■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2011/6/8 No.586 週刊メールジャーナル 読者数10583(前回) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ◆東日本大震災によリ罹災された皆さまに対し心からお見舞い申し上げます。 また、ご家族、職場、地域で、お身内、お知り合いを亡くされた皆さまに衷心 よりお悔やみを申し上げます。 ●現場を混乱させている官邸、経産省・安全保安院、マスコミの罪 (会員制経済情報誌『現代産業情報』6月1日号より転載) 福島原発事故が収束しない。 しばらくニュースが途絶え、安定化に向かっているかと思うと、格納容器に開 いた穴の発覚、高濃度汚染水の流出、使用済み燃料プールの高温化、といった 事態が次々起き、「ぬかるみの原発事故」という状態に変わりない。 ここは耐えるしかない。一つ一つの事態に根気よく対処、「想定外」が起きな いようにしつつ、総力を結集して「日本を覆う暗雲」となった原発事故を終わ りに近づけ、しかる後に、原発を含め、エネルギー行政をどうするかを、真剣 に論議すべきだろう。 しかし、今、官邸主導で行われている事故対策、監督官庁の経産省・資源エネ ルギー庁と監視部門の原子力安全・保安院が東電に行っている指導、細大漏ら さずに報道するマスコミの姿勢は、混乱を増幅させ、国民の気持ちを萎えさせ るばかりだ。 例えば、国会で問題となり、マスコミが「犯人捜し」をした「55分間の海水 注入の中断」である。 3月12日の午後3時36分に1号機が水素爆発。原子炉を冷やす海水注入が 喫緊の課題となり、注入は始まったものの、東電は「官邸の判断が必要」とし て午後7時25分に注入を中断。海江田万里経産相の命令を経て、海水注入が 再開されたのは8時20分。 この「空白の55分間」は、菅直人首相、斑目春樹原子力安全委員会委員長、 細野豪志事故対策統合本部事務局長、東電、原子力安全・保安院とそれぞれの 言い分が食い違い、まさに「藪の中」といった状況だった。 最終的に、「空白の55分間」はなかったことが判明、終息する。 理由は、福島第一原発の吉田昌郎所長が、独断で海水注入を続け、中断がなか ったからである。 ここに、今回の原発事故における事故対応の誤りが集積している。 現場以外の「東京の関係者」の頭の中にあるのは保身だけ。菅首相は注水中断 への関与を否定、細野事務局長は「斑目委員長が再臨界の可能性を示唆した」 と言い、斑目委員長は「可能性はゼロではない、と言っただけ」と、猛抗議し た。 その迷走を、マスコミは面白おかしく伝え、実は現場の判断で中断がなかった ことが判明すると、「東電の意思疎通の悪さ」を批判した。 結果的に、自分の判断を押し通した吉田所長は正しかった。右顧左眄する素人 集団の言うことなど聞いていられない、という心境なのだろう。 この種のことが原発事故には多過ぎる。 最大の原因は、事故直後にヘリコプターで現地に飛び、すべての作業を遅らせ た菅首相にある。 官僚も東電も信用せず、事故発生時に行ったのは、母校の東工大卒業生名簿を 夫人に持ってこさせ、OBを次々と参与にしてにわか勉強、指揮を取ろうとし た。 ベントを指示しながらヘリで現地に飛ぶ。放射線を撒き散らすベントは、菅首 相の到着まで待つのが当たり前。 つまり、その分、作業は遅れたわけで、一国の首相でありながら、官僚を信用 せず、逆に官僚を敵にすることで国民的喝采を得ようとする愚を犯した。 こんな首相に従う官僚はいない。経産省資源エネルギー庁は、面従腹背、東電 を地域独占企業体のまま生き長らえさせて、自分たちの影響力が残るように腐 心、原子力安全委員会も原子力・安全保安院も、自らに“火の粉”が及ばない ことだけを祈っている。 マスコミはいつものように、部数確保と視聴率アップだけが至上命題で、こう いう時は敵を見つけて叩き、読者=視聴者の溜飲を下げさせるのが一番だから、 すべてを東電のせいにしてバッシングに走っている。 つまり、「東京の人間」は、誰も原発事故を本気で心配しておらず、ポジショ ントークの百家争鳴。 それが現場にとっては、面倒な手続きが増え、事故処理を遅らせているのだか ら本末転倒である。 総指揮官は、最後の責任だけを取り、詳細は現場責任者に任せ、行政と監視機 関はその過程をチェック、でも権限は現場に委ねてサポートにあたり、マスコ ミはその状況を正確にレポート、必要な解説を加える――。 これが未曾有の事故に冷静に対処する要諦だろう。そうした役割を考えず、む しろ事故をそれぞれが利用している現状は、決死の作業員や原発被災者を愚弄 する行為に等しいことを自覚したほうがいい。 ◆会員制(法人・個人)経済情報誌『現代産業情報』のご購読は、本誌がお取 次ぎします。お申し出いただけば、無料で見本誌をお送りいたします。 ■非常時の社内広報(その2) (ナナ総合コミュニケーション研究所ポータルサイト「コミサポネット」 のコラム「社内広報を考える」6月1日更新より転載) ⇒http://www.commu-suppo.net 前回、この「非常時の社内広報」というテーマは、単発の積りで書いたのだが、 その後、私がかかわっている社内広報業務をめぐって、経営者と担当部門との 間で認識のずれが起きてしまったために、もう一度、この問題について、整理 をしなければならなくなってしまった。 いくつかの会社では、トップの強い指示に押し切られる形で、今回の震災の影 響を乗り切るための社内外の広報を展開することになったのだが、社内広報の 担当者としては、どうしても納得がいかないし、今後のこともあるので、ぜひ とも、きちんと整理してほしいと頼まれてしまったのである。 まず、「非常時」とはどういう事態かといえば、「会社が生き残ることができ るかどうかわからない」つまり「非常事態」に陥っている状態であり、私は、 そういう事態を前提に、前回、書いた。 あえていえば、自力で会社の再生、再建をするには、非常な困難が予想され、 公的機関や金融機関の支援がなければ、生き残ることが困難な状況を前提にし たのである。 なぜなら、今回の大震災の影響によって、今後1年以内にそうした会社がおそ らく数百社に達するのではないかという予測に立ち、そういう会社の広報活動 の参考に供したい心積りだったのである。 現に、東京商工リサーチが5月12日にまとめた全国企業倒産状況によると、 この震災が影響した経営破綻は、震災発生から2カ月となる5月11日現在で 86件にのぼっているということだった。 しかも20日現在で100件を越えたことが判明、阪神大震災の3倍を超える スピードで増え続けているという。これからも、非常事態に陥る会社はどんど ん増えることが考えられる。 しかしながら一方では、全国の企業の約3分の1が、2011年度の業績は1 0年度より減収減益になると予想していることが、帝国データバンクが5月9 日発表した調査で分かった。(『読売新聞』5月10日付朝刊) 業種別でみると、「減収減益」と答えた割合が大きかったのは津波の浸水被害 や風評被害の影響を受けた「農・林・水産」(42・1%)で、「金融」が3 9・2%、「建設」が38・6%と続いた。地域別では、被災地の「東北」 (45・1%)、「北関東」(39・4%)が多かった。 業績悪化の要因としては、仕入れ先の被災や風評被害など「東日本大震災によ る間接被害」が54・1%で最も多かった、という。 しかしながら、このような状況は当然予測できることであって、同じような経 営環境のもとで、他社といかなる経営差別化をはかるか、トップマネジメント のガバナンスが問われる状況にあると言い換えても良い。 したがって、いま政府が検討している「復興計画」と「予算」次第では、「減 収減益」から「増収増益」に変わりうる会社も多いはずだ。 そうした会社は、「緊急時広報」によって、ステークホルダーに必要な情報を 正しく発信する広報活動を展開すればほぼそれで足りるはずだ。 私がかかわったいくつかの社内広報は、当面、減収減益の予測をせざるをえな かった会社だが、その程度の会社、といっては楽観的に過ぎるかもしれないが、 当面は、トップの指示どおりの広報を展開すれば問題はないと思った次第。 しかしながら、今後、非常事態を迎える可能性が少しでも予想できる会社は、 今からでも遅くないから、非常時の社内広報を準備する必要がある。 非常時の社内広報では、まず、生き残ることを前提に、正規・非正規を問わず、 全ての従業員とのインタラクティブなコミュニケーションをしなければならな い。 そのための各種社内メディアを必要なだけ用意し、いまから、本音のコミュニ ケーションができるように、使い慣れておくことが大切だ。 そのことによって、経営陣の強い意志と従業員の全知全能を結集することさえ できれば、会社の再生・再建はさして困難なことではないと、私は、自らの経 験上確信をしている。 例えば、再生機構などに再建を託すことは、経営論からすれば実質的な経営破 綻ではあるが、社名が存続し、雇用の太宗が維持されるのであれば、最悪の事 態を回避したことになる、と思う。 最悪の事態に際して役に立つ社内メディアとその使い方は、社内広報の担当者 がその職責としてトップにプレゼンして欲しい。 さらに、最悪の結果に至らないためには、平常時に、最悪の事態を想定した対 処方法を決めておく必要がある。 そのためには「リスクマネジメント」として、定性的なリスクを定量化し経営 への影響度を算定する作業を必要とするが、これは、専門のソリューション会 社に委託した方がいいかもしれない。 最近では、ソーシャル・リスクマネジメント(SRM)の学会が各地に組織さ れ活発な活動を展開しているので、ぜひとも加入し、社内広報の担当者は、定 性的リスクを社内収集するノウハウを身につけたい。 今回のような大災害を“想定外”と規定してリスクと向き合わない経営は、会 社が生き残るかどうかという問題を、“神頼み”にしているようなものではな いだろうか。 5月15日、吹田市(大阪府)で開催されたSRM第2回関西部会では、今回 の地震・大津波は、予知・対応可能の範囲内との見解がでている。 また、この20年ほどの間に発生したグローバルな経済危機や金融危機は、想 定外といえるほどシビアなアクシデントではあったが、これを乗り切った経営 は、今後、同様な危機に際してその学習効果を発揮できるはずである。 その意味で、今回程度の災害は、ほぼ“想定内”とするアクシデント・マネジ メント(AM)を導入しておくべきであっただろう。 そのような中で、東京電力のAMがどのような実態であったかということは、 いまだ公表されていないが、(国の特別委員会が調査を開始したが)有名無実 化していた可能性を指摘する報道がすでにある。 この問題は、この際、一般の民間会社も、他山の石として学習しておきたいも のだ。 東電にとっては、これほどの大震災は想定外として、予知と対策の責任から逃 れたい気持ちがあるのかもしれないが、仮にAMが機能していれば、これほど 厖大な賠償責任事故は発生していなかったかもしれない。 それゆえ、初動体制が混乱し、いろいろな作業が後手にまわり、結果として、 そのことが対外広報の混乱を招いた可能性がある。 しかし、その後の「東電広報」を注視すると、この会社には、もともと広報業 務とそれを所管する組織が実質的に存在していなかったのではないかと思わざ るをえない状況が続いている。 かなり前だが、私は東電の社内報の審査を担当したことがあるが、すでにその 当時から、普通の評価をすることができなかった記憶がある。 とくに、社内読者に対してさえ、原発に関する情報提供がきわめて制限的だっ たということを鮮明に覚えている。 今にして思えば、会社の中に、別な会社があるような印象を抱かざるを得ず、 その原因は、行政との関係にあるのかもしれないと感じたのだ。 原発の安全基準は国が決め、指導するという行政の仕組みから、国が東電に対 してAMの導入を指導するのは当然かもしれないが、その結果、自らのSRM を体系化する主体性が欠如することになったのかもしれないということだ。 昨年の国会で、869年に発生した貞観地震・大津波を想定した全電源喪失の アクシデントに備える必要があるのではないかという論議があったにもかかわ らず、発電コストとの関係でネグレクトしたのは経済産業省原子力安全・保安 院と内閣の諮問機関原子力安全委員会だった。 つまり、原発の安全性を考えるのは、本来、東電という“株式会社が主体”で なければならないはずだが、国と、その諮問先である原子炉工学や放射能医学 など原子力関連の学者・専門家たち(原発村ともいわれる)が主導権を握り、 東電社内の原発部門は、単なる運転機関に過ぎなくなっていたことが、SRM を自ら体系化できなかった原因のようにも思われる。 このことは、一般の会社も参考にしなければならない。 非常事態に直面して、コーポレート・ガバナンスの最重要組織は広報部門であ る。前回も書いたように、社内外の「人を動かす」組織だからだ。 非常事態に備えたい会社は、トップに直結するガバナンスとしての広報業務を 所管する部門を、早急に組織しSRMの点検を実施するべきである。 非常事態に直面した時、会社が生き残ることができるかどうかという客観的な 基準は、その会社の「社会的な存在価値」がどれほどあるかという判断にある。 つまり、その会社の本業自体に「社会的責任」(CSR)を果たす意味が、果 たしてどれほどあるか、どうかということである。 このことが、日常から明確で、全従業員が価値観を共有していれば、いかなる 事態に直面しようとも、社会的な支援・協力を得て、事業復興は容易になるは ずである。 【お知らせ】 ■ 「第10回全国社内誌企画コンペティション」企画の募集中です!■ ■ 締め切りを延期しました! ■ 今年も「第10回全国社内誌企画コンペティション」を行います。 現在、企画を募集中です。2010年に発行された社内誌、Web社内報、 周年誌、記念誌、社外広報誌、PR誌の、あなたの熱い思い入れの ある「イチオシ企画」をぜひご応募ください。 この度の東北地方太平洋沖地震の状況をうけまして、締め切りを 延期しました! ご応募お待ちしています。 【応募締切:6月13日(月)】 お問い合わせ先・詳細は下記 ⇒http://www.commu-suppo.net ************************ 株式会社ナナ・コーポレート・コミュニケーション ナナ総合コミュニケーション研究所 富加見(ふかみ) 智子 電話:03-5312-7471 FAX:03-5312-7475 E-mail:fukami@nana-cc.com ************************ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 週刊メールジャーナル 2011年6月8日 第586号(水曜日発行) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社 〒130-0026 東京都墨田区両国2-1-4 第2西村ビル201 ホームhttp://www.mail-journal.com/ メールadmin@mail-journal.com 転載・再配布等には事前にメールジャーナル社に許可をお取り下さい。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |