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  2012/2/1    No.619   週刊メールジャーナル   読者数10351(前回)
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●テレ朝の“顔”となった古舘伊知郎が撒き散らす「弱者の視点」の害悪
(会員制経済情報誌『現代産業情報』1月15日号より転載)

今は、若干、印象が弱くなったが、「朝日ジャーナリズム」というものが存在
する。

大物政治家、高級官僚、巨大企業の監視役をもって任じ、「庶民」や「弱者」
の視点に立って報じる。

論調は少し左だが、社会主義にまでは行かない修正資本主義。『朝日新聞』の
スタンスである。

ただ、「庶民」や「弱者」といいながら、記者自身は東大卒が過半。給与は並
外れて高く、友人知人が政官財に多いというエスタブリッシュメント。

上から目線の鼻持ちならない人間が多く、その姿勢は、「エリートの自分たち
がバカな国民をリードする」というもので、実際に彼らとつきあうと、鼻白む
思いをすることが少なくない。

そんな『朝日新聞』も、社会党の分裂解体とともに、「まず批判ありきの毒に
も薬にもならない存在」であったことを自覚、軌道を現実路線に修正させてき
たが、

ネット社会の本格的到来は、他のマスコミ同様、掲載情報の大半が「役所のリ
ーク」であることが判明、存在価値をますますなくしつつある。

その『朝日新聞』に代わって、「朝日ジャーナリズム」を体現しているのが
「報道ステーション」の古舘伊知郎氏である。

ニュースの最後に必ずコメント。常に視点を「庶民」と「弱者」に置き、政治
家、官僚、企業を批判、弱者救済を求める。

正義は我にあり――。

したり顔で、常に安全地帯から発言する古舘氏に反発する識者は少なくない。
弱者の側に立った正論は、言うはやさしいが、その実行には困難が伴う。

例えば別項に書いた「除染」(本誌前号=1月25日号に転載=本誌注)であ
る。

生活者側に立てば、徹底的な除染で、完全に現状復帰、福島県産の農産物や海
産物が国民に受け入れられるようになるのが望ましい。

だが、現実には費用や実作業の難しさ、どこまでも消えない風評被害などがあ
って、「国にしっかりやってもらいたい!」というコメントでは終われない。
その困難さにどう立ち向かうかの対案が必要だが、そこは巧みにスルーする。

古舘氏のコメントは、実際のところ“芸”である。スポーツ番組のアナウンサ
ーとしてデビュー、過激な言葉をマシンガンのように乱射するプロレス中継で
一世を風靡、何でも器用にこなせるアナウンサーだった。

久米宏氏の引退で夜10時の報道番組を引き受けると、いっさいのスポーツ・
芸能番組を降りて、報道に注力、「古舘で大丈夫か」という不安を払拭した。

知識を蓄え、報道スタンスを確立したというより、テレ朝に求められている
「正義は我にあり」というキャスターとしての役割を、過不足なく演じている
のである。

脇を固めるコメンテーターは、外報部が長くニューヨーク支局長などを歴任し
た五十嵐浩司氏と、ワシントン特派員、政治部次長などを経て論説委員となっ
た三浦俊章氏。

二人の「ごもっともなコメント」で古舘氏のしたり顔が生き、今や「報道ステ
ーションジャーナリズム」が確立した。

しかし、「弱者」に視点を置いたジャーナリズムは、世界が混乱、日本経済が
岐路に立つ時、もはや役に立たないのではないか。

ジャーナリズムがガス抜きであった時代は終わり、停滞しているレベルならい
いが、国が国民を道連れに奈落の底に転落しようとしている時は、毒にも薬に
もならない弱者救済のスタンスは害毒でしかない。

古舘氏は「古舘プロジェクト」を抱える経営者であり、同社は70人の社員を
擁するテレビ報道界の一大勢力。

売上高も12億8000万円(2011年5月期)で、その成長は、自分の足
で立ち、並み居るライバルを蹴散らすことで確立されたはずだ。

古舘氏以外にも数多くの司会者、タレントを抱え、昨年9月、「悦ちゃん」こ
と小宮悦子氏を日曜日の「サンデー・フロントライン」から追い出し、後釜に
座った長野智子氏も古舘プロジェクトの所属である。

政治家も官僚も頼むに足りず、企業もあてにはできない時代環境の中で、紋切
り型の正義は必要ない。

視聴者を鼓舞、自ら代案を出して戦う報道番組が求められており、古舘氏の報
道姿勢には、そこが欠けていることを指摘しておきたい。

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 週刊メールジャーナル 2012年2月1日  第619号(水曜日発行)
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