■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 2011/8/31 No.598 週刊メールジャーナル 読者数10466(前回) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ◆東日本大震災によリ罹災された皆さまに対し心からお見舞い申し上げます。 また、ご家族、職場、地域で、お身内、お知り合いを亡くされた皆さまに衷心 よりお悔やみを申し上げます。 ●記者の資質が判明した『ルポ東京電力原発危機1カ月』と『決断できない 日本』(会員制経済情報誌『現代産業情報』8月15日号より転載) インターネットの充実とグーグルの検索機能の向上によって、知りたい情報、 見たい資料が即座に手に入るようになった。 役所も企業もホームページを充実させ、積極的に情報公開、「広報の発表を垂 れ流すメディア」「独自情報や斬新な見立てを持たない記者」は、存在価値が なくなった。 情報のプロにとって、生き辛い時代となった。メディアも記者も壮絶なサバイ バル合戦が、これから本格化する。生き残るのは、半分以下だろう。 そうした中、「記者の資質とは何か」を感じさせる二冊の本が上梓された。 決して、「資質」を論じたものではないが、結果として生き残る記者、あるい は生き残るべき記者が浮き彫りにされた。 一つは『ルポ東京電力原発危機1カ月』(朝日新書)である。著者は社会部で 調査報道班に所属する奥山俊宏氏。 1989年入社の中堅だが、記事の鋭い切り口には定評があり、トヨタやキャノン といった大企業の収益構造の歪みを伝える「偽装請負」の連続追及は、たいへ んな反響を呼んだ。 もちろんチームプレーを大切にする朝日の社風では、奥山氏の単独の業績を指 摘するのは難しいのだが、 東大工学部原子力工学科という異色の学歴が、いかんなく発揮され、奥山氏の 記者としての資質の確かさを、改めて示したのが上述の著書である。 それにしても、本人の希望とはいえ、原子力工学科卒の記者を、原発などの専 門職にせず、社会部で抱えているところが、朝日の窓口の広さだろう。 丹念な事実の積み重ねである「ルポ」は、何を選び、何を捨てるかという作業 が、どれだけの知識と問題意識のもとで行なわれているかが問われる。 本人の声高な主張は、そこで出すべきではない。連日、延々と行なわれる記者 会見に出席し続けた奥山氏は、「会見模様の積み重ね」で、東電という会社の 本質的な問題点を浮上させた。 個人的思いは、「あとがきにかえて、私の個人的なこと」にまとめられている。 中でも東電中堅社員に呼びかけた「ミドルたち」は秀逸だ。 「モラルハザードに彼ら(東電の経営者たち)は陥っていて、結果、上に行け ば行くほど汚染と隠蔽の体質が残っている――。 原子力設備管理部の3人の課長をはじめ、私と同年代のミドル社員たちの多くが、 事故後、誠実に世の中に対応したことについては、私だけでなく、多くの記者 が同意していると思う」 この著書が、「記者は何を伝えるべきか」を示しているとすれば、後味の悪さ を感じさせられるのが『決断できない日本』(文春新書)である。 著者は、今年3月、米国務省日本部長を更迭させられたケビン・メア氏。 内容は、在日期間19年に及ぶ日本通のメア氏による「日本論」であり、更迭事 件の真相だけをつづったものではない。 しかし、メア氏が上梓したかった最大の理由が、ハメた共同通信の石山永一郎 記者に異義を申し立てることであったのは明らかで、 その経緯を読めば、メア氏の怒りも分かるし、石山記者のスクープを取りたい がための引っかけの手法に、拭えない後味の悪さがある。 沖縄国際大学での講演で、「(米軍の)抑止力は架空の議論であり、常に幻想 だ」と述べていることから、 「反米軍基地」の立場が鮮明な石山記者は、アメリカン大学の「反基地グルー プ」の学生を抱き込み、 彼らの沖縄研修では自宅に泊めて歓待、そのうえで「沖縄はゆすりの名人」と いうメア発言をメモさせ、 それを配信、自らの評価を高めるとともに、メア氏を追い込んだのだった。 奥山氏の手法が「冷静な観察者」なら石山氏の手法は「冷徹な主義者」である。 情報が氾濫、マスメディアの情報のプロに意識ある国民が期待するのは、「正 しい事実を冷静に分析、伝えるべきことを伝えること」である。 引っかけも計算も作為も必要ない。そんな情報の乱用者は、ネットの世界に山 ほどいる。 その自覚なしに、読者や視聴者を扇動する情報を流す者は、早くマスメディア から退散した方がいい。 ◆会員制(法人・個人)経済情報誌『現代産業情報』の購読は、本誌がお取次 ぎします。お申しでいただけば、見本誌を無料でお送りします。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 週刊メールジャーナル 2011年8月31日 第598号(水曜日発行) ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 編集発行人:川崎 明 / 発行所:メールジャーナル社 〒130-0026 東京都墨田区両国2-1-4 第2西村ビル201 ホームhttp://www.mail-journal.com/ メールadmin@mail-journal.com 転載・再配布等には事前にメールジャーナル社に許可をお取り下さい。 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |