・検察」と「財務・国税」は手を結んだ。官僚は引き続き国家の
主役であり続けようとしているのだが、主権者である国民は、彼らにそんな権
限を与えたつもりはない。

検察と国税が一体となった「小沢捜査」の次の段階(脱税)には、そんな危険
な「官僚支配システム」が潜んでいることを忘れてはならない。



●「4億円の虚偽記載」の「小沢捜査」を大々的に報じるマスコミの責任!
(転載同前)

小沢一郎という政治家は、「国の形」を作り変えようとしている政治家である。
それが「小沢攻撃」の原因であり、結果であり、すべてといっていい。

検察が「小沢捜査」で問おうとしている罪は、「4億円の虚偽記載」である。
そこに水谷建設のカネがあるとか、東北地方の談合を仕切っていたとか、虚偽
記載の背景にあるものは、この際、置いておこう。

石川知裕元秘書(現代議士)を始め、3人の前現秘書を逮捕した東京地検特捜
部が、小沢氏を起訴しようとしている罪は、政治資金収支報告書に「4億円の
記載をしなかった」というものだけである。

そして今、小沢氏がその虚偽記載の共犯かどうかが問われている。冷静に考え
て、これが日本で一番の大物政治家を葬り去るほどの罪なのだろうか。

しかし現実には、「4億円の虚偽記載」の背後に、ゼネコンやサブコンからの
裏ガネがあり、それらが報告されないまま保管され、小沢氏からの貸付金とし
て処理され、「裏ガネをロンダリングして政治団体の不動産(世田谷の秘書宅)
を購入した疑いがある」として、連日、マスコミは報道している。

政治資金規正法違反が、形式犯でとるに足らないといっているのではない。明
らかになっている罪と、洪水のような報道の落差が大きすぎるのだ。

それに加え、「法務・検察」には「霞が関」の秩序を壊しにかかってきた小沢
氏を、官僚機構の右代表として潰そうとする、“歪んだ意識”が明らかにあっ
た。

では、「4億円の虚偽記載」を行なった小沢事務所が悪いのか、官僚秩序を守
るために小沢氏に戦いを挑んだ捜査権力が悪いのか。そもそも何が原因で、ど
う対立したかを再確認する必要がある。

経済成長の時代には、官僚が政治家を立てつつ、予算を配分、法律を立案、業
界を管理監督してきた。政治家の役割は、選挙に勝って陳情を官僚に伝えるこ
と。

右肩上がりの経済成長期に相応しかったこのスタイルが、官僚組織の硬直化、
自己目的化につながり、国の成長の阻害要因になってしまった。

小沢氏は、政権交代で自民党支配を打ち壊し、「官」の役割を「政」に担わせ、
既得権益を壊し、組織を活性化させようとした。

その具体化が、事務次官制を廃止、組織をピラミッド型から台形にし、局長ク
ラス以上の幹部人事を政権与党が握ることだった。

「霞が関」はそれに怯えた。

官僚にとっては、人事がすべてである。その秩序によって人生が決まり、秩序
が保たれ、生活は安定する。

生存権を脅かそうとする小沢民主党への反発は凄まじいものだったが、300
議席を超える民主党大勝の前では、様子を見るしかなかった。

小沢民主党に立ち向かったのは、結局、法務・検察である。

理由は二つ。一つは、公共工事をめぐるゼネコンと政治家の捜査を通じて、小
沢事務所が東北談合に関与、そこから集金していることを知っていたこと。

検察にしてみれば、「まず、自分が身ぎれいにすべきではないか」という思い
があった。

もう一つは、小沢周辺から聞こえてくる法務・検察への挑戦的な発言。「小沢
私兵」ともいわれる「一新会」の議員の中には、検事総長の国会同意人事、検
事正の選挙制、法相指揮権の弾力的発動などを、堂々と口にする者もいた。

「法と正義」の担い手は、政治家ではなく自分たちだと自負する誇り高い検事
たちにとって、許し難き言動だった。

その背景に検察は、田中角栄、金丸信という小沢氏にとっての「二人の親父」
を逮捕したことへの小沢氏の“私怨”を感じた。

ただ、昨年3月、西松建設に絡む政治資金規正法違反事件で、大久保隆規秘書
を逮捕した際、そこまでの反小沢感情が検察にあったわけではない。

大久保逮捕への民主党の反発、小沢氏の挑戦的言動が、「俺たちに楯突くのか」
という、いつもの傲慢な組織的怒りに変わり、胆沢ダム受注業者への集中的な
事情聴取となった。

8月末の総選挙を終え、樋渡利秋検事総長など検察首脳は、捜査中断を告げて
いた。

「1億円を運びました」という水谷証言はあったものの、信頼性に乏しく、ま
た「虚偽記載だけでやるには無理がある」と判断した。

そのカベを、捜査現場の特捜部は楽々と超えた。『読売新聞』を始めとするマ
スコミ司法記者と組み、情報を次々にリーク、それは「小沢事務所の不動産取
得の異常性」「小沢事務所の錬金術」といった形で報道され、11月に入ると
「市民団体から告発を受理」という形で再捜査が始まったのである。

以後、年末から今年に入っての検察捜査とマスコミ報道が一体化したヒステリ
ックな「小沢つぶし」については、今さらいうまでもあるまい。

捜査情報が流れ、取調べ状況が逐一、報道されるなか、小沢氏は追い詰められ、
「起訴やむなし」と、覚悟を固めたようにも思える。

結局、マスコミも検察と一体化することで、硬直化した「官僚支配」に加担し
た。

特捜検事が「青年将校」だとしたら、マスコミは「大本営発表」の垂れ流し。

日本を悪くしたのは誰か。

一目瞭然である。

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 週刊メールジャーナル 2010年2月3日  第517号(水曜日発行)
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    編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社
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