■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
  2010/5/19    No.532   週刊メールジャーナル   読者数10909(前回)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

【お礼】

前号で、編集発行人・川崎明の亡父・川崎英策の戦病死の場所、時期について
情報提供をお願いしたところ、思いがけず多くの情報提供をいただき、厚くお
礼を申し上げます。
本誌は、本来ジャーナリズムであり、プライベートな発言はブログで行うよう、
その準備をしておりましたが、時期を逸する可能性があったため、編集委員と
協議して、この誌面を利用いたしました。お断りしてお礼といたします。



●「時効捜査」(講談社)で竹内明氏が描く警察庁長官狙撃事件の深層
(会員制経済情報誌『現代産業情報』5月1日号より転載)

上梓されたばかりの『時効捜査』は、400ページを超えてずっしりと重い。
一読して思うのは、そうなる必然があったこと。

まずテーマの重さ。

警察のトップ、国松幸次警察庁長官が撃たれ、2010年3月30日に控訴時
効が成立してしまったのは、警察がどれだけ捜査を尽くしたとしても大失態で
あり、その押しつぶされそうな現場の重圧が読者にも伝わってくる。

次に、警察が構造的に抱えている「組織の歪み」がもたらす重さ。

長官狙撃事件に投入された捜査員は、延べ48万2000人と、とてつもない
数だが、誰もが、犯人逮捕への強い意欲を持っていた。

だが、硬直した警察組織は、キャリアとノンキャリア、刑事警察と公安警察、
検察と警察など、さまざまな対立軸を生み、それをむしろ強化してきた。

その歪みが、さまざまな形で捜査を妨害、捜査員が抱えるジレンマが、読者に
も強く感じられる。

作者は竹内明氏。

TBS報道局で社会部記者として活躍、ニューヨーク勤務、社会部デスク、外
信部デスクを経て夕方のニュース番組でニュースキャスターを務めた。

テレビ記者としては華麗なる経歴だが、粘り強い取材には定評があり、それが
生かされたのが前作の『ドキュメント秘匿捜査・警視庁公安部スパイハンター
の344日』である。

本作は2作目。執筆のきっかけは、他国のテロ対策官が発した次のような辛辣
な言葉だったという。

「先進国では類を見ない、お粗末な捜査を繰り返して、それを隠蔽することに
エネルギーを注いでいるように見えます。

元警官の証言の範囲しか捜査せず、ほかの可能性は無視する。私には、日本警
察が本気で長官狙撃事件を解決しようとしているようには思えない」

この「元警官の証言」が、本書のキーワードだろう。

小島俊政(仮名)巡査長――警視庁元富士警察署警備課公安係に所属するオウ
ム真理教在家信者の「自供」に、捜査は踊らされ続けた。

自供が始まったのは1996年4月30日。4日後の5月4日未明、次のよう
な衝撃的なやり取りがあったと記されている。

「『やっぱり私が撃ったんですかね……』消え入りそうな声だった。大牟田は、
この機を逃さなかった。強面の顔をさらに険しくして怒鳴った。

『そうだ! お前が撃ったんだ!』

小島の顔は一瞬で青ざめ、下を向いた。そして手を膝に置いて、貧乏ゆすりを
始めた。

そのままの姿勢で小島は、

『撃てと言われて撃ちました……』

とつぶやいた。目には涙が浮かんでいた」

犯人が落ちた瞬間である。臨場感にあふれている。だが、どこかで竹内氏の筆
が冷めているのは、小島の供述が、この後、二転三転、捜査が迷走するきっか
けが、この「小島供述」にあることを知っているからだ。

捜査本部は、時効寸前まで小島にこだわり、09年10月18日から始まった
聴取は、15回を数えたという。

2010年2月21日、最後に小島と向き合った栢木公安一課長は、懸命に言
葉を並べて説得しようとした。だが、あいまいな答えに終始する小島は変わら
ない。

竹内氏は、自らの怒りを込めてこう書く。

「だが、俯瞰してみれば、所轄の巡査長で警察を追われた男が、定年直前の警
視正を掌で弄んでいるのは明らかだった。

栢木には、目の前の中年男が『逃げ切ったぞ!』と快哉を叫んでいるように思
えた」

数々の対立軸の中でも、刑事警察と公安警察の違いは、「迷走の原点」といっ
ていいほどに深く、そうしたつまらない行き違いの中で、多くの重要な捜査が
捨て去られた。

「序章」に書かれた「北朝鮮ルート」は、その最たるもの。竹内氏は、ベテラ
ン捜査員にこう言わせている。

「弾丸の模造はオウムにはできないし、そんな証拠も出てこなかった。現場に
北朝鮮の軍のバッジが落ちていたのに、北朝鮮ルートを15年間も捜査しなか
ったなんて、明らかにおかしいじゃないか」

公訴時効を迎えてしまった捜査に、明るさが宿るわけがない。

その最後に、「狙撃事件の操作概要」を発表、オウム真理教の信者が限りなく
犯人に近いと、法治国家の捜査機関としては、やってはならないことをやり、
醜態をさらしたことも含め、公訴時効までを追った本書は、「未解決の重さ」
「制度疲労の重さ」を引きずっている。

しかしそれを含め、国民には何が事件をつぶしたのかを知る権利がある。
その疑問に応える「最良の書」であるのは疑いない。

◆会員制(法人・個人)経済情報誌『現代産業情報』のご購読は、本誌がお取
次ぎします。無料で見本誌をお送りします。お申し出ください。



【本誌おすすめの図書】


あらゆるビジネスシーンで使える

「どうしようかな……」を「なるほど!」に変えてゆく

コミュニケーションテクのすべて。

『心動かす交渉術』

〜顧客リピート率95% トップクラスのヘッドハンターが使う交渉術〜

【著者】小松俊明  【価格】定価(本体1,300円+税)

詳細、購入はこちら⇒http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4901491970


【本誌おすすめの映画祭】


“知らなかった世界がここにある”『第7回東京平和映画祭』

マイケル・ムーア監督『キャピタリズム マネーは踊る』、

サム・ボッゾ監督『ブルーゴールド―狙われた水の真実』、



小林アツシ監督『どうするアンポ?〜日米同盟と私たちの未来〜』

など10作品と講演など

6月19,20日の2日間でお届けします。

詳細、チケット購入はHP⇒http://www.peacefilm.net/


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
  週刊メールジャーナル 2010年5月19日  第532号(水曜日発行)
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
    編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社
        〒130-0026 東京都墨田区両国2-1-4 第2西村ビル201
ホームhttp://www.mail-journal.com/
メールadmin@mail-journal.com
転載・再配布等には事前にメールジャーナル社に許可をお取り下さい。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■